ワイヤレスジャパン/WTP2022いよいよ実用化される空間伝送型ワイヤレス給電、米OssiaのCotaなら「通信も一緒に」

5~10m先のデバイスに無線で給電する「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」。大量のセンサーやタグを用いるIoTシステムの運用効率を飛躍的に高める技術として期待が集まっているが、ワイヤレスジャパン2022の丸文ブースでは、海外で高いシェアを持つ米Ossiaのシステムが展示された。国内の製造・小売業などから関心が寄せられているという。

2022年5月26日、「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」の技術基準等を規定した電波法施行規則等の一部を改正する省令が施行された。日本国内でも、長距離ワイヤレス給電の本格普及に向けた動きが始まる。

空間伝送型ワイヤレス電力伝送は、5~10m先のセンサーやデバイスに無線を使って給電する技術だ。センサーや電子タグ等を大量に使用するIoTシステムの運用を効率化するものとして期待されている。

国内では東芝やパナソニック等がシステムを開発し、実証実験・トライアルも行われているが、先行して実用化されている海外製品に対する関心も高い。

その1つが、米Ossiaが開発・販売する「Cota(コタ)」だ。同製品を取り扱う丸文によれば、Cotaには他社のシステムにはない2つの差別化ポイントがあるという。

特許技術で見通し外のデバイスにも給電
1つめの特徴が、給電の確実性だ。Ossiaの特許技術である「レトロディレクティブ方式」によって、伝送元(トランスミッター)から伝送先(デバイス)への見通しが確保されていない状況でも電力を届けることができる。

5.7GHz帯用のトランスミッター。2.4GHz帯用は、もう一回り大きなサイズとなる
5.7GHz帯用のトランスミッター。2.4GHz帯用は、もう一回り大きなサイズとなる

Cotaの仕組みは次の通りだ。

トランスミッターは、デバイスが発出するビーコン信号を受信してその位置を検出。信号の経路を把握し、その経路を反転させて電力を送る。

ビーコン信号はデバイスから直接届く場合もあるが、壁などを反射して届く場合もある。トランスミッターはそのすべての経路を把握して「位相反転操作」と呼ぶ動作を実行。これは、ビーコン信号を受け取ったのと同じ経路を逆に辿って電力を伝送するものだ。

これにより、トランスミッターとデバイスの間に遮蔽物があっても反射経路を使って電力を伝送することができる。

なお、デバイスとトランスミッターとのビーコン信号のやり取りは1秒間に100回行われるため、デバイスが移動する場合でも追従が可能だ。

給電と一緒に無線通信も
2つめの特徴は、給電と同時に無線通信も行える点だ。

通信速度は257kbpsと、画像や映像の伝送には適さないが、IoTセンサーや電子タグ等から少量のデータを取得するには十分だ。上り/下りの双方向通信が可能なため、IoT機器の制御にも使える。

Cotaは2.4GHzと5.7GHzの周波数帯に対応しており、複数台のデバイスに時分割で電力を伝送。距離1mの場合、2.4GHz帯では1~2W、5.7GHz帯では3~4Wの給電が可能だ。

温湿度センサーを組み込んだ評価キット(左)。右は、電子ペーパーを組み込んだ電子棚札
温湿度センサーを組み込んだ評価キット(左)。右は、電子ペーパーを組み込んだ電子棚札

海外では工場や倉庫、小売店舗等でのニーズが高く、RFIDタグや環境センサー等への給電と通信に利用されている。日本国内でも、同様の業種からの関心が高いという。

丸文では、温湿度センサーを搭載した検証・評価用キットも用意。また、同社の本社オフィスにデモルームを開設している。無線局免許の申請・取得のサポートも含めて、空間伝送型ワイヤレス電力伝送の導入・活用を支援していく。

 

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