<特集>通信事業者DX キャリアの未来学《基地局をデジタル変革》vRAN時代はハイパースケーラーとタッグでMEC推進か

通信事業者に新たな収益源をもたらす起点がMECだ。仮想RANと融合していくこのMECは、ハイパースケーラーとの協業により発展していく。通信事業者の採るべき戦略とは。

「5Gの登場によって、移動通信システムは生活基盤から産業・社会基盤へ」──。令和2年版情報通信白書でもこう述べられている通り、5Gネットワークは企業、そして社会システムのDXを支えるプラットフォームとしての役割を期待されている。

通信事業者がビジネス領域を広げ、収益性を高めていくこのシナリオを実現するための鍵がMEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)だ。アクセンチュア 通信・メディアプラクティス 日本統括マネジング・ディレクターを務める廣瀬隆治氏は、「5Gのポテンシャルを活かすにはMEC。通信事業者が上位レイヤーのビジネスをしていくうえでの起点になる」と強調する。

ユーザーとデバイスの近くにコンピューティングリソース、つまりエッジクラウドを置くのがMECのコンセプトだ(図表1)。クラウドよりも高いリアルタイム性やセキュリティを実現できる。通信事業者がパートナーと共創してサービスを提供する「B2B2X」ビジネスの基盤ともなるものであり、これまで通信サービスを提供する基盤に過ぎなかったキャリアネットワークは、その役割を大きく広げることになる。

 

図表1 アプリ/サービス提供基盤をキャリア網内へ

図表1 アプリ/サービス提供基盤をキャリア網内へ

クラウドとは戦わないこのMECの展開とビジネス創出において焦点となるのが、ハイパースケーラーとの関係だ。

AWSやマイクロソフト等のクラウド事業者はMEC、そしてRAN(無線アクセスネットワーク)領域への攻勢を強めてきている。

AWSは2020年、5Gネットワーク内にAWSの機能を拡張するMEC用ソリューション「AWS Wavelength」の提供を開始し、AT&TやKDDI等と協業しながら展開している。

そして2021年末には、企業等が構築・運用するプライベート5G向けの「AWS Private 5G」を発表した。AWSのコンソール画面でモバイル網を構築する場所や通信容量を設定すると、無線機・サーバー等がユーザーに届き、利用した通信容量に基づいて料金を支払うというサービスだ。

米国の非免許周波数帯を対象としており、日本での展開については未定と、直接的に通信事業者の5G RAN/MECと競合するものではないが、RAN領域へ進出する姿勢を鮮明にした。

マイクロソフトも「Azure プライベートMEC」でこの市場に参入する。Azureの機能をオンプレミス環境へと拡張するエッジコンピューティング向けサービス「Azure Private Edge Zone」を進化させたもので、4G/5G無線機能もサポートする。

通信事業者は、この動きにどう対処すべきか。通信業界に詳しい識者は、戦わず「組むべき」と口を揃える。

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