量子暗号通信技術と秘密分散技術を活用しゲノム解析データの分散保管を実証、東芝ら

東芝、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)、東北大学病院、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は2021年8月26日、量子暗号通信技術と秘密分散技術を組み合わせたデータ分散保管技術を開発し、大規模ゲノム解析データを複数拠点に分散して安全にバックアップ保管する実証実験に世界で初めて成功したと発表した。

ゲノム解析データは法律上個人を識別する個人情報として取り扱われることから、保管および伝送を行う際、厳重なセキュリティ保護により情報漏洩に備える必要がある。同時に、さらなる普及が見込まれるゲノム医療における活用のため、システムの障害、あるいは自然災害等によるデータの消失・棄損等に備えた、ゲノム解析データのバックアップも必要となる。

これまで、大容量で機密性の高いゲノム解析データのバックアップは、情報漏洩リスクを考慮しネットワークを介したバックアップではなく、ディスク・テープ等のメディアに保存し、場合によっては遠隔拠点に保管することが行われていたが、メディアの安全な輸送や保管には、コストや時間がかかるため、大容量で機密性の高いデータのバックアップ手法の確立、バックアップのコスト削減・利便性/可用性の確保が課題となっていた。

今回の実験は、量子力学の原理に基づきあらゆる盗聴や解読に対して安全な暗号通信を実現する「量子暗号通信技術」と、原本データを無意味化された複数のデータ片(シェア)に変換することで安全なデータ保管を実現する「秘密分散技術」を組み合わせた「分散保管技術」を用い、大容量ゲノム解析データのバックアップへの適用を実証したもの。

1検体のゲノム解析データ(約80GB)を対象に、分散保管および復元に要する時間とスループットを測定した結果、分散保管処理時は約30分(356Mbps)、復元処理時は約21分(502Mbps)を記録したという。現状のテープ等のメディアを用いたゲノム解析データの遠隔保管地から物理的に運搬するユースケースと比べて実用的な速度に相当するとしている。

東芝 量子暗号通信
ゲノム解析データ分散保管実証実験の概要

東芝は今後も、秘密分散技術と組み合わせたシステム実証を含む様々な量子暗号通信技術の研究開発に取り組み、医療・金融・政府機関・通信インフラ等の多様なアプリケーションでの量子暗号通信技術の実用化を推進していくとしている。

関連リンク

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

FEATURE特集

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。