<特集>量子通信で変わる未来量子インターネットとは? オール光のIOWNも候補に

量子コンピューターをつなぐ新たな情報通信基盤「量子インターネット」には、現在のインターネットとはまったく異なる技術が必要だ。NTTが2030年の実現を目指すIOWNが、有力候補となる可能性がある。

量子コンピューターのソフトウェア開発や量子暗号などで世界トップを目指す─

欧米中が量子技術の開発競争にしのぎを削るなか、内閣府は2020年1月に「量子技術イノベーション戦略最終報告」を公表した。その技術ロードマップに登場するのが「量子インターネット」だ。2030年までに基本機能の実証、続く10年間でテストベッドによる試験運用やアーキテクチャ開発等を進めるとされている。

この量子インターネットとは、どのようなものか。

世界共通の確固たる定義はまだなく、実現に必要とされる要素技術も、その大半が基礎研究の段階だ。量子コンピューターや量子センサーといった「量子デバイス」が実用化される2030年代から、それらを接続するためのネットワークとして量子インターネットが部分的に使われ始める─。現時点では、そんな将来像が想定されている。

支え合う2つのインターネット量子インターネットは“量子力学の法則が支配する世界”で量子デバイス同士の情報交換を行うためのネットワークだ。量子力学の法則が支配する世界とはつまり、「0」でも「1」でもある重ね合わせ状態をもった量子ビットを送受信する─という意味。現在のインターネットが世界中のコンピューター/デバイスを接続する汎用通信基盤であるのと同様に、「量子コンピューター/デバイスをつなぎ合わせるための汎用的かつ広域な通信基盤」が量子インターネットだ。

量子暗号通信とは、この点で異なる。量子暗号通信はあくまで古典ビットの暗号鍵を共有するための技術であり、送信側・受信側、そして中継点でもいったん古典情報に変換する。量子インターネットは量子状態そのもののやり取りを役割とする。

もう1つ押さえておくべき点は、現在のインターネットとの関係だ。

現在のインターネットが将来的に量子インターネットに置き換わるということではない。量子コンピューターが実用化されても、現在のコンピューターとインターネットが不要になるわけではないからだ。日本の量子インターネット研究を推進する目的で2021年5月に設立された「量子インターネットタスクフォース(QITF)」で代表を務める永山翔太氏(メルカリR4D シニアリサーチャー)は次のように述べる。

「量子インターネットでしかできない領域、量子インターネットが得意な領域があるのと同時に、デジタルデータの送受信は今のインターネットのほうが低コストかつ速くできる。だから併用される。そもそも量子インターネットは現行のインターネットに支えられて動くものだ」

量子インターネットタスクフォース(QITF) 代表 メルカリR4D シニアリサーチャー 永山翔太氏
量子インターネットタスクフォース(QITF) 代表
メルカリR4D シニアリサーチャー 永山翔太氏

月刊テレコミュニケーション2021年8月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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