<連載>AIインフラの新潮流国産ネオクラウドの成長戦略 GPU特化型でAIインフラを安く早く

生成AIの急速な普及を背景に今、躍進中の新興勢力がある。GPU特化型インフラを提供する「ネオクラウド」だ。高まるデータ主権やエッジAIのニーズも追い風に、国内でも新たな市場が形成されつつある。

GPU間通信はエヌビディア標準

AIクラスターの性能を大きく左右するGPU間通信のチョイスも差別化のための重要ポイントの1つだ。ハイレゾは、HPC分野で実績がある低遅延・ロスレスが特徴のInfiniBandを採用。川本氏は「ネットワーク構成をシンプルにすること」を選定理由に挙げる。「機器数が減ることで故障率が低下する効果もある」

GMOインターネットは、エヌビディアのAI向けイーサネット「Spectrum-X」を採用している。「他のイーサネット製品よりも高価だが、その分、非常に高性能なGPUサービスが提供できる」と武田氏。InfiniBandではなくイーサネットを選択した理由については、「最新技術では通信遅延の問題が解決されており、イーサネットの方が優位性があると判断した」。

また、同氏はハイパースケーラーとの差別化において運用品質の重要性も指摘する。GPUに故障が発生するとAI基盤全体のパフォーマンスに大きく影響するため、「故障の予兆を察知して、ユーザーが気づく前に交換する体制を用意し、ダウンタイムを限りなくゼロに近づけている」。

推論フェーズで全業種へ拡大

このネオクラウド/GPUクラウドはどんな用途で使われているのか。顧客需要の二極化を指摘するのは、角氏だ。「1 〜2台の小規模利用と数十台以上の大規模利用に分かれていて、その中間層は少ない傾向にある」

大口需要は、自動運転や創薬、製造業、ロボット産業、そして助成金を受けたAIスタートアップによるLLM開発などが中心だ。H100やGB200といったハイエンドGPUを長期間継続して利用するケースが多く、収益性が極めて高い。その代表例に挙げられるのが、完全自動運転EVの量産を目指すチューリング。環境認識や経路計画、運転制御を行うAI開発のため、GMOと4年の長期契約を結んだ。

必要に応じて利用するスポット的な需要は、特定の研究開発の検証や、小規模なモデルのファインチューニングなどがある。特にスタートアップにとっては、必要時に大量のGPUリソースを確保できる点で、事業継続に欠かせない存在と言える。

このように、GPUクラウドの用途が多様化するなか、各社が成長戦略の軸に据えるのが「推論需要」への対応だ。

現時点では「米国では学習と推論の売上がほぼ同等になっているが、日本ではまだ推論での売上が立っていない」(武田氏)ものの、2026年を境に国内でも開発したモデルをプロダクトやサービスに組み込んで動かす推論フェーズへの移行が確実視されている。KDDIの桜井氏は「当初はChatGPTのような業務効率化から始まり、次に画像・ビジョン系、そして自律的に動くエージェント活用へと進展する」と展望する。

学習用途は特定の企業や研究機関に限られるが、推論フェーズに移行すればAIがアプリケーションに組み込まれるのが当たり前となり、需要は全業種へ一気に拡大する可能性がある。「GPUクラウド市場は確実に伸びる。従来のCPU主体のクラウドサービスから、AIが組み込まれたアプリケーションが当たり前となる世界へ移行すれば、GPU比率が上がることは確実だ」とハイレゾの川本氏。フィジカルAIに関しては、「すでにGPU活用に向けた動きもあり、今後需要が本格化する」(桜井氏)。

ネオクラウドにとって、この新フェーズへの準備が次の焦点となる。GPUを貸し出すだけでなく、基盤モデルをAPIとして提供するなど、推論に特化したサービスの拡充を進める。加えて、低遅延性が求められるロボット制御等はユーザーに近いエッジで、高度な判断が必要な最新モデルはクラウドの大規模クラスターで処理するなど、計算資源の分散配置と用途に応じた使い分けが鍵となろう。

KDDI等の通信事業者はここでも強みが発揮できそうだ。「全国の通信局舎にGPUを配置し、ネットワークと組み合わせて低遅延な推論インフラを提供する」と佐藤氏は展望。モデル開発から推論まで国内でAI処理を完結させる「データ主権」ニーズに加えて、エッジ活用はハイパースケーラーや海外ネオクラウドへの対抗策として、戦略の柱となる。

月刊テレコミュニケーション 2026年5月号の記事を再構成]

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