ヤマハ 「NVR700W」 データ/音声に使用中のISDN移行問題+αのBCP対策で一石二鳥のマイグレ

データ回線のバックアップと電話にISDNを活用している企業は意外と多い。ヤマハはこうした企業向けに、3G/LTE内蔵VoIPルーター「NVR700W」によるモバイル回線へのマイグレーションを提案している。コスト削減に加えて、障害や災害発生時のバックアップ回線としての役割も果たすことができる。
(左から)ヤマハ 楽器・音響事業本部 音響事業統括部 SN事業推進部 国内営業グループ金丸大海氏、主任の矢部広大氏、主事の細江誠一郎氏

(左から)ヤマハ 楽器・音響事業本部 音響事業統括部 SN事業推進部 国内営業グループ金丸大海氏、主任の矢部広大氏、主事の細江誠一郎氏

 NTT東日本/西日本が提供するISDN「INSネット ディジタル通信モード」が、2024年1月にサービスを終了する。

 POSレジや決済端末のデータ送信、EDI(企業間電子商取引)、監視カメラの映像通信など、INSネットは今なお幅広い用途に使われているが、「2024年はまだ先の話」「具体的な移行方法はまだ考えていない」という企業も少なくないようだ。

 しかし、ISDNに使われる部品の生産数は将来にわたってすでに決まっており、増産の予定もない。このため、国内で唯一ISDN回線用LSIを生産しているヤマハでは、計画的なマイグレーションの実行を呼び掛けている。

 また、ネットワーク機器メーカーでもあるヤマハは、ブロードバンドにシフトし始めたADSL時代にも、自社のルーター製品にISDNポートを搭載してきた。「ADSLはサービス開始当初は通信が不安定で、ISDNをバックアップ回線として利用するモデルを提供したのが始まり。その後、他社も追随し、ISDNポートの搭載は今や業界のデファクトスタンダードとなっています」とヤマハ 音響事業本部 事業統括部 SN事業推進部 国内営業グループ主事の細江誠一郎氏は説明する。

 ISDNの特長の1つに、複数通話・通信を行えることがある。「INSネット64」の場合、通信速度が最大64kbpsの2回線、同16kbpsの1回線を同時に使うことができる。この点を活かし、店舗など中小規模拠点を展開する企業などは、「RTX1210」に代表されるヤマハのISDN対応ルーターを使い、拠点間のデータ通信と電話のバックアップにISDNを活用している。「障害時や災害発生時に通信を担保するバックアップ回線を含めたソリューション提案には定評があります」(細江氏)。

 ISDNのマイグレーションには様々な方法があるが、1つのシステムでデータ通信と電話の両方を利用している企業に対し、ヤマハでは3G/LTE内蔵VoIPルーター「NVR700W」によるモバイル回線へのマイグレーションを提案している。

3G/LTEモジュール内蔵のNVR700W 安定性が向上しサポートも一元化


 NVR700Wは小型ONUに対応し、本体のONUポートに装着するだけで、据置型ONUやVoIPアダプターなどを別途接続せずに光回線に接続できる。また、内線VoIPやインターネット電話に加えて、NTT東西のフレッツ光ネクスト「ひかり電話」などにも対応する。さらに、本体に無線WANモジュールを内蔵しており、USBドングル型データ通信端末を用意しなくてもNTTドコモやMVNOの3G/LTEサービスを無線WANとして利用することが可能だ。

 ヤマハがISDNの代替手段としてモバイル回線に着目したのは、10年ほど前にさかのぼる。当初は市販のUSBドングルを使用していたため、ファームウェアでUSBドングルに個別対応する必要があった。そもそもUSBドングルは外出時などにPCに挿して使うことが想定された商品で、ルーターに繋いで常時接続するような長時間動作させた場合、発熱などにより動作が不安定になることがある。そのうえ、USBドングルは製品サイクルが短く、長期にわたって使用するとUSBドングルの入手が困難になるなど、調達性にも課題があったという。

 2016年7月に提供を開始したNVR700Wは、「USBドングルで培ったモバイル移行に必要な機能を盛り込んだ、ヤマハにとって集大成ともいうべき製品」と楽器・音響事業本部 音響事業統括部 SN事業推進部 国内営業グループ主任の矢部広大氏は語る。

 NVR700Wには3G/LTEモジュールが内蔵されているため、組み込み用途にも適する。機能は標準ファームウェアに搭載済みで、調達性や安定性にも優れる。トラブル発生時などでも、サポート等をヤマハに一元化できる。回線の敷設(配線)を伴わないので、店舗など拠点の増減や移動の機会の多い業種にも最適だ。

エリアやコストで優位なモバイル 非常用バックアップを日常使い


 それでは、モバイル回線によるマイグレーションはどのようなシステム構成になり、他の方法と比べてどういったメリットがあるのだろうか。

 図表1は、データ通信のバックアップをISDNから3G/LTEに移行した場合の構成を示したものだ。主回線の光回線あるいはADSLに障害が発生した際、その回線と接続しているNVR700Wを通じて自動的に3G/LTEへと切り替わるようになっている。

図表1 「ISDNバックアップ」を3G/LTEでマイグレーション

図表1 「ISDNバックアップ」を3G/LTEでマイグレーション

 他の有力な移行方法として、ひかり電話を使った帯域確保型のデータ通信サービス「データコネクト」がある。

 データコネクトは遅延が少ない反面、主回線と同一回線を利用することが多く、障害・災害時のバックアップとしては不安がある。また、送信側と受信側の双方がひかり電話に加入し、対応機器やアダプターを用意しなければならず、そもそも光回線が敷設されていないエリアでは利用することができない。

 この点、モバイル回線であれば、LTEのエリアは99%以上でほぼ全国どこもでも利用可能であり、しかもNVR700Wを各拠点に設置するだけで冗長化が完了する。ISDNと比べてモバイルは月額料金も安価になる。しかもNVR700Wはマルチキャリアに対応しており、利用シーンや用途に合わせて最適なプランを選択することができる。

 次に、電話のマイグレーションだが、PSTNあるいはISDNで構築している固定電話網を、主回線はひかり電話に変更し、主要拠点間の副回線は光回線によるIP電話に、その他の拠点間の副回線はモバイルでバックアップすると、データ回線も活用しながら無料の内線電話を利用することができる(図表2)。

図表2 「電話・拠点間IP電話」をマイグレーション

図表2 「電話・拠点間IP電話」をマイグレーション

 企業や自治体の中には、緊急用の回線を別途用意しているケースがある。しかし、「いざとなると混乱しているため、上手く使いこなすことが難しい。日頃から内線電話として使い慣れておけば、非常時でも安心して使うことができます」と音響事業本部 事業統括部 SN事業推進部 国内営業グループの金丸大海氏は話す。

 ヤマハのユーザー企業の中には、数百規模の店舗を展開しているところが少なくない。拠点数が多いと、それだけ拠点間の通話の回数も増え、無料内線通話のメリットを実感できるという。

 ISDNのマイグレーションは設備やシステムの更改を伴うだけに、後手に回りがちだ。昨今、国内では各地で地震や台風など自然災害による大規模な被害も頻発している。ヤマハのソリューションでコスト削減とBCP対策という“一石二鳥”のマイグレーションをお薦めしたい。

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