リボン・
コミュニケーションズ
システム技術部
上級システムエンジニア兼
ビジネスデベロップメント
マネージャー
渡邉光輝氏
「Microsoft Office 365」は、規模や業種を問わず多くの企業が業務に活用している。
そのOffice 365における「コミュニケーションのコアプロダクト」は、従来の「Skype for Business」から「Microsoft Teams」へと移行しつつある。
Teamsはチャットベースのコミュニケーション機能のほか、ビデオ会議やファイル共有などOffice 365で提供される様々なアプリケーションのコミュニケーションハブとしての役割を担う。この6月には「Microsoft Teams Direct Routing」が正式にリリースされたことで、企業コミュニケーションの“要”である外線電話の発着信もTeamsから行えるようになった。
ただ、Direct Routing単体でTeamsとPSTN(公衆交換電話網)をつなぐことはできないため、「SBC(Session Border Controller)」と呼ばれるゲートウェイを使い、PSTNとインターネットを接続する必要がある。
SBCを提供しているベンダーの中でもリボン・コミュニケーションズは、Teamsのコラボレーション環境にセキュアな統合音声サービスを提供するSBCをいち早く発表し、注目を集めている。
図表 Teams Direct Routingのイメージ
米国に本社を置く同社は、ソナス・ネットワークスとジェンバンドが合併し、2017年10月に誕生した。ソナスは、LyncやOCSの時代からマイクロソフトのUCとPBX/電話回線をつなぐUCゲートウェイ「Sonus SBC Edge」を提供してきた。Lyncの後継にあたるSkype for BusinessでもPSTNと接続するサーバー製品としてマイクロソフトから「Skype for Business Cloud Connector Edition(CCE)」が提供されており、ソナスではこのCCEと、PBX/電話回線を接続するためのVoIPゲートウェイを1台のアプライアンスに搭載した「Sonus Cloud Link CCE」を2016年10月にリリースし、これまで28社に採用されている。
しかし、CCEの導入・運用にはいくつかの課題があった。
まず、CCEは頻繁にアップデートを繰り返し、そのたびにSkype for Businessによるコミュニケーションが中断したり、SIerが検証する必要がある。また、構築ステップの複雑さや不透明性もユーザー企業やパートナーから指摘されていたため、リボン・コミュニケーションズではGUIやアプリケーションの改良に努めてきたという。
これに対し、TeamsのDirect RoutingはCCEが不要で、SBCを直接クラウド上の電話システムに接続することができる。「構築ステップが非常にシンプルになり、CCEの構築に要していた2時間余りの時間が短縮されるのは大きい」とリボン・コミュニケーションズ システム技術部 上級システムエンジニア兼ビジネスデベロップメントマネージャーの渡邉光輝氏は話す。
CCEが不要になることで、障害発生時の復旧手順も簡略化された。“ブラックボックス”状態だったCCEのアップデートなどメンテナンスからも解放されるので、保守担当者の負荷を大幅に軽減することができる。
ユーザー企業にとっては、CCE用のサーバーカードの費用やWindowsサーバーのOS利用料がかかからなくなり、低コストでDirect Routingに接続可能になる。
さらに、CCEが不要になることで、接続方法の選択肢も増えている。
1つめが、ユーザー拠点に設置するCPE型で、1台で192同時通話をサポートする「SBC 1000」、600同時通話をサポートする「SBC 2000」、SBC 1000/2000の機能をそのまま継承し、仮想サーバー上で運用できるソフトウェアエディション「SBC SWe Lite」から選ぶことができる。
これに加えて、通信事業者のデータセンター内に設置し、複数企業をまとめて収容するマルチテナント型として、7万5000同時通話をサポートする「SBC 5400」、15万同時通話をサポートする「SBC 7000」、ソフトウェアエディションの「SBC SWe」がある。
マルチテナント型については、実際に導入されると、企業は自社内にSBCを設置しなくても、通信事業者がサービスとして提供するPSTN機能を利用し、音声コミュニケーションを実現することが可能になる。
ユーザー拠点に設置するCPE型の「SBC 1000」(左)と、
通信事業者のデータセンター内に設置し、複数企業をまとめて収容するマルチテナント型の「SBC 5400」
リボン・コミュニケーションズ
Software as a Service Solutions
Vice President
ケビン・アイザック氏
ところで、CCEやDirect Routingでインターネットを経由してクラウド上の電話システムを利用するようになったことで、インターネットとの接続ポイントが標的となるケースが海外で急増している。米国で発生したサイバー攻撃の約50%が、SIPプロトコルをターゲットにしていたという調査結果もあるほどだ。
例えば、企業のPBXをハッキングして国際電話をかけ、その企業に高額な電話料金を請求する「Toll Fraud」の場合、1社に対する請求金額が数百万~数千万円にのぼる事例も報告されており、2017年の被害総額は3兆円に達する。
被害が大規模化しているのを受けて、リボン・コミュニケーションズでは7月末を目途に、セキュリティ対策用ソフトウェア製品「Ribbon PROTECT」を商用化する。
Ribbon PROTECTは、SBCから上がってくるデータをAI(人工知能)を使って解析。脅威を検知するポリシーを設定したり脅威情報の共有により、被害の拡大を抑止する。リボン・コミュニケーションズ Software as a Service Solutions Vice Presidentのケビン・アイザック氏は「日本ではまだUCのセキュリティの脅威は認知されていないが、事態が深刻になる前に対処すべき」とセキュリティ対策の必要性を強調する。同社ではこのような仕組みを通信事業者のクラウドから提供できるように取り組んでいく。
セキュリティ以外にも、企業のリアルタイムコミュニケーションにまつわる細やかなニーズに対応したソリューションの充実を図っている。
その1つが、Teamsクライアントを使ったIP直収電話利用者と外部ユーザー間の通話録音機能だ。セキュリティの関係上、録音データを外部保存できないが、コールセンター向けの本格的な通録システムはハードルが高いという中小企業を対象に、低コストかつ短工期で導入できる通話録音システムと連携する。
今後の取り組みについて、渡邉氏は「ソナスもジェンバンドも通信事業者向けに特化しているイメージが強いが、リボン・コミュニケーションズではエンタープライズビジネスも拡大したい」と意欲を見せる。
安価なゲートウェイでもDirect Routingに接続できるようになったことで、クラウドPBXと連携した番号管理と通話に機能を絞った「SBC 1000 Gateway」が、FMCサービス用として導入する企業が増えている。先日は、北米におけるエンタープライズ向けSBCでシェア1位のEdgewater Networks社を買収する事で同意した。中小企業向けのSBC 1000ではカバーしきれない、より小規模企業への裾野の拡大が期待されるという。
このように、リボン・コミュニケーションズはエンタープライズから通信事業者まであらゆる層のユーザーにSBCを展開しようとしている。
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