ノキア G.fast G.fastで簡単マイグレーション VDSL回線を1Gbpsに高速化

FTTHの国内普及が進む一方で、いまだに上り下り合わせて100Mbps程度のVDSL回線しか利用できない世帯は多く存在している。VDSL2も今後EOLを迎え、サポートが受けられなくなるシステムが出てくる。ノキアのG.fastを使えば、光ファイバー敷設工事をしなくとも、気軽に既存のVDSL回線を高速化し、家庭内で1Gbpsの速度を利用することが可能だ。
(左から)ノキアソリューションズ&ネットワークス 固定アクセスネットワーク事業部 ソリューションマネージャーの原孝成氏と、ビジネス・デベロップメント・ディレクターの仁木徹也氏

(左から)ノキアソリューションズ&ネットワークス 固定アクセスネットワーク事業部 ソリューションマネージャーの原孝成氏と、ビジネス・デベロップメント・ディレクターの仁木徹也氏

 「G.fastを使えば今ある回線を活用して1Gbpsの速度を提供できる。マンションの”ギガ化”が可能だ」

 そう述べるのはノキアソリューションズ&ネットワークスの原孝成氏だ。

 総務省の統計によると、FTTHの契約数はおよそ3000万世帯、そのうち約1000万世帯が集合住宅だ。しかし、これにはVDSLの利用者も含まれており、光ファイバーが提供されている建物でも、古い集合住宅などでは、建物のMDF(主配線盤)から各戸まで、電話回線用の既存メタルケーブルを使っているところは多い。

 VDSL回線の正確な国内利用者数は公開されていないが、ノキアソリューションズ&ネットワークスの仁木徹也氏は「様々な情報を統合すると、少なくとも500万世帯以上はある」と分析している。まだまだVDSL回線の利用者は多いのが実態だ。

 こうした中、VDSL回線を利用している集合住宅などで、光ファイバー敷設工事をせずとも簡単に上り下り合わせて1Gbpsの高速回線を利用できる方法が注目を集めている。ノキアの「G.fast」ソリューションだ。

 高速化の手順は簡単だ。既存のVDSLモデムの親機と子機を、日本仕様にチューニングされたG.fastの機器に置き換えるだけで高速化が完了する。

 台湾最大の通信事業者であるチョンファ・テレコムがいち早くノキアのG.fastを活用し高速ブロードバンドサービスを提供しているほか、英大手のBTもトライアルを実施し、商用の検討を行っている。

 国内でもエネルギア・コミュニケーションズ(エネコム)がいち早く提供しているほか、KDDIが2018年11月より「auひかりマンション」の新たなメニューとして、ノキアのG.fastを活用した「auひかりマンション タイプG」の提供を開始した。ユーザーにとって簡単に高速回線を利用できる環境が整っている。

G.fastの親機(左)と子機(右)親機は16ポート用と96ポート用があり、耐震、対塩害性能を有する

G.fastの親機(左)と子機(右)
親機は16ポート用と96ポート用があり、耐震、耐塩害性能を有する

基礎研究で裏打ちされた技術 ベクタリングでノイズキャンセル


 G.fastの中核をなす技術がベクタリングだ。集合住宅などで、複数のユーザーが同じ回線束にいると、お互いに干渉しあう。ベクタリングを使えばあらかじめノイズ信号を演算しておき、リアルタイムに逆位相のノイズ信号をかけることで回線間の信号干渉を防ぐことができる。これにより、安定性と高速化を両立している。

 G.fastは2015年に標準化されている技術だが、原氏は「他ベンダーはチップベンダーの提供するベクタリング機能を使っているだけのものが多い。一方、ノキアはメタル回線の基礎研究を続けているベル研究所で開発したベクタリングアルゴリズムを用いている。実際に他社と比較すると速度と安定性が違う」と自信をもって語る。

 VDSL2は近々EOLを迎え、サポートが受けられなくなるシステムが出てくる。4K/8K放送が開始し、動画サービスの利用も増え、ネットワークの高速化が求められる時代だ。VDSL回線の利用者にとって、ノキアのG.fastは頼もしい存在になってくれるに違いない。

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