「数十km離れた離島の監視カメラ映像を無線で取得する」「山頂で高精度の動画をWi-Fiで観る」──。こうした”無理難題”に答える製品がある。米Cambium Networks社の屋外用長距離無線ブリッジ「PTP670」だ。親機と子機が1対1で接続してポイントツーポイントリンクを構築し、長距離無線通信を可能にする。動作温度は-30~60℃、防水防塵と塩害にも強いIP67規格を満たす耐環境性能を有す。
PTP670のユーザーはモバイルの通信事業者や自治体が多い。山間や離島向けの長距離通信や、火山や河川などの監視/観測目的などで使われている。国内総代理店であるハイテクインターで無線通信機器事業部 事業部長を務める松井仁志氏は「有線ネットワークが通ってない環境でも、災害時に公衆無線LANを提供したいといったニーズも高まっているため、今後さらに需要は拡大すると思っている」と説明する。
このようにFTTHなどが未設のエリアをネットワーク化できるPTP670の特徴だが、同様のソリューションと比べた特長の1つは図表の通り、高速なスループットにある。
製品名 | PTP 650-I/PTP 650-C-H | |
---|---|---|
距離/帯域幅 | 10MHz | 20MHz |
10㎞ | 80Mbps | 164Mbps |
20㎞ | 64Mbps | 96Mbps |
30㎞ | 48Mbps | 72Mbps |
「理論値ではなく、私が北海道の旭川で計測した実測値をカタログに掲載しており、実際にこのスループットで長距離通信が行えます」と自信をもって語る。
高速通信を可能にしているのは、回路設計と部品へのこだわりだ。「他社製品は通常、チップ内に回路を詰め込み高集積化を図るが、PTP670は重要な部分は個別に回路を組んで、レイアウトに余裕を持たせています。さらにアンプなどの部品も選び抜いているためローノイズで、高スループットを実現できるのです」(松井氏)。
混み合ったWi-Fi用の5GHz帯ではなく、登録が必要な4.9GHz帯を用いるため、安定した通信が行えるのも特徴だ。加えて、DSO(Dynamic Spectrum Optimization)機能を実装しており、空いている最適なチャンネルを自動的に探索して利用できる。外付けアンテナを2本付けることでスペースダイバーシティ効果も得られる。
設置時のアンテナ角度調整をアシストする機能にも注目だ。「電波感度をビープ音に変換する機能があり、音を聞きながら簡単に角度調整が行えます」と営業部 部長の森池信也氏は紹介する。
PTP670は親機と子機の「1対1」で接続するが、複数の子機と「1対多」で接続できる製品が「ePMP3000」だ。登録が必要な4.9GHz帯向けに加えて、Wi-Fiの5GHz帯を用いるモデルも予定している。
ePMP3000では、親機のアンテナから約90度の範囲にビームを飛ばし、複数の子機と長距離無線通信する。駐車場やイベント会場などで、複数のポイントを一気にネットワーク化することが可能だ。海外では、通信事業者の“ラストワンマイル”としても活躍している。ePMPの子機をユーザー宅に設置すれば、固定通信サービスのラストワンマイルを無線化できる。
こうした1対多の製品には、複数の子機が発する電波同士が衝突し、実効速度が落ちるという課題があるが、ePMP3000は違う。独自のアルゴリズムを用いて、各子機の送受信のタイミングを細かく制御することで、この課題を解決している。
Rapid DFS機能も備えている。5GHz帯を利用する機器には、DFS機能の搭載が法令で義務付けられている。これは、気象・航空レーダー波を検出した際、別チャンネルに移動したうえで、新しいチャンネルで1分間レーダー波が検知されないことを確認してから通信を開始する機能だ。一方、ePMP3000の場合、「空いているチャンネルを常にスキャンしておき、レーダー波が検知されると即座に移るRapid DFS機能を備えているので、途切れない通信を維持できます。このため、監視カメラなどの通信断が許されない機器でも安心して利用できます」と森池氏は解説する。
ハイテクインターはPoE延長装置にも強みを持っている。
LANケーブルの伝送可能距離は100mが限界といわれている。このため、大きな工場や施設などで、100m以上の距離をLANケーブルでつなげたい場合、通常は途中にHubを設置して対応する。しかし、Hubの設置には電源が必要になるため、電源のない場所では困難だ。そうしたときに活躍するのがハイテクインターの「Vi2300A/Vi2401A」である。
Vi2300AはLANケーブルに繋げるだけで、給電+データ通信距離を900mまで延長できる製品だ。-40~75℃と高い耐環境性能も誇る。「例えば先日は、500m先のPoE+規格のデバイスに25.5Wで給電したいという工場のお客様に採用いただきました。他社が現時点でこの要件を満たすことは難しいと思います」と森池氏は語る。
プロダクト技術部 部長の川辺治郎氏は、速度も特徴だと語る。「Viシリーズはメーカー独自の通信方式により、60W給電時にも600m先まで100Mbpsの速度で安定して通信可能です。600~900mでも10Mbpsを実現できます」。森池氏によれば、他社のPoE延長装置を使っていたが、「速度が足りない」「よく壊れる」とViシリーズに乗り換えるユーザーも多いそうだ。
Vi2401Aは同軸ケーブル用だ。既設の同軸ケーブルを使って、長距離での給電とデータ通信が行える。「アナログカメラをリプレースして、カメラをIP化する用途で一番使われています」と森池氏。同軸ケーブル用のPoE延長装置にはIPアドレスの設定などが必要な製品もあるが、Vi2401AはIPの知識が不要でつなげるだけ。これを理由に採用する企業も多いという。
森池氏は次のようにも述べる。「我々の製品は産業用。お客様は通信や給電が途切れてはいけない場所で使っています。そのため必ず事前に1個1個通電して検査を行ってから出荷することで、初期不良を抑えています。障害時に原因の切り分けを行うなど充実したサポートも用意してあり、安心して利用いただけます」
ネットワークはビジネスにとってなくてはならないインフラとなっている。確かな品質を保証するハイテクインター製品の採用企業は、今後ますます増えていきそうだ。
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ハイテクインター株式会社 TEL:03-5334-5260 E-mail:info@hytec.co.jp |