「LPWA(Low Power Wide Area)などのセンサー向け無線ネットワークでは、必ず発生する2大トラブルがある」──。こう指摘するのは、スカイリー・ネットワークスの代表取締役CEO/CAを務める梅田英和氏だ。
2大トラブルとは、「開発が進むとネットワークに求められる通信速度・飛距離・データサイズが当初の計画から変わってしまうこと」、そして「接続台数が増えるとなぜか通信不可に陥ること」だ。実際に、これらのトラブルに頭を抱えている人も多いはずだ。
そのような状況を解消するため、スカイリーが開発したのが無線プロトコル・スタック「SkWAN」と、SkWANを搭載する通信基地局「SK Station」(価格は29万8000円)だ。SkWANはモジュールメーカーに、SK StationはLPWAネットワークを構築するSIerに提供することを想定している。
SkWANの大きな特徴は2つある。1つは物理層に依存しないプロトコル・スタックであること。もう1つは複数デバイスの通信制御にTDMA(時分割多元接続)を用いていることだ。
まず、物理層に依存しないという、1つめの特徴について見ていこう。
SkWANと同様に、LoRaWANもプロトコル・スタックと表現することができるが、LoRaWANの物理層は「LoRa」と決まっているのに対して、SkWANは複数の物理層に対応する。具体的にはLoRaのほかにも、LPWAの国際標準規格「IEEE 802.15.4k」やWi-SUNの「IEEE 802.15.4g」、SIGFOXで使われる「UNB(Ultra Narrow Band)」などの物理層を利用できる(図表)。
図表 SkWANソフトウェアの構成図
※LoRaは対応済み。IEEE 802.15.4gは2017年7月末、UNBとIEEE 802.15.4kは2017年12月末に対応予定
これがもたらすメリットは、LPWAネットワークの検証途中で物理層の規格を変更しても、アプリケーションの作り直しが不要であること。物理層の違いをSkWANが吸収してくれるためだ。
物理層の規格は、それぞれ一長一短だ。例えば、LoRaの通信距離は1~10kmと長いが、最大データ長は32~50バイトと控えめだ。他方、802.15.4gの通信距離は100~500mと短めだが、最大データ長はLoRaより大きい255~2047バイト。LPWAの開発・検証を始めた頃は、「データ長は小さくていい」と考えてLoRaを採用したものの、次第にある程度のボリュームが必要になり、802.15.4gに変更したくなるケースがある。
そんなとき、SkWAN/SK Stationでネットワークを構築しておけば、新たな開発の手間をかけることなく、物理層の規格を変更できる。
次に、2つめの特徴であるTDMAは、100台を超えるような多数接続が求められるケースで効力を発揮する。
「1台のSK Stationで最終的に6400台のエンドデバイスを収容できるようになる」と梅田氏は語る。SK Stationは通信基地局として、センサーなどのエンドデバイスからデータを受信し蓄積するほか、そのデータを有線LANや3G/LTE回線などを経由して各種システムに転送することも可能だ。
TDMAでは、それぞれのデバイスに対して、基地局と通信できる時間をスロットとして割り当てる。各デバイスは自分に割り当てられたスロットで基地局と通信するため、複数のデバイスによるデータ転送が衝突することはなく、接続台数が増えても安定した通信環境を実現できる。これは、TDMAがないLoRaWANとは大きな違いだ。
IoTの浸透とともに、工場や農場など各方面でセンサー向け無線ネットワークに期待が高まっている。大量デバイスをトラブルなく接続できるSkWANとSK Stationは、モジュールメーカーやSIerにとって強い味方となるだろう。
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