シトリックス・システムズ・ジャパン、セールスエンジニアリング本部・本部長の犬塚昌利氏(左)と、ネットワークSE部・リードシステムズエンジニアの高橋勲氏
情報システムのクラウド移行が進み、またビデオ等の大容量コンテンツの利用も増えるなか、WANの重要性がかつてないほど高まっている。
それに伴って、新たな課題に悩まされる企業も増えてきた。業務アプリケーションを快適に使える環境を整えるには、WAN帯域の増強と可用性の向上が必要だ。しかも、これを適正なコストで行い、運用管理も効率化しなければならない。
こうした背景から注目が集まっているのがSD-WANである。SDN(Software Defined Networking)技術をWANに適用したソリューションだ。
SD-WANは、性能・品質・コストの異なる複数の回線を仮想的に束ね、組み合わせて利用できるようにするものだ。MPLS、インターネット、モバイル網などの複数の物理回線上にオーバーレイ型の仮想ネットワークを作る。ユーザーは通信キャリアに縛られず自由に回線を選び、必要な性能・帯域を持つWANを構成できるようになる。
これにより、様々なメリットが生まれる。まず、WANの帯域を増強する場合、MPLSを増速するのではなくインターネットを使うことで低コストに“WAN全体”の帯域が増やせる。複数キャリアを組み合わせれば可用性も向上する。また、WANの運用管理も一元化されるため、運用負荷も削減できる。
今では多くのベンダーがSD-WAN製品を提供している。選択肢は豊富になったが、反面、各々の特徴や差異を理解し、適切なものを選ぶのに苦労しているユーザーも多いことだろう。
そんな中、エンドユーザーの「体感品質」(QoE:Quality of Experience)を高めることにフォーカスし、他社とは“一味違う”SD-WANを提供しているのがシトリックス・システムズ・ジャパンだ。セールスエンジニアリング本部・本部長を務める犬塚昌利氏は「常に安定したユーザーエクスペリエンスを維持することが我々の『NetScaler SD-WAN』の狙いだ」と語る。これを実現するため、NetScaler SD-WANには、一般的に言われる“SD-WANの機能”以上のものが詰め込まれている。
その違いとは何か。一言で言えば、複数回線を使い分ける仕組みそのものが、他社製品とは大きく異なっている。
SD-WANは、回線の状況をモニタリングし、通信断や品質劣化が起こると経路を切り替える仕組みを備えている。例えば、重要度の高いアプリはMPLSを、低いアプリはインターネットを使い、一方の回線が切れたらもう片方に替えるといった“回線ごと”“アプリごと”の監視と制御を行うのが一般的だ。
これに対してNetScaler SD-WANは、上下方向の通信それぞれに、品質や帯域の使用状況の変化をリアルタイムにモニタリングしている。図表1のようにMPLSとインターネット2本の計3本の物理回線がある場合、上り/下りで計6つの論理パスの中から常にベストなパスを使ってパケットを送信する。
図表1 各WANの論理パスを片方向モニタリング
そのため、行きと戻りで異なる回線を用いるケースもあり得る。例えば、MPLSの上り通信が混雑していれば、上りはインターネットを使い、下りはMPLSを使うといった具合だ。
また、アプリごとにルーティングベースで経路制御するのではなく、パケットを出すタイミングごとに最適なパスを選択して送ることも特徴的な点だ。1つ目のパケットを出した後に状況が変われば、2つ目以降はより状態の良い回線に変えるといった細かな制御を行う。
こうすることで、WAN全体としての信頼性と利用効率を向上させるのだ。
このような制御を可能にするため、NetScaler SD-WANでは、各拠点に設置されるアプライアンスがすべて同じ設定、情報を共有している。WAN全体で単一のQoS設定を行い、各拠点のアプライアンスが他の拠点・ネットワークの状況をリアルタイムに理解した上で最適なパスを選ぶ。ネットワークSE部・リードシステムズエンジニアを務める高橋勲氏は、「エンド-エンドで状況を常にモニタリングすることで、効率的かつ確実な通信を行えるようにするという『Always ON』コンセプトで開発されたのが当社のSD-WAN」と語る。
リソースを無駄に使うことを避けるため、必要と判断すれば敢えて通信速度を抑えるといった“気の利いた”制御も行う。図表2にその例を示した。
左側は、機器ごとにQoS設定を行う場合の経路制御のイメージだ。各拠点が10Mbpsの帯域を使えると想定した場合、受け手(右上)に対して2拠点から同時に10Mbpsずつの通信を行うと“渋滞”が起こる。送信側は帯域をフル活用しているが、対向側がボトルネックになりパケットロスが生じる。
一方、NetScaler SD-WANの「End-to-End QoS」の仕組み(右側)では、送信側の2拠点とも5Mbpsに抑えて、受け手側でパケットロスが発生するのを防ぐ。さらに送信側は余った帯域を別拠点への通信に使う。
QoE向上に有効なNetScaler SD-WANならではの機能は、ほかにもある。
1つが「ダイナミック回線ボンディング」、複数回線を束ねて高速通信を行う機能だ。例えば、MPLSでパケットを送信しているときに、インターネットの帯域に余裕があれば、そちらも同時に使ってパケットを送る。
もう1つユニークなのが、パケットを複製して2つのパスに同時に送信する機能だ。パケットをより確実に届けるためのもので、受け手側は先に到達したパケットのみを使う。VoIP/ビデオ会議などのパケットロスやジッタに敏感なアプリを利用する際に有効な機能で、Skype for Businessのようなコミュニケーションツールに適用すれば、より快適な音質で通話が行える。
NetScaler SD-WANには物理アプライアンスのほかにソフトウェア版も用意されており、クラウドへの導入ももちろん可能だ。
また、WAN最適化の機能を合わせて利用できることも特長の1つになっている。(1)SD-WAN機能を提供する「Standard Edition」、(2)WAN最適化機能を提供する「WANOP Edition」、(3)両方を組み合わせて使える「Enterprise Edition」が用意されており、(3)を導入すれば、SD-WANに加えて、アプリ配信の高速化や可視化機能も1台のアプライアンスに集約できる。
競合他社にはあまり見られないこうした特長もあり、「金融業のようなミッションクリティカル性の高いお客様からの引き合いが非常に増えている」と犬塚氏は語る。また、高橋氏によれば「日本に比べて回線品質が低い海外に拠点を展開する製造業からの関心も高い」という。QoE向上に徹底的にこだわったNetScaler SD-WANへの注目は今後ますます高まりそうだ。
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