ノキア Telco Analytics 通信事業者のビジネス変革で豊富な実績 ビッグデータ活用へ組織作りまで総合支援

データ分析によって顧客満足度を詳細に把握し改善に役立てる顧客体験管理(CEM)の領域で豊富なサービス提供実績を持つノキア。同社はその経験とノウハウをベースに通信事業者のビッグデータ活用を支援している。リアルタイムにデータ収集・分析を行う技術の提供に加え、分析結果をビジネスに活かすためのプロセスの確立や組織作りまでサポートする。
松﨑裕樹氏

ノキアソリューションズ&
ネットワークス
技術統括本部
ACS技術本部
ソリューションマネージャー
松﨑裕樹氏

 ビッグデータ技術の進歩により大量かつ多様なデータを収集・分析する仕組みが低コストに実現できるようになったことで、通信事業者でも、データ分析を専門とする組織を設立し、ビジネス変革に役立てようとする動きが活発化してきている。

 だが、ビッグデータ技術を単に導入するだけでは目的を達することは難しいとノキアソリューションズ&ネットワークスの松﨑裕樹氏は指摘する。「データは取れるし、素早く分析するテクノロジも手に入るようになったが、そこから価値を生み出すプロセスとそれを回す仕組みがないのが問題だ」

 ノキアは顧客体験管理(カスタマーエクスペリエンスマネジメント:CEM)の領域を中心に、通信事業者のデータ活用を支援してきた歴史を持つ。データ収集・分析を行うためのソリューションと、それを活用して価値を生み出す業務プロセス、そして、そのプロセスを各組織に適応させるためのコンサルティングサービスまで含めて総合的に支援している。この一連の流れを同社は「ユースケース」と呼んでおり、通信事業者が活用できるビッグデータのユースケースの数はすでに100以上もあるという。「お客様ごとに、その中から効果が見込めるユースケースを当てはめ、必要なソリューションの導入と組織作りまでサポートする」のが、ノキアの「Telco Analytics」のコンセプトだ。

OSS/CEMを統合・刷新する ノキアのTelco Analytics


 具体的にどういった用途に活用できるのか。通信事業者におけるデータ分析の用例は図表1の3つに分けられる。

図表1 通信事業者のデータ活用のカテゴリ

図表1 通信事業者のデータ活用のカテゴリ

 1つ目は、ネットワーク/サービスの稼働状況を監視し、オペレーションの効率化等に活用する「ネットワーク/サービス管理」だ。2つ目は「顧客管理」で、顧客満足の向上や乗り換えの抑止のためにCRMやBIを活用するといった取り組みも広く行われている。

 3つ目は「データ・マネタイゼーション」だ。マーケティングや、新たなビジネスモデルを確立するためにデータを活用する流れも出てきている。

 これらを実践しようとする際に課題となるのが、データが分散していることだ。データを持つ部署が種類ごとに異なるため、横断的にデータを分析するには一旦、データ分析専門の部署に集める必要がある。そこでレポートやグラフを作成し、意思決定・アクションを行う人に渡すわけだが、それではタイムリーな分析は行えない。「データをストックとして捉えていては、意思決定する頃には状況が変わってしまう」(松﨑氏)のだ。

 これを解決するには、プロセスの自動化が有効だ。同氏は「大量のデータをフローとして捉え、データを収集し分析する過程を自動化することでリアルタイムな分析が可能になる」と話す。その結果を基に人間が意思決定を行うほか、アルゴリズムが自動的にネットワークを変更するなど、アクションまで自動化できるケースも出てくる。

 では、その仕組みを通信事業者の業務プロセスに当てはめると、どのような変革が起こるのか。

 ビッグデータを使った分析には一般的に、図表2に示した3つの手法がある。過去・現在のデータから、過去・現在の事象を分析する「記述型分析」と、予測モデルを作って将来を予測する「予測型分析」、そしてリアルタイムにデータを処理して自律的にアクションをとる「オンライン分析」だ。

図表2 ノキアのTelco Analyticsの特徴

図表2 ノキアのTelco Analyticsの特徴

 記述型分析の例には、先に挙げたネットワーク監視が挙げられるが、ネットワークのデータに加えて顧客の属性や行動、利用しているアプリといった種々のデータを組み合わせて分析することで新たな価値が生み出せる。一方、予測型分析は過去・現在のデータから複数の予測モデルを作り出し、その中から最適なモデルを選ぶ形で行われるが、ビッグデータ技術でより多くの予測モデルを高速に作ることで、予測精度を上げることができる。

 オンライン分析も、データ処理・分析とモデル作成を高速に行えるビッグデータ技術があってこそ可能になる。

 ノキアは、Hadoopを使った分散処理基盤をベースに、機械学習・解析技術などを組み合わせたビッグデータプラットフォームを使って、こうした最新の分析ニーズに応えている。これまでは、OSSやCRM等のシステムが目的ごとに個別に運用されてきたが、「それらにビッグデータ技術を適用することで新たなユースケースが可能になる。このOSS/CEMの統合と刷新を実現するのがTelco Analytics」というわけだ。

欧米の事業者で目覚ましい成果 あらゆる組織がデータを活用


 これを実践した1つ目の例が、予測型分析をマーケティングに活用した米Tモバイルだ。加入者ごとにパーソナライズされたキャンペーンを打つために、加入者の属性や好み、行動などを組み合わせた統合データをリアルタイムに手に入れ、さらにSMS等でキャンペーンの通知を行うところまでプロセスを自動化した。キャンペーン通知のクリック率は4%から20%へと大幅に向上。キャンペーンの立案に要する時間も従来の5日から1時間に劇的に短縮した。当然、キャンペーンの実行回数も月20回から150回へと増加した。

 次に、オンライン分析の使い道としは、動的にQoSを制御してユーザー経験を向上させる「ダイナミックエクスペリエンスマネジメント(DEM)」がある。ユーザー経験に大きく影響するWeb閲覧や音声、動画視聴を行っているユーザーを検知して、そのセッションに対して高い優先度を割り当てるというものだ。それ以外のユーザーのQoSは少しだけ下げることになるが、基地局が混在している状況でこの制御をリアルタイムに行うことで、ネットワーク自体の性能・容量を上げなくてもユーザー経験を向上させられる。

 ノキアのラボ環境でのトライアルでは、回線容量の効率が20~30%程度改善、ユーザー経験と回線利用効率を両立できることが確認されたという。

 このDEMの仕組みはIoTにも活用できる。パケットの種類ごとにQoSを制御して、多数のセンサー/機器から生成される膨大なデータを効率的に処理するのだ。この分野での応用を目指した研究も現在進められているという。

 記述型分析の例はCEMだ。従来、顧客満足度は、アンケート調査を行うか、ネットワークパフォーマンスのデータから類推するかしかなかった。それに対してCEMでは、カスタマーケアの内容や料金、使っている端末やアプリ、といった要素も組み合わせた指標によって顧客経験の良し悪しを可視化する。

 重要な点は、加入者ごとに、顧客満足度を測る指標が連続的に手に入るようになることだ。ある欧州の事業者では、コールセンターにおける顧客対応や乗り換え予備軍のケアにこの指標を活用。スコアが低い顧客グループを特定して原因を調査し、優先的にケアを実施した。これによって3億円分の収益を守り、1%のチャーンレート削減も実現したという。

 このような効果を生み出すには、データ分析を一部の専門家が行う業務として考えるのではなく、「通信事業者のさまざまな部門・組織にデータ分析のプロセスを導入していく必要がある」と松﨑氏は強調する。

 ノキアは世界20カ国10事業者への提供実績を持つ「CEM Officeサービス」の導入プロジェクトでこれを実践してきており、「100以上のユースケース」はそこで培われたものだ。先述の欧州の事業者では半年間に11のユースケースを確立。マーケティングやカスタマーケア、ネットワーク運用の効率化などさまざまな領域で成果を上げているという。まさに、ビッグデータ活用のプロセスがさまざまな組織に組み込まれたからこそ達成できた事例と言えよう。

 「通信事業者の中で働くすべての部門・人がビッグデータを使えるようにすることが我々のTelco Analyticsのビジョンだ」と松﨑氏。ビッグデータ活用に取り組む国内の通信事業者にとっても大きな助けとなりそうだ。

page top
お問い合わせ先
ノキアソリューションズ&ネットワークス株式会社
E-mail:info-support.japan@nokia.com
URL:http://jp.networks.nokia.com/