通信事業者やクラウド事業者などのサービスプロバイダーは現在、エンドユーザーのニーズの変化に直面している。エンドユーザーがサービスプロバイダーに求めているのは、基本的なネットワーク接続などだけではない。パーソナライズされたクラウドサービスであり、それを得るためには、ある程度のプレミアム料金も許容される傾向にある。
ところが、ハードウェアを中心に構築された従来のエッジネットワークは、柔軟性と機動性に欠け、個々のエンドユーザーごとにカスタマイズしたサービスを提供するのに適していない。変化する市場や顧客ニーズに対応するには、(1)新サービスのスピーディな展開、(2)市場の要求へダイナミックに適応可能なサービスインフラへの移行、(3)俊敏性を向上し、コストを削減できるネットワークの構築──を実現しなければならない。
「そのための具体策としてサービスプロバイダーが期待を寄せているのがSDNとNFVです。これにより、収益拡大の機会を増やしつつコストを削減し、顧客満足度の向上を図ろうとしていますが、そこで注目したいのが仮想ルーターです」。日商エレクトロニクス マーケティング本部 第一マーケティング部 第一グループの井田耕二氏はこう話す。
仮想ルーターの中でも今、特に注目を集めているのがジュニパーネットワークスの「vMX 3D ユニバーサル エッジルーター」(以下、vMX)だ。数多くの通信事業者への導入実績を誇るエッジルーター「MXシリーズ」を持つ同社が、満を持して投入した仮想ルーターである。
vMXには大きな特長が3つある。
1つはx86サーバー上で稼働すること。これによりサービスプロバイダーはハードウェアコストを低減でき、高価な専用部品も不要となる。また、大型のハードウェアを設置する必要がないため、設置スペースの制約からも解放される。物理ルーターと異なり、ハードウェア保守に特別なスキルが必要なく、ハードウェアの検証工数も削減できる。
将来需要を見越して最初に大きな設備投資を打つ必要もないので、スモールスタートも可能だ。ビジネス拡大に応じて増強を行える。サービス需要減少時の投資リスクも低減できる。x86サーバーは他用途への転用性が高いからだ。
2つめの特長は、キャリアグレードの仮想ルーターであることだ。ワールドワイドで多数の通信事業者に採用されているネットワークOSである「Junos」をそのまま仮想化。そのため品質が安定しているのに加え、通信事業者が求める豊富な機能を搭載している。
「MXシリーズと同じく、BGPやMPLS、VPNといった通信事業者向けの機能や、VXLANやEVPNなど今後、データセンター事業者から求められそうなテクノロジーもサポートしています」と日商エレクトロニクス エンジニアリング本部 ネットワークインテグレーション部 第二グループ ソリューションエンジニアの佐々木望氏は説明する。
パケット転送機能についても、MXシリーズに搭載されているASICである「Trio」チップセットのマイクロコードをx86用に再コンパイルした「vTrio」を搭載することで、従来のルーターで使っていたようなフィルタリングやポリシー、QoSなどの機能がx86サーバー上で使え、パフォーマンスの最適化も行っている。
3つめの特長は、MXシリーズとvMXをシームレスに運用できることだ。MXシリーズのユーザーは、新たなトレーニングを受けずにvMXを利用できる。
MXシリーズとvMXのハイブリッド運用も容易だ。vMXでスタートし、高速転送処理が必要になったらMXシリーズへ移行するといったことが柔軟に行えるのだ。
「仮想環境と物理環境を適材適所に配置できます。すでにMXシリーズを利用しているお客様にとっては、利用機能や運用性を変えることなく、vMXとMXシリーズを一元的に管理できるといったメリットもあります」(井田氏)
vMXが大きな導入効果を発揮する主なユースケースは2つある。1つは転送性能よりもコントロールプレーン処理のスケールが求められるケース。もう1つはネットワーク機能がデータセンターに集中化されているケースである。
より具体的に利用例を紹介すると、新しいアプリケーションとしては、クラウドCPE(vCPE)やクラウドPE(vPE)、仮想化されたネットワーク機能を選択的に利用するための技術であるサービスチェイニングゲートウェイ、VPC(Virtual Private Cloud)ゲートウェイ、VXLANゲートウェイなどが挙げられる。
また、従来用途の置き換えとしては、ルートリフレクタやデータセンターゲートウェイ、SDNゲートウェイ、Labシミュレーション、POC(Proof Of Concept)などを挙げることができる。
vMXのアーキテクチャを見てみよう。MXは従来から、フォワーディングプレーンとコントロールプレーンを別プロセスとして持っている。それをVMレベルで実現したのがvMXの大きな特長だ。図表1のVFP(仮想転送プレーン)とVCP(仮想制御プレーン)がそれに当たる。
「今後はパケット処理を行う複数のVFPを、1つのVCPで処理できるようになる予定で、サービス拡張のときにVFPを継ぎ足すだけでよくなります。それにより、スケールアウトがより行いやすくなります」と佐々木氏は説明する(図表2)。
一般的に仮想環境の上で動作させる場合、ハイパーバイザー層がハードウェアをシミュレートし、ネットワークインターフェースも含めて抽象化してインプットとアウトプットの調停まですべて賄う。これが図表1のVirtIOの考え方だが、どうしてもハイパーバイザーの処理がボトルネックになる。
「しかし、SR-IOVに対応したネットワークインターフェースカードの場合に限り、その機能を使ってインプットとアウトプットの調停をハードウェア側に直接行わせることができます」と、日商エレクトロニクス エンジニアリング本部 ネットワークインテグレーション部 第二グループ チーフの小沢雅樹氏は話す。
vMXはさらに進化していく。
「今後のロードマップには、NATやステートフルファイアウォール、IPsecなどといったセキュリティ機能も挙がっており、かなり幅広い機能が揃っていく予定です」(佐々木氏)
日商エレクトロニクスでは現在、vMXの「POCパッケージ」を提供している。仮想ルーターにはまだ手を出しにくいという顧客に対し、ライセンスと日本語化した導入手順書を付けて販売。さらに一定の期間を設け、顧客がvMXを検証する際の技術支援も行うという。
「お客様がなるべく早く評価できるように、通常のサポートよりも深い支援を行います」と井田氏。この機会を生かし、ぜひ仮想ルーターの世界踏み込んでみてはいかがだろうか。
お問い合わせ先 |
日商エレクトロニクス株式会社 マーケティング本部 第一マーケティング部 URL:http://www.juniper-ne.jp/product/juniper_mx/vmx TEL:03-6272-5640 E-mail:jg@nissho-ele.co.jp |