IP Infusion
最高技術責任者(CTO)
村上哲也氏
ネットワーク機器もサーバーと同じように、目的に合わせて様々なハードウェアとソフトウェアを選択し、組み合わせて使えるようになる──。そんな新しい時代を実現するのが、ホワイトボックススイッチ(以下「WBS」)だ。
これまでのスイッチ/ルーターは、ハードウェアとソフトウェアを一体としてベンダーが提供してきたが、これを分離し、用途や目的に応じて組み合わせることを可能にするのがWBSの目的だ。ユーザー側が、求める性能・機能に応じてハード/ソフトを選べるようになることで、コストの最適化が可能になるとともに、機能追加や増強も容易になる。ベンダーロックインを回避し、ユーザー側が自ら主導してネットワークを構築・運用できるようになるのだ。
このWBS用OS「OcNOS」を提供しているIP InfusionでCTOを務める村上哲也氏は「欧米、日本でも通信事業者や大規模データセンター事業者からの関心は非常に高い。“適材適所”に装置・機能が選べることで、ネットワーク全体でコストが最適化できるという点にたいへん興味を持っていただいている」と話す。
OcNOSは韓国最大の通信事業者SK Telecomに採用されたほか、現在20社以上の通信事業者、データセンターで評価が行われているという。「来年以降、OcNOSとWBSは商用サービスにもどんどん使われるようになっていくだろう」と村上氏。通信事業者もWBSの可能性を認めているようだ。
WBSの適用先としては、様々なネットワークが想定されているが、なかでも高い信頼性が要求されるキャリア網や大規模データセンターでOcNOSが評価されている理由は何か。村上氏は「WBSソリューションを提供する他ベンダーと当社では、スタート地点がまったく異なる」と話す。
OcNOSは、IP Infusionが1999年から通信機器メーカーに提供している同社の組み込みソフトウェア「ZebOS」をベースに開発したものだ(図表1の構成図を参照)。ZebOSはこれまでに300社以上の通信機器メーカーに採用されており、世界中のネットワークで15年以上稼働してきた実績がある。このキャリアグレードの品質・信頼性を継承している点がOcNOSの第1の特徴だ。
図表1 ホワイトボックススイッチ用OS「OcNOS」
さらに「WBSでも従来のネットワーク運用をそのまま適用できる」ことが2つ目の強みになっている。
他のWBS用OSには、Linuxコマンドでネットワークを制御するものなどがあるが、それでは、ネットワーク運用管理のオペレーションが従来とは大きく変わってしまう。これに対してOcNOSは、ネットワークエンジニアが従来のオペレーションを変えずに、ネットワークの制御・管理ができるようCLIやSNMPといった既存のインターフェースをサポートしている。
もう1つ、適用範囲の広さも他のWBS用OSと大きく異なる点だ。
OcNOSの核であるZebOSはL2/L3の基本的な機能に加えて、MPLSやQoS、MCLAG、NVGRE、VxLANといった幅広いプロトコル・機能をサポートしており、HA(高可用性)機能も備える。そのため、他のOSが主にデータセンターのトップオブラック(ToR)スイッチをターゲットとしているのに対して、OcNOSはエンタープライズから通信事業者まで様々なネットワークに使えるのだ。L2/L3 VPNによるデータセンター間接続や、MPLS網にもWBSの適用が可能だ。
実際に、OcNOSを評価中の通信事業者等でも、データセンター間のインターコネクトに用いている。村上氏によれば、「EVPN(Ethernet VPN)を適用するケースも一部で出てきている」。ToRからリーフノード、スパインノードを経由して、複数拠点のデータセンターをVxLAN-EVPNで接続するケースや、VPLSを使って離れたデータセンターを連携させるなど、OcNOSのユースケースも広がっているという。
こうした特徴により、既存スイッチの機能と運用法はそのままにWBSの良さ・メリットを享受できることが、OcNOSが選ばれる理由と言えよう。IP Infusionは複数のWBSベンダーとパートナーシップを組んでおり、さらに、様々なサードパーティ製ソフトウェアとの連携も可能なため、ユーザーは既存環境や目的・用途に応じて適切なハードウェアとソフトウェアを選択できる。
ハードウェアは、Dell、Edgecore Networks/Accton Technology、Agema Systems、Interface Mastersの12機種に対応(2016年7月現在)し、1Gから100Gまで幅広いスイッチラインナップをカバーしている。ブロードコム、マーベルのほか、インテル製チップセットにも対応している。
ソフトウェアについては、REST APIやOpenFlow、NETCONF、OpenContrail、Chef、Puppet、Ansibleといったサードパーティ製ソフトウェアと連携するためのインターフェースもサポートしている。既存インターフェースからSDN機能まで幅広くカバーすることで、「従来のレガシーなオペレーションだけでなく、SDNの新しいオペレーションにも対応できる」のだ。
また、OcNOS自体も、適用分野・機能の異なる2種類のパッケージが用意されており(図表2)、目的・用途に応じて選択できる。通信事業者やISPで必要とされるMPLSやVRF等の機能を備える「DC-MPLS」と、IP系の基本的な機能が使える「ENT-IPBASE/DC-IPBASE」(以下「IP-BASE」)だ。最初にIP-BASEでネットワークを構築し、その後、より高度な機能が必要になった場合にも、ハードウェアを替えることなくソフトウェアのみDC-MPLSにアップグレードすれば、MPLS等の機能も使えるようになる。これもOcNOSの大きなメリットだ。
図表2 OcNOS プロダクトラインナップ
OcNOS ENT-IPBASE/DC-IPBASE | OcNOS DC-MPLS | |
---|---|---|
対象分野 | 主にエンタープライズ、データセンター等 | 主にデータセンター、通信キャリア、ISP等 |
機器の操作性 | 慣れ親しんだ従来のCLIコマンド体系に加え、REST APIや3rd Party連携による自動化や、GUIによる見える化により操作性の向上 | |
サポート機能 | ZebOSでサポートしている機能、ただしMPLS等は含まず L2/L3 Feature IP Multicast QoS、ACL等 MCLAG VxLAN * OcNOS1.2.0から対応 |
ZebOSでサポートしている機能は全て実装 L2/L3 Feature IP Multicast MPLS VRF support QoS、ACL MCLAG、TRILL、DCB feature等 VxLAN |
OpenFlow機能 | OpenFlow1.3 | |
3rd Party連携 | NETCONF support OpenContrail Ansible/Chef/Puppet Plugin |
このように、OcNOSなら柔軟性・拡張性というWBSのメリットを最大限に活かせる。ネットワーク機器に求める機能・性能を細分化し、ユーザー自身が、適用する分野によって最適なハード/ソフトを選び、かつそれらを制御するオーケストレーションまで含めて組み合わせることが可能になる。
こうした環境が実現できれば、様々な製品の“いいとこ取り”をすることも容易になる。加えて、ベンダー間の競争を促すことで、さらなるコスト低減も図れるだろう。ユーザーにとって、OcNOSは強力な武器となるはずだ。
IP Infusionは6月末にOcNOSの新バージョン「1.2.0」をリリースしたばかりだが、村上氏は今後、新機能の開発・リリースの速度をさらに早めていく考えだ。「ハードウェアへの依存性がないため、既存のネットワークベンダーと比べて迅速に新機能を開発できる」と同氏は話す。これまで6カ月ごとだった新バージョンリリースを3~4カ月ごとにする計画。「我々が開発する機能を使って、お客様がいち早く新たなサービスを市場に出していけるようにしたい」という。
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