携帯4社の次世代インフラ戦略を読み解く[最終回]イー・モバイルの次世代インフラ戦略(後編)――900MHz帯と1.7GHz帯獲得の成否が将来を左右

1.7GHz帯の残り5MHz幅、そして900MHz帯を取得できるか――。最終回の今回は、イー・モバイルの将来を大きく左右する今後の周波数割当について解説する。

これからのイー・モバイルの次世代インフラ整備計画は、新たな周波数帯をいつ、どのような形で取得できるかどうかで大きく変わってくる。

ドコモ一転で注目! 1.7GHz帯残り「5MHz幅」の帰趨

まず注目されるのが1.7GHz帯の「東名阪バンド」20MHz幅のうち未割り当てで残された5MHz幅の帰趨である。東名阪バンドでは、帯域当たりの3G加入者数見合いで5MHz幅ずつ計20MHz幅を割り当てるというルールが2005年に策定された。このルールに従って、NTTドコモは2008年までに15MHz幅を取得したが、あと5MHz幅が残っているのだ。

この帯域は、イー・モバイルが1.7GHz帯に割り当てを受けている15MHz幅に隣接している。取得できれば20MHz幅の連続した帯域を確保できることから、イー・モバイルは強く割り当てを求めてきた。

これを取得できれば、イー・モバイルはLTEを当初から10MHz幅で運用し、下り86Mbps(端末ベースで75Mbps)のサービスを提供することが可能になる。さらに将来的には、現在DC-HSDPAを運用している10MHz幅をLTEで巻き取り、LTEの最高スペック下り最大173Mbpsのサービスを実現できる可能性も生じるのだ。

新規参入事業者であるイー・モバイルは、加入者が250万に達した時点で新たに5MHz幅の割当が受けられるという他社より緩やかな条件が適用されており、当初はこれによる新帯域の取得を目指していた。しかし、同社は2009年、10MHz幅の新規割当を別途受けた。そして2010年10月から、この10MHz幅のうち5MHz幅に21Mbps対応HSPA+を導入、10MHz幅を3Gで使うことになったため、残りの5MHz幅の割当に必要な加入者数は750万加入となり、2005年ルールによる取得は困難となった。

一方、ドコモは2009年に条件をクリアしたが、申請を見送ってきた。他の帯域の取得をにらみ、イー・モバイルの主張に配慮したためと見られる。ところが、2010年6月に開かれた周波数検討WGのヒアリングでドコモは一転、この1.7GHz帯5MHz幅の「可及的すみやかな割当」を主張し、その獲得に意欲を見せ始める。その背景には、スマートフォンの本格展開を開始し、周波数の必要性が高まったことがあると考えられる。結局、2005年ルールの適用期限であった2010年11月までにドコモが申請を行うことはなく、東名阪バンド5MHz幅の「争奪戦」は仕切り直しとなったが、総務省が新たな割り当て方針を公表した時点で、ドコモとイー・モバイルが改めて1.7GHz帯の取得に名乗りをあげる可能性が高い。

現時点では、1.7GHz帯の獲得についてはイー・モバイルが比較的有利な立場にあるといってよいだろう。この帯域を取得できない場合、同社はDC-HSDPAからLTEに円滑に移行することが難しくなるからだ前編参照。LTEを推進する総務省にとってもこうした状況は望ましくないはずだ。

仮に、1.7GHz帯を取得できなければ、イー・モバイルは現在割り当てを受けている15MHz幅すべてにDC-HSDPAを導入することになる可能性が高い。

さらに、3GPPリリース9ではDC-HSDPAの後継規格として2×2MIMOを実装して10MHz幅の帯域で下り最大84Mbpsの高速データ通信を実現できる「84Mbps HSPA」仕様も標準化されており、2011年の商用化が見込まれている。ローコストでLTEと同等の高速データ通信を実現できるDC-HSDPA/84Mbps HSPAはイー・モバイルにとってLTEに代わる魅力的な選択肢になりえるのだ。

新たに5MHz幅を取得できた場合は、LTEの導入が有力となるが、同時に84Mbps HSPAも選択肢として残る。最終的な判断は、海外でLTEサービスが順調に立ち上がり、世界市場からLTE端末を潤沢に調達できるようになるかどうかに左右されることになる。

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