<連載>光トランシーバーと光伝送技術を徹底解剖最終回 光伝送のトラブルシューティング事例

光伝送技術について基礎から学ぶとともに、実際のトラブル事例を基に解決策のポイントまで解説する本連載。最終回も、前回と同様にトラブルシューティングの実践例から学びます。今回は、WDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)導入時に発生したトラブルをどのようにして解決に導いたのかを紹介します。(編集部)

昨今、長距離伝送には、波長の異なる多数の光信号を光ファイバー上に重ね合わせて送るWDMという技術が使われています。

WDMでネットワークを構成する最大のメリットは、拠点間を1本の光ファイバーで結ぶことができる点です。光ファイバーの運用コストは伝送距離が長ければ長いほど高く、1本ごとに高額な費用がかかります。WDMを使わない従来の方法で接続すると、図表1のように多数の光ファイバーが必要でしたが、WDMにすることで大幅なコスト削減をすることができます。図表2は、光トランシーバーから出力される異なる6つの波長(λ1~λ6)の光信号を合波器/分波器(MUX/DeMUX)で重ね合わせ、1本の光ファイバーで伝送する場合の構成例です。

図表1 従来の接続方法

図表1 従来の接続方法

図表2 WDMを用いた接続方法

図表2 WDMを用いた接続方法

従来方式との違いがよく分かりますが、No pain, no gain…、良い話には必ず苦労はつきものです。今回は、このWDM導入時に発生したトラブルと、その解決法について説明します。

トラブル解決に活躍した測定器トラブル解決のときに使用した測定器を、ここで少し紹介します。下写真のポータブル光スペクトラムアナライザ(以下、ポータブル光スペアナ)の「WaveAnalyzer 200A」です。

ポータブル光スペクトラムアナライザ「WaveAnalyzer 200A」
ポータブル光スペクトラムアナライザ「WaveAnalyzer 200A」

この測定器は、光パワーメーター感覚で簡単に使えます。小型・軽量なのに高分解能でスキャンも速く、操作も簡単です。タッチスクリーン上で表示の拡大・縮小ができ、見たい波形をすぐに表示することができます。スマホ操作に慣れている人なら直感的に操作でき、さらに充電式バッテリータイプなのでデータセンター内にも持ち込めて便利です。

では、実際にポータブル光スペアナで取得したWDMの波長を見てみましょう。図表2で示した構成図の1本のファイバー箇所を観測してみると、6波長(λ1~λ6)が多重化されていることがわかります(図表3)。

図表3 WDM波形

図表3 WDM波形

月刊テレコミュニケーション2021年12月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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加藤 利之(かとう・としゆき)氏

株式会社マクニカ クラビス カンパニー 技術統括部に所属。長年、電源・高速信号に関連する半導体デバイスのFAE(Field Application Engineer)に従事し、新たに光トランシーバーや光計測機器の技術サポートに活動を拡げる

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