【周波数検討WGが最終取りまとめ案】総務省原案を見直し、900MHz帯は5MHz×2を2012年割当、700MHz帯は「AWF案」準拠に

総務省の「ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数検討ワーキンググループ」は2010年11月25日に開催した第10回会合で最終取りまとめ案を公表。懸案となっていた700MHz/900MHz帯の割当方針について、2帯域をペアで使う「総務省原案」を見直し、「700MHz帯及び900MHz帯をそれぞれ利用する案とすることが適当」と結論付けた。

このうち900MHz帯については、まず2012年に5MHz×2を割当、さらに2015年を目標に10MHz×2を追加し、最終的に計15MHz×2を割り当てる方針が打ち出された。周波数配置は海外で3G用として利用が広がっているUMTS900(旧GSM900)に準拠したものとなる。UMTS900は、すでにiPhone4やAndroid搭載スマートフォンなどのグローバル端末がサポートしており、事業者にとって利用価値が高い。すでに名乗りをあげているソフトバンクモバイルとイー・モバイルを軸に、獲得に向けた動きが活発化しそうだ。

700MHz帯に関しては、2015年の利用開始が目標とされた。

具体的な割当プランや帯域幅は明示されていないが、AWF(APT Wireless Forum)で検討されているアジア太平洋地区の標準バンドプランに準拠した形で、25~35MHz×2を割り当てる案が有力と見られる。取りまとめ案では、700MHz帯割当の条件として「TV放送受信用ブースターなどへの影響を踏まえ、基地局用の周波数を770MHz以上とする」ことが示されており、WGで検討された4つの700MHz帯割当案(モデル)の中で条件を満たすのがこの案だけだからだ。

これが実現すれば700/900MHz帯あわせて、最大100MHz幅(50MHz×2)の帯域が2015年までに新たに移動通信に割り当てられることになる。

取りまとめ案では、700/900MHz帯以外にも、(1)1.7GHz帯において、現在未割当となっている東名阪バンド10MHz幅(5MHz×2)に加え、新たに10MHz幅、(2)2.5GHz帯に最大30MHz幅、(3)3~4GHz帯に200MHz幅を、それぞれ2015年を目標として移動通信用に確保することを提言した。

このほか2015年を目標に、(1)家庭・オフィスでのブロードバンド環境整備のために60GHz帯の利用帯域を2GHz幅追加(2012年を目標)、(2)列車無線のブロードバンド化のため400MHz帯の割当を3MHz幅程度に拡大、(3)スマートメーターなどの導入のために900MHz帯に5MHz幅、280MHz帯に5MHz幅を確保、(4)自動車の安全確保のために700MHz帯に10MHz幅、79GHz帯に4GHz幅(高分解能レーダー用)を確保、(5)医療・ヘルスケア分野向けに400MHz帯に10MHz幅程度を確保することを求めている。

8月の中間取りまとめで掲げられた2015年までに300MHz幅以上、2020年にまでに1.5GHz幅以上の周波数を確保すべきとする目標に向けた具体的なメニューが出揃ったことになる。

WGの議論では、構成員の多くから「画期的な内容」という言葉が漏れた。これは、こうした大胆な周波数割当方針に加えて、再編後に周波数の割当を受ける事業者が移行費用を負担するなど周波数再編を円滑に進めるための枠組みが設けられていることからだ。野村総合研究所上席研究員の横澤誠氏は「特に電波の共用という概念が盛り込まれたことが重要だ」と指摘。その円滑な運用のために「利用状況や割当プロセスの透明化が必要」と述べた。デンマーク国立オールボー大学CTIF日本研究所所長の大森慎吾氏は、「周波数再編に市場原理を盛り込んだことが重要」とした上で「競争原理だけで整理できない用途への目配り、技術開発などの支援も必要」だと述べた。

なお、取りまとめ案では、市場原理導入の典型的な手法といえるオークションの導入については「さらなる議論が必要」とし、慎重な姿勢を見せている。

取りまとめ案は11月30日に開催されるICTタスクフォースの「電気通信市場の環境変化への対応検討部会」に報告される。総務省はこの内容を踏まえ新たな「周波数再編の実施方針(アクションプラン)」を策定する。

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