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<特集>海のIoT

「水中光Wi-Fi」で高速通信――青色LEDが切り拓く海中マーケット

文◎坪田弘樹(本誌) 2018.10.10

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水中における無線通信速度を“キロ”から“メガ”へと一気に飛躍させる新技術の開発が進んでいる。日本のお家芸とも言える青色LEDを使った可視光通信によって、海中マーケットを開拓しようとする取り組みだ。

120mで20MbpsJAMSTECは2017年に無人探査機「かいこう」を使った水中光通信試験を行い、高出力半導体レーザー(LD:レーザーダイオード)を用いて距離120mで20Mbpsのデータ伝送に成功した。

イーサネット接続に対応した試験機を用いて、HDカメラ映像の伝送とリモートデスクトップ接続を実施。「遠隔のコンピュータへインターネット越しに接続できることが確認できた。探査機や観測装置をインターネットにつなぐIoTが実現できる」と澤氏は話す。

なお、通信速度は距離に応じて増減し、実験では190mで音響通信と同等の32kbps、最長で290mまでつながることを確認した。距離を縮める、あるいは照射幅を狭めることで高速化が可能で、試算では幅3度の場合、50mで約30Mbps、20mなら500Mbpsまで出せる見込みだという。

また、実験に用いた試作機の出力は5Wであり、デバイスの進化によって「高出力になればもっと距離も伸びるし、高速化もできる」。出力を上げると熱が発生するが、水冷効果が期待できる水中での運用は、陸上に比べて好都合でもある。

今後は装置の小型・軽量化、消費電力の低減などを進め、早期の実用化を目指す。デバイス開発は島津製作所が進めており、澤氏は「将来的にはペットボトル2本くらいのモデムを開発したい。水中ドローンに積んだり、ダイバーが持っていけるようなものを目指す」と話す。

実験用の試作機は、PCや電池も含めて重さ40kg、消費電力350Wだったが、その後の改良により両手で抱えられる程度まで小型化しているという。「あと1年くらいで目標のサイズにできるのではないか」と澤氏。海外メーカーも水中光通信の実用化へ動き出しているため「先手を打ちたい」と意気込む。

緑と赤の光も使う理由とは他国のライバルに対して優位に立つためのポイントは他にもある。

1つが“青以外”の光の使い方だ。

前述の試験は、450nm(青)、525nm(緑)、640nm(赤)の3つの波長を用いて行った。

これは、海水の状態によって通りやすい色が異なるためだ。プランクトンの死骸等によって緑や黄色に濁った海を目にすることがあるが、澤氏によれば、そうした場所では「緑のほうがよく通ったり、赤が使える場合もある」。実験によって「どのケースで緑、赤が有利かという機器開発を進めるうえで重要なデータが得られた」という。

加えて、青/緑/赤の光を組み合わせれば「白色光」が作れるという大きなメリットもある。つまり、照明としても使えるというわけだ。海中での作業に不可欠な照明と通信を、1つの装置で兼ねられる可能性がある。

例えば、ボートの底に取り付けた装置から下方に光を照射し、その範囲内でダイバーや水中ドローンが作業しながら通信も行うという使い方が可能になる。

もう1つ、JAMSTECでは、水中と海面上での直接通信のテストも実施済みだ。ROV(Remotely operated vehicle:遠隔操作型無人潜水機)と空中ドローン間で水面をまたいだ通信に成功。波の影響によって転送効率は落ちるものの通信自体は可能だ。

この空中・水中間の直接通信は、音波も水面で大部分が反射してしまうため、これまで有線しか行うことができなかった。まさに光だからこそ可能な使い方であり、水中無線の用途を大きく広げる可能性がある。船やブイ等の中継器を用いずともデータ転送ができれば、例えばROVやダイバーが潜っている海域の上空にドローンを飛ばし、Wi-Fiスポットのように通信してデータを回収するといった運用も可能になるかもしれない。

海中からインスタも?JAMSTECにとって水中無線通信の目的は、むろん海底探査での利用が第一になるが、澤氏はそれ以外にも多様なシーンでの活用を視野に入れている。水中ロボットや潜水艇の活用は今後、橋脚や護岸等のインフラ点検・補修、港湾警備、水産養殖施設の点検・監視など様々な分野に広がるはずであり、それとともに無線通信ニーズも高まると考えられる。

水中光無線通信の活用イメージ(提供:JAMSTEC)
水中光無線通信の活用イメージ(提供:JAMSTEC)


また、レジャー/アミューズメント分野での利用も想定される。例えば、海に潜るダイバーが通信装置を携行すれば安全対策に使えるうえ、クラウドと連動した新しい楽しみ方も広がる。「水中で撮った動画をリアルタイムにSNSにアップするといった使い方も可能になる」(澤氏)。

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