バズワードとはもう言わせない!「IoTプロジェクト」が動き始めた

2016年に入り、多くの企業でIoTプロジェクトが進行中だ。企業はどのようにIoTを活用しているのか。導入手段の1つであるIoTプラットフォームと、それを利用した事例を中心に動向を見ていこう。

「IoTに予算が付き始めた」。ユーザー企業の現状をこう語るのは、組込み開発やIoT/M2MソリューションのゼネテックでIoTシステム部部長を務めている池上繁氏だ。これまで実証実験を行ってきた企業はIoTに効果があることを確認し、本格的に予算を確保する段階に突入した。

組織にも変化が生じている。「昨年までは、組織横断でIoTに取り組むタスクフォースが多かった。しかし最近は、組織を改編して専任のIoT部門を創設するところも出てきている」。こう説明するのは、日本ヒューレット・パッカード 通信・メディアソリューションズ統括本部 ソリューションビジネス推進本部 IoT/MVNO initiativeの福本靖氏である。

昨年は“バズワード”と捉えられることもあったIoTだが、企業がビジネスにIoTを取り込もうとする動きは着実に進んでいる。

プラットフォームにしのぎを削るこういったトレンドを背景に、多くのベンダーは、IoT関連ソリューションのラインナップ強化や提案活動を活発化させている。

「ベンダーやキャリアは、プラットフォームを中心にマーケットに出てきている」と分析するのは、野村総合研究所 主席コンサルタント ICT・メディア産業コンサルティング部長の桑津浩太郎氏だ。

ユーザー企業においても、プラットフォームが必要であるという認識は浸透している。

「IoTシステムにはプラットフォームの利用は必須だと考える企業は多い。商談でプラットフォームを話題にすると、『それが必要なのはわかっている』と反応が返ってくる」(福本氏)という。

国内で話題になっているIoTプラットフォームとしてまず挙げられるのは、「Amazon Web Services(AWS)」や「Microsoft Azure」などだ。汎用的なIaaS/PaaSとして登場したこれらクラウドサービスは、現在ではIoT用の機能も拡充。IoTデバイスからデータを収集・蓄積し、それを分析・可視化できるようになっている。

AWSやAzureとは出自が異なり、IoT専用のプラットフォームとして作られたのは、日本ヒューレット・パッカード(HPE)の「HPE IoT Platform」、富士通の「FUJITSU Cloud Service IoT Platform」、伊ユーロテックの「Everyware Device Cloud」、エコモットの「FASTIO」、ゼネテックの「Surve-i」などだ。クラウドサービスとしてはもちろん、オンプレミスで利用できるものがあるのが特徴だ。

それに加え、IoTに特化したプラットフォームならではの特色を持つものも多い。例えばHPEは昨年、サーバーベンダーとしての強みをもとに、「Edgeline IoT Systems」というネットワークエッジ製品群を発表した。これは、IoTのエッジ側でデータの集積・分析、機器の制御などを行うエッジコンピューティングを実現するものだ。

また、富士通は同社の独自技術だという「分散サービス基盤技術」をプラットフォームに採用。データをエッジ側とクラウド側のどちらで処理すべきか、事前に設定した閾値などに基づいて、自動的に切り替えることができる仕組みを実装している。

さらに、IoT向けモバイル通信を提供するソラコムの「SOR ACOM Air」、アプリ開発を支援するPTCの「ThingWorx」や日本IQPの「IQP」など、特定のレイヤーに機能を絞り込んだプラットフォームも存在する。

ThingWorxやIQPを利用すれば、ドラッグ&ドロップするだけのノンプログラミングで、IoTで収集したデータを可視化するダッシュボードを作成できる。これまで2、3カ月を費やしていたものが僅か1、2 週間で仕上がるという。

月刊テレコミュニケーション2016年3月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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