新製品&新サービス

ドコモとソフトバンクの3G網を利用した「2SIMルータ」で、ISDN回線の置き換えとIoT需要を狙う日本通信

文◎唐島明子(編集部) 2015.12.02

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日本通信 代表取締役社長の福田尚久氏

NTTドコモとソフトバンクの3G網を利用し、メイン回線とバックアップ回線をデュアル・ネットワークで構成できる「2SIMルータ」が登場した。MVNOの利点を活かし、マルチキャリアのネットワークを利用することで無線通信サービスの信頼性を高めるという。

 

日本通信は2015年12月1日、IoT/M2M向けMVNOサービスとして提供するDual Network戦略の説明を行い、新商品「2SIMルータ」の発売開始を発表した。

「昨今のIoT/M2Mでは、通信事業者、MVNO、SIerなど様々なプレイヤーが入ってIoTビジネスを作っている。その中で日本通信として何をしなければならないかと考えたとき、それはまさにDual Network戦略をきっちり推進すること」と日本通信 代表取締役社長の福田尚久氏は述べる。

 
通信サービスの「低廉化」と「多様化」を目指す

Dual Network戦略とは、メイン回線にNTTドコモの3G網、バックアップ回線にソフトバンクの3G網を利用することで無線通信サービスの信頼性を上げるものだ。これは、「携帯事業者ができない/やりたくない通信サービスを提供する」という日本通信の創業精神から導き出される通信サービスの「低廉化」と「多様化」のうち、多様化にあてはまるという。

「米国ではATM、日本では金融機関やIoT/M2M関係のメーカーの方々と協業していく中で、とにかくセキュアで信頼性の高いネットワークが欲しいという圧倒的なニーズがある」(福田氏)ことから、セキュリティレベルが高く、信頼性のある無線通信サービスの提供を目指すというのが日本通信の戦略。

 
 業務用ネットワークの2大要件とDual Network戦略

セキュリティレベルについては、日本通信はこれまで米国で高度なセキュリティレベルをもつ無線通信サービスを展開してきた。これは、2006年に同社が設立した米国MVNOのコントゥアー・ネットワークスによるもの。主にATM(現金自動支払機)で利用されている無線専用線サービスで、2008年にはPCI DSS認定(Payment Card Industry Data Security Standard)を取得している。

有線ネットワークを用意する必要がなく、電源さえあればATMを設置できるのが、無線専用線を利用するメリットだ。また、通信コストも有線より安価になることから、無線専用線の活用は増え続けており、米国ではコントゥアーは業界のリーダー的な存在として位置づけられているという。

一方、「信頼性になると、有線と比べると無線は難しい。そこでDual Network戦略で2つのネットワークを使い、信頼性を上げる」と福田氏は説明する。そのデュアル・ネットワークを実現する機器が新製品の2SIMルータだ。

 
日本通信・バイスプレジデント プロダクトマーケティング&デベロップメント
の後藤堅一氏。手に持っているのは2SIMルータで、Digi Internationalのルータ
をハードウェアとして利用し、ロジック部分を日本通信が開発している

2SIMルータは、1つの通信モジュールを内蔵し、2つのSIMスロットを装備している。そのSIMスロットに2枚のSIMを挿すことにより、マルチキャリアの通信が提供される。メイン回線のドコモの3G網に障害が発生した場合には、バックアップ回線のソフトバンクの3G網に切り替えることにより通信の信頼性を確保する。バックアップ回線からメイン回線への戻しは、リモートから手動でコマンドを送信することで行う。

 
 2SIMルータの仕組み

なお、ソフトバンク回線に関しては、「ソフトバンクの仕様から、ソフトバンクのSIMを2SIMルータのスロットに挿しても日本ではネットワークに繋がらない。そこで米国でのボーダフォンとのレイヤー2契約を利用してソフトバンク回線を利用している」と福田氏は説明する。

また、SIMを搭載したデバイスが増えると管理が煩雑になる。そこで日本通信は1つの画面で大量のデバイスを管理できる「管理ポータル」を作成するためのAPIを公開し、SIerやメーカーなどがそれぞれ管理ポータルをつくる際に必要な情報を提供していく予定だ。

2SIMルータの利用用途として、プロダクトマーケティング&デベロップメントの後藤堅一氏は、金融機関やISDN回線の置き換え需要などを想定しているという。「日本でもPCI DSSを取得しており、既に日本の銀行から第一号の案件を受注している」と明らかにする。

具体的には、約350万回線あるISDN回線と、約140万回線ある法人向け専用線の置き換え需要を狙う。2SIMルータの通信速度は最大150kbpsで、ルータリース料とSIM2回線の使用料を含む5年リースプランは月額3900円(税別)。ISDN2回線では月額1万円程度、ISDN1回線でも6300円ほどかかることから、2SIMルータのほうが割安になるという。

「今後、IoTで需要が爆発的に増加すれば、ニーズもますます多様化すると考えられる。1つの通信モジュールでネットワークを切り替えるタイプの2SIMルータのほかにも、来春に向けて2つの通信モジュールを搭載して順次ネットワークを切り替えられる『2Moduleルータ』の開発を進めている」と後藤氏は今後のロードマップも紹介した。こちらは、ハードウェアから独自開発している。


デュアル・ネットワーク・ソリューション商品のロードマップ

また、将来的にはメイン回線とバックアップ回線の切替ロジックを進化させ、IPレイヤーの不安定な挙動を検知することでメイン回線が切断されそうな状態を事前に把握し、切断前に切り替えてしまう「2Moduleルータ Advanced」へ進化させることも構想している。これにより、日本企業が求めるファイブナイン(99.999%)の稼働率を目指すという。

デュアル・ネットワーク・ソリューションで3G網を使い続けることについて福田氏は、「CDMAキャリア以外は3Gについて相当長くやっていくようだ。今もサービスエリアは3Gのほうが広い。IoT/M2Mでは通信速度を追求するよりも小さい通信を広いエリアで確保することが必要になるため、現時点では2SIMルータでは3Gを使うことを想定している。しかし自社開発している2Moduleルータは様々なモジュールを利用できるように設計しているので、途中でモジュールを切り替えることで対応できる」と述べる。

 
2Moduleルータを手にする福田氏。メーカーと共同開発を進めており、現在は
検証段階に入っているという

ところで、8月7日に発表したソフトバンクへのレイヤー2による相互接続を申し入れの状況については、秘密保持契約があるため話せないとしながらも、「ソフトバンクとの協議上、何かボトルネックがあれば今日の発表はできませんので、そのあたりの状況は推察いただければ」と福田氏は語った。

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