ICT×未来

中国発の3.9G「TD-LTE」の威力(前編)――次世代PHS、WiMAXの代替規格として急浮上

文◎藤井宏治(IT通信ジャーナリスト) 2010.07.05

  • bookmark
  • Teitter
  • 印刷

昨年10月にスイス・ジュネーブで開催された
ITU Telecom World 2009では、中国移動は
モトローラと共同でTD-LTEの試験設備を構築、
車両による走行デモを実施した

中国が推進する3.9G規格「TD-LTE」への注目が世界的に高まっている。ソフトバンクが導入を検討するほか、海外でもWiMAXの代わりに採用する動きが加速中だ。TD-LTEの全貌に迫る。

ポストWiMAXの可能性も

では、TD-LTEとLTEの違いはどこにあるのだろうか。

TD-LTEの特徴としてまず挙げられるのは、TD-SCDMAとフレーム構成などが揃えられていることだ。TD-SCDMAは、中国移動が08年から展開しているTDD方式の3G携帯電話システム。これにより近接する周波数でTD-LTEとTD-SCDMAを運用しても干渉の影響が回避でき、基地局の共用化も容易となる。TD-LTEは、中国の市場環境を念頭においてデザインされたシステムなのである。

もう1つの大きな特徴は、WiMAXなどで訴求されているTDDの利点がTD-LTEでも継承されていることだ。具体的には以下の3つが挙げられる。

(1)ペアバンドを必要としないため、FDDに比べ運用周波数の確保が比較的容易である

(2)タイムスロットの非対称割り当てが可能であり、ダウンロードトラフィックの多いデータ通信では、下りに多くのタイムスロットを割り当てることで帯域の有効利用が図れる

(3)上り下りに同一の周波数を使うため、スマートアンテナが容易に導入できる。時間ごとに特定の端末に指向性を向ける「ビームフォーミング」をMIMOと切り替えて利用することで、通信状況の改善や容量の拡大が実現できる

特にWiMAX陣営がモバイルブロードバンドでのTDDの優位性として強調してきたのは(2)と(3)である。

TD-LTEは、WiMAXの開発などでこうした技術ノウハウをすでに持つベンダーにも大きなビジネスチャンスをもたらしている。例えば、WiMAXインフラ市場トップのモトローラは昨年春、TD-LTEの開発協力について中国政府と合意。5月1日に開幕した上海国際博覧会(上海万博)会場で中国移動が実施している大規模トライアルに屋内基地局や端末を提供するなど、欧米のベンダーの中でも特に活発な動きを見せている。

モトローラのインフラ部門でアジア太平洋地区の責任者を務めるモハメッド・アクター氏は「当社はOFDM技術にいち早く取り組み、07年にはWiMAX基地局の提供を開始。その後、モバイルWiMAX、FDDのLTEと3世代にわたって技術を蓄積してきた。これらの技術資産の67割はTD-LTEにそのまま生かすことができ、迅速な展開が可能になると中国政府の担当者に昨春説明させていただいたが、これが今回の万博のデモンストレーションにつながった」と話す。

 

世界初となるモトローラのTD-LTE対応USBドングル
世界初となるモトローラのTD-LTE対応USBドングル


さらに重要なポイントとなるのが、WiMAXなどで培われたこれらの技術要素と、その後策定されたLTEの技術要素が融合することで、より高性能なモバイルブロードバンドシステムが実現できる可能性があることだ。

一例が高速移動時の通信のサポートである。現行のモバイルWiMAXでは時速120kmでの通信をサポートしているが、LTEでは時速350kmに対応できる。伝送遅延(RTT)もLTEのほうが格段に小さいのでVoIP対応が可能だ。帯域幅も倍の20MHz幅まで対応でき、最大通信速度を大幅に向上できる。

実はこれらのスペックは2012年に商用化が見込まれる次世代WiMAX(IEEE802.16m)で実現が想定されているものだ。TD-LTEはこれらを前倒しで実用化する技術なのである。関係者の間では、数に勝るTD-LTEが、遠からずWiMAXを吸収するという見方が強くなっている。

 

[後編]世界の商用化動向とソフトバンクの狙い

スペシャルトピックスPR

vmware21052
hitachi2103
nttcom2103

>> 今月の月刊テレコミュニケーション

月刊テレコミュニケーション【特集】シン・ネットワーク
    コンバージェンス

<Part1>5G FMCは2023年始動へ <Part2>IP・光融合に好機到来 <Part3>ホームNWと企業は融合する <Part4>DXへ企業・キャリア融合 <Part5>5GCをコアにスマート工場

インタビュージュニパーネットワークス 古屋知弘社長「5G時代はマルチベンダー AI自動運用をレベル4以上へ」 【ソリューション特集】通信で変わる未来の建設現場 【技術&トレンド】オープン化でSONiCが選ばれる理由 【ビジネス最前線】JTOWERの「本気度」 ほか

>>詳しい目次を見る

スペシャルトピックス

マクニカ先進4社はネットワークのオープン化で何を得たか?

IIJ、ヤフー、KADOKAWA、ブロードバンドタワーに学ぶ理由と成果

アライドテレシスNWの中心はLANからWANへ
学校に見る、次世代WANの作り方

次世代WANの在り方について学校を例にアライドテレシスが解説する。

VMware SD-WAN by VeloCloud旭化成がSD-WANを
国内340カ所に導入する理由

旭化成はVMware SD-WAN by VeloCloudへの切り替えを開始した。

GlobalMeetウェブキャストウェビナーツールの新・選択肢!

セミナーや決算発表も今やオンライン! ソフトバンクならウェビナー初心者から経験者まで満足できる。

日本シエナコミュニケーションズ OTTで始まったDCI次世代トレンド 鍵は「身近になったROADM」

今、データセンター間接続(DCI)の最前線で何が起こっているのか。

VMware NSX Advanced Load BalancerDX推進の大きな障壁に!
従来型ロードバランサーの課題とは

C/Dプレーン分離で完全ソフトウェア型のヴイエムウェアは全く違う!

VMwareVMwareのネットワークビジョン「Virtual Cloud Network」

国内SDN市場シェア75%超のヴイエムウェアが目指すネットワークとは

アライドテレシスニューノーマル時代のWANとは?
インテントNWをアライドが実現

テレワークの拡大に伴って、企業WANに変化が訪れている。

ヤマハヤマハネットワークに溶け込むUTM
メーカー直通のサポート窓口も

中堅・中小市場で大きなシェアを誇るヤマハが新たにUTMをリリース!

NTTコムオンライン対面業務のオンライン化を実現する
B2C向けスマホビデオ通話サービス

サポートセンターなど一般消費者との接点のオンライン化も進めよう!

東京エレクトロンデバイスMicrosoft 365の負荷を最小限に
Citrix VDIに“最高”のSD-WAN

ファーストパケットからブレイクアウト可能なSD-WANだから違う!

日商エレクトロニクスコロナ後への備え Cisco SD-WANが企業WANを次のステージへ

新しい働き方を実現する要にCisco SD-WANはなる!

NVIDIANVIDIAが一大イベント「GTC」
テレコムの最前線がここに!

通信業界に少しでも関わる人なら見逃せないセッションが目白押しだ。

日立国際電気ローカル5Gに無線・映像のDNA!
エッジで映像処理するAIカメラ

日立国際電気がローカル5Gの構築から保守運用までサポート!

NTTコミュニケーションズ高品質ローカル5GでDXを強力支援
運用、データ活用もワンストップ!

NTTコミュニケーションズのローカル5Gソリューションの特徴とは?

OKIローカル5GとAIエッジがDXに導く
OKIの技術力/パートナーをフル活用

ローカル5Gの導入から運用、マイグレーションまで全方位で支援する。

ローカル5Gを牽引する純国産検証機
スマート工場に特化し低価格を実現

エイビットのSA構成を採用した日本初の4.7GHz帯ローカル5G検証機

マイクロフォーカスキャリアの運用現場を知り尽くした
マイクロフォーカスが語る現状と未来

5G時代、大きな変化を迫られる通信事業者。課題をどう解決すべきか?

VMware SASE脱プロキシもVMware SASEで簡単

クラウドから1画面でネットワークとセキュリティ管理、そしてゼロトラスト実現へ

アンリツローカル5Gのサービス品質を支えるアンリツの測定器

シミュレータやエリアスキャナをコアにローカル5Gに必要な製品を用意

SerivceNow5G/IoT時代、通信キャリアに必要な新たなサービス提供とは?

新たなサービス創出に必要なモデルとは何だろうか。

ヴイエムウェアVMwareの次世代脅威対策とは?
データセンター内もゼロトラスト

ハイパーバイザーにFWやIDS/IPSを分散配置し、East-West通信も防御

パロアルトネットワークステレワーク時代に注目を集める“SASE”とは

ログを一元管理! 脱プロキシも実現。パロアルトの「Prisma Access」でセキュリティの課題解決。

ホワイトペーパー
ネットワーク解放宣言
ローカル5G情報局

アクセスランキング

tc202012

「通信」の力でビジネスを進化させるbusinessnetwork.jp

Copyright(c) 2020 RIC TELECOM Co.,Ltd. All Rights Reserved. 記事の無断転載を禁じます