<特集>動くIoTコネクテッドカーのデータで「道のデジタルツイン」 走るカメラとAIで生まれ始めた価値とは?

センサーの塊と化したクルマから得られるデータは、自動車業界以外でも周辺環境の変化や事象の把握に役立てられる。圧倒的な情報量を持つ車載映像を活用すれば、道のデジタルツインの実現も近づく。

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写真:metamorworks / iStock

数年前からトヨタ、日産、ホンダらが新型車へのコネクテッド機能の標準搭載を始めたことで、ようやく日本でもコネクテッドカー普及の兆しが見えてきた。車両から得られるデータ量が増えることで、その活用が加速することが期待される。

自動車業界のデジタル技術活用に詳しいSBD Automotive シニアスペシャリストの大塚真大氏は、「約10年前からコネクティビティ搭載の普及を進めている欧米の先進的なメーカーと比べて、日本は普及がかなり遅れている」と話す。

同氏によれば、車両データの活用法は大きく3つに分けられる。1つが、自動車メーカーやディーラーの内部オペレーションに使う方法。部品の消費度等を把握し、メンテナンス業務を効率化するなどだ。

2つめは商品企画・開発だ。例えばテスラは走行データからバッテリーの消費状況を監視・分析し、航続距離を伸ばすための制御プログラムの改善等に役立てている。ルート予測や渋滞情報の提供といったナビ機能の強化や、運転操作の無駄を教えるサービス等が次々登場している。

SBD Automotive シニアスペシャリスト クラウド&ソフトウェア 大塚真大氏

SBD Automotive シニアスペシャリスト
クラウド&ソフトウェア 大塚真大氏

合併を背景にデータ統合進む

そして3つめが、外部へのデータ提供だ。匿名化したデータを第三者に売るビジネスだが、大塚氏によれば「欧米ではデータ市場がある程度できているが、利益の少なさが課題の1つとして挙がっている」。自動車業界の業態から見ても、データそのものを収益化しようとするビジネスモデルは推奨できるものではないと指摘する。

ただし、外部と連携したデータ活用サービスの事例は少なからず出てきている。代表例が保険会社との連携だ。急ブレーキや急ハンドルの頻度、走行速度等から安全運転指標を作成し、保険料の算定に役立てるもので、「国内ではトヨタが、欧米ではもっと広く行われている」。

行政機関にデータを提供し、道路の維持修繕に活用する例もある。自動ブレーキ用のカメラ映像を用いて道路のひび割れ等を発見し、位置情報とともに自治体等に提供。巡回点検の手間とコストを削減する。

社会貢献にも役立てられる。有名な事例が「通れた道マップ」(トヨタ)、「インターナビ通行実績情報マップ」(ホンダ)だ。地震や豪雨等の災害時に、被災エリアで実際に通行できた道を表示するもので、各社が自車ユーザーに提供するほか、ホンダ車のデータを使ってYahoo!やゼンリンが情報提供を行っている。

こうした用途を広げるには、データ量を増やすことが欠かせない。これまではメーカーごとに保有する状況が続いてきたが、統合を進める動きも出てきた。トヨタが構築しているプラットフォームには、資本関係のあるスバルやマツダ、スズキ等のデータも集まってくると予想される。

一方、海外ではメーカーの買収・合併が進行している。仏・伊の自動車グループが合併したステランティス、ポルシェやランボルギーニ等を傘下に持つフォルクスワーゲンのように「欧州では大きな塊ができて、大規模データを持てる状況ができてきている」(大塚氏)。また、ドイツでは複数メーカーが参加し、データ統合を目指す構想も進んでいる。メーカー・車種の垣根を超えてデータを統合し、外部の企業・組織が使いやすい形で提供できれば、その活用法はさらに広がりそうだ。

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