NTT、ブロックチェーンを用いた無線アクセス共用技術の実証実験に世界成功

NTTは2023年4月26日、ブロックチェーンを用いて個人間での無線アクセスの共用を可能にする技術の実証実験に成功したと発表した。NTTによると世界初だという。

無線トラフィックは2030年には2020年代の約30倍に増加すると予測されている。その無線トラフィックを処理するためには、設備の増強が必要だが、コスト面で問題がある。

そこでこの技術は、ブロックチェーンと無線アクセスを組み合わせ、無線LANやローカル5Gなどの個人や企業が有する無線リソースを有効利用しようとするものだ。ブロックチェーンの個人間取引の仕組みを個人間の無線アクセス共用に用いる。こうした実装および実験は世界初の取り組みであり、適切な接続先の決定を行う部分はNTTの独自技術である。

ブロックチェーンを用いた通信契約締結フローの概要

ブロックチェーンを用いた通信契約締結フローの概要

具体的な通信契約フローは次の通り。ユーザーの無線端末(UE)が周囲の基地局(BS)の無線信号を観測すると、その基地局のリストと自身のデジタル署名を付与し、通信契約のトランザクションを発行・送信する。そして、ブロックチェーンネットワーク上でデジタル署名を検証し、本人確認を行い、要求内容に改ざんがないことを確認する。その後、ユーザーの端末が送信した基地局リストから基地局の混雑を考慮した上で接続先を決定し、その結果をユーザーの端末と基地局に通知する。この一連の動作はブロックチェーン上のスマートコントラクトで実行される。

この実証実験ではEthereum-PoAを用いて実装したが、他のブロックチェーンプラットフォームを用いても実装可能だという。

接続先の決定結果に基づき、ユーザーの端末と基地局間で通信契約が実行され、基地局は通信を提供し、ユーザーの端末は対価の支払いを実行する。

また、単に都度契約によりこの接続を行うと、受信能力の高い特定の基地局に接続が集中し、通信品質が劣化する。NTT独自の無線リソース利用向上技術は、ブロックチェーン上の通信契約履歴を用いて、混雑している基地局ほど通信契約料を高くする制御を行う。これにより、通信契約利用の安い基地局を選択するだけで混雑が解消され、無線リソース利用効率が向上するという。

実証実験環境と無線リソース利用効率向上技術有無での基地局との接続結果

実証実験環境と無線リソース利用効率向上技術有無での基地局との接続結果

NTTは、この技術により利用者の快適性向上、設備提供者の収入増、社会全体における無線設備投資・消費電力・電波干渉の低減など様々なメリットが期待できるという。エネルギー問題の解決や災害時でも途切れないネットワークの提供に向け、法規制との整合などの課題を乗り越えながら、2024年度の技術確立に向けた検討を進めるとしている。

なお、この技術は2023年5月17日~18日に開催予定の「つくばフォーラム2023」で紹介される。

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