日本のテレワークは大都市偏重でデジタル化にも遅れ、野村総研が欧米と比較調査

野村総合研究所(NRI)は2023年2月28日、調査レポート「2022年の日米欧のテレワーク状況と将来展望」を発表した。日米および欧州主要国(英国、ドイツ、イタリア、スイス、スウェーデン、ポーランド)を対象とし、有効回答数は日本で9400人、他の7国では各2000人。以下、注目ポイントを紹介する。

欧米諸国では新型コロナに対する行動制限が緩和された後もテレワークが定着しており、2022年7~8月に実施したアンケートでも米英では50%、ドイツやスウェーデン、スイス等でも依然として30%以上が実際にテレワークしている。

コロナ禍に対する各国政府の「厳格度」を示す数値は2022年に米英独等で大きく低下。2021年半ばまでは日本の厳格度が相対的に低かったが、2022年半ばに逆転し、日本の行動制限のほうが厳しい状況となっている。ただし、厳格度が下がった国でテレワーク率が下がったわけではなく、米英ではテレワーク対象者が60%超、スイス、ドイツ、スウェーデンでも50%以上と高い。日本は調査対象国内では最も低い29.7%であった。

日本と欧米主要国のテレワーク対象者・実施者比率(2022年7~8月)

日本と欧米主要国のテレワーク対象者・実施者比率(2022年7~8月時点。)
※出典:NRI「2022年の日米欧のテレワーク状況と将来展望」

日本と欧米でテレワークツール導入率にも大きな差

日本のテレワークは2020年5月以降に徐々に減少しているものの、一定程度定着したとNRIは分析している。2022年末時点でも依然として就業者の25%近くがテレワーク対象者となっている。特に東京、神奈川等でテレワーク対象者率が高い。

2022年7月時点で、都道府県別に見たテレワーク対象者率の数値を示したのが下図表だ。東京、神奈川ではテレワーク対象者率は40%以上(東京は51.2%)、千葉、埼玉、大阪も30~40%未満と大都市部ではテレワーク対象者率は高い。反面、島根や鹿児島は10%未満と低く、周辺の地方部でも数値は低めだ。

都道府県別に見たテレワーク対象者率(2022年7月)

都道府県別に見たテレワーク対象者率(2022年7月)
※出典:NRI「2022年の日米欧のテレワーク状況と将来展望」

日本では、2023年5月から新型コロナウイルスを季節性インフルエンザと同じ5類に移行することが決まったが、移行後であってもテレワークは大都市圏を中心に定着する可能性は高いとNRIは考えている。その理由として、「大都市圏で働く人の通勤時間が長くテレワークによる恩恵が大きいこと」「オフィス勤務などテレワーク可能な職種が多いこと」「大規模地震などの自然災害時にもテレワークが有効であること」「テレワークを平常時にも継続したいというワーカーが多いこと」を挙げている。

また、今回の調査では、コロナ禍を契機としたデジタルツールの導入実態についても欧米と日本で差が見られた。

オンライン会議やオンラインの契約締結など、9種類のツールについて導入の有無と導入タイミングについて質問。すべてのツールで、コロナ禍後に導入されたという比率が20~40%と高い。日本の導入率は相対的に低く、欧米諸国と比較すると導入率は半分以下となった。例えばチャットツールについては、米国が68%、英国が55%、ドイツが44%に対し、日本は25%に留まっている。

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