5.9GHz帯を「協調型自動運転」に活用へ 総務省が次世代ITSの研究会

「協調型自動運転」の実現に向けて、5.9GHz帯をITSへ割り当てるための議論がスタートした。2月16日に発足した総務省の「自動運転時代の“次世代のITS通信”研究会」は、ユースケースやV2X通信と携帯電話網(V2N通信)との連携方策などを議論。8月にV2X通信向けの5.9GHz帯の割当方針案を取りまとめる。

2023年2月16日、総務省の「自動運転時代の“次世代の ITS 通信”研究会」(座長・森川博之東京大学大学院教授)の第1回会合がオンラインで開催された。

総務省は、昨年11月に公表した「周波数再編アクションプラン(令和4年度版)」で、既存のITS用周波数(760MHz帯等)に加えて、5.9GHz帯の具体的な利用方策等について検討を行う方針を打ち出している。これを受けて、研究会では、自動運転時代のITS通信のあり方を検討する。

会合ではまず、事務局(総務省 電波部 移動通信課)が、自動運転におけるITS通信の現状を報告、議論の方向性を提起した。

事務局は最初に、カメラやレーダーなどを用いた「自律型自動運転」から、将来的に車車間(V2V)通信、路車間(V2I)通信などを組み合わせた「協調型自動運転」への進化が期待されると説明。そのうえで、協調型自動運転においては、携帯電話網(V2N通信)を活用した自動運転地図の更新や遠隔監視・制御、車車間/路車間通信を活用した道路情報、交通情報の共有など、多様なユースケースに応じた通信が必要とされていると指摘した。

今回の研究会では、「V2X通信」をV2V通信とV2I通信の総称として用い、「V2N通信(携帯電話網)」を含まない形で議論を行っていく。

5.9GHz帯を検討対象とするのは、この帯域が欧州や米国で自動運転用にすでに活用され始めており、普及を進めるには欧米と歩調を合わせる必要があるからだ。

欧州では、2008年に5.9GHz帯の30MHz幅をITSに割り当て、2020年にさらに20MHz幅を追加で割り当てた。欧州では現在、無線LANをベースとしたDSRC方式と携帯電話に近いC-V2X方式の双方が利用できるという。

米国では、FCCが1999年に70MHz幅をITSに割り当てたが、2020年にその一部の割当を無線LANに変更。ITS向けは30MHz幅に縮減したうえで、システムをDSRC方式からC-V2X方式に変更している。

5.9GHz帯の割当で問題となるのが、日本では現在、この帯域が放送業務(FPU)用として番組制作や災害報道などに用いられていることだ。割当をITSに変更するためには、既存利用者の移行やFPUとの電波干渉の検討が必要となる。今回の研究会には、通信機器ベンダーや自動車メーカー、通信事業者のほか、放送事業者も参加して検討を行う。

図表1 ITSへの割当が検討される5.9GHz帯
図表1 ITSへの割当が検討される5.9GHz帯

こうした状況を踏まえ、事務局では検討事項を以下の4つに整理している。

(1)自動運転時代の“次世代のITS通信”で実現するユースケース
760MHz帯・5.9GHz帯のV2X通信や、V2N通信(5G/B5G)をはじめ、“次世代のITS通信”で実現すべきユースケースは何か。また、円滑な実装・導入に向け、どのような優先順位でユースケースに取り組んでいくべきか 等

(2)V2X通信とV2N通信との連携方策など
事務局が予め作成したイメージ(図表2)に基づき、V2X通信とV2N通信の連携方策、特にV2VとV2N、V2IとV2Nそれぞれの連携のあり方や、連携を図るべきユースケースにはどのようなものがあるか 等

図表2 V2X(V2I、V2V)通信、V2N通信の役割分担・連携イメージ(案)

図表2 V2X(V2I、V2V)通信、V2N通信の役割分担・連携イメージ(案)

(3)5.9GHz帯V2X通信向けの割当方針(案)、導入ロードマップ(案)
上記の検討項目を踏まえ、どのような割当方針、導入ロードマップとすべきか 等

(4)導入に向けた将来の課題、その他推進方策
既存無線局の周波数移行方策・費用負担のあり方やV2X通信の通信方式(C-V2X方式/DSRC方式のいずれとするか) 等

(4)については、欧州と米国との間で自動運転に対する考え方に差異があることや、日本でも5.9GHz帯に直ちにITSを導入できる状況にはないことから、議論は今年夏に予定されている報告書の取りまとめ以降に行うという。

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