<特集>デジタル田園都市国家構想「地域DX人材を再定義」デジ田応援団に聞く、地方がDXに成功する方法

いかにして地方からのDXを実現していくのか──。多くの自治体や民間企業が集まり、デジ田を支援する応援団が結成された。その代表理事を務める藤原洋氏にデジ田の意義や成功のカギを聞いた。

――地方創生は以前から日本の重要な政策課題でしたが、岸田政権の看板政策の1つ「デジタル田園都市国家構想(以下、デジ田)」が従来の地方創生政策と違う点はどこにあるとお考えですか。

藤原 地方創生の起源は、第2次安倍政権にあります。2014年12月27日に、「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」と「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を閣議決定したところから始まりました。

岸田政権のデジ田は、これを継承するものですが、同時に新しい要素も入っています。それは、名前にもある「デジタル」と「田園都市」という2つの要素だと思っています。

まずデジタルについてですが、私は初代、2代目、3代目のデジタル大臣それぞれと議論したことがありますが、デジ田はデジタル庁の創設と密接に関連した政策だと考えています。

デジ田を推進しているデジタル田園都市国家構想実現会議のヘッドは岸田総理ですが、ナンバー2である副議長には、デジ田担当大臣、内閣官房長官に加えて、デジタル大臣が配置されている人員構成を見ても、それは明らかです。

デジタル庁は全省庁統一のガバメントクラウドを作り、その共通基盤の下に、全自治体の基幹システムも相互接続しようとしています(図表1)。全国には1718の自治体がありますが、その大きな課題の1つは各自治体の基幹システムがバラバラに作られてきたことでした。しかも丸投げしているうち、作ったベンダーにしか分からなくなり、ベンダーロックインも生じています。

図表1 ガバメントクラウドの概要

図表1 ガバメントクラウドの概要

――デジタル庁が進める国のデジタル政策と緊密に連動した、地方自治体の基幹システムの大改革という側面もあるわけですね。

藤原 ガバメントクラウドに統合していくだけではありません。これまで紙の書類に記入していたのをデジタル入力にして、様々な窓口対応をワンストップ化したり、デジタルの力を使って、各自治体が住民サービスの効率化等の地域DXに取り組もうとしている点も、第2次安倍政権のときにはなかった新しいところでしょう。

もう1つのキーワードである田園都市は、ご存じの通り、岸田総理が会長を務める宏池会の元会長である大平元総理の政策に由来します。大平元総理は1978年に首相に就任した際、国家の中長期的課題を議論する政策研究会をいくつか設けましたが、その1つが「田園都市構想研究グループ」でした。

デジタル田園都市国家構想応援団 代表理事 ブロードバンドタワー 代表取締役会長兼社長 CEO 藤原洋氏

デジタル田園都市国家構想応援団 代表理事
ブロードバンドタワー 代表取締役会長兼社長 CEO 藤原洋氏

各自治体の自主性を尊重する、画一的な都市モデルは目指さないといった当時の大平総理の思いを、宏池会の後継者である岸田総理は受け継いでいるわけです。

デジ田では、地域のデジタル化の取り組みを募集し、優れた自治体などを表彰する「Digi田甲子園」というイベントを行っています。全国の代表が集まる高校野球のアナロジーですが、これもまさに地域それぞれの豊かな個性を活かした取り組みを応援しようということですよね。

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藤原洋(ふじわら・ひろし)氏

1954年福岡県生まれ。1977年京都大学理工学部卒業後、日本アイ・ビー・エムに入社。日立エンジニアリング、アスキー等を経て、1996年12月にインターネット総合研究所を設立、同社代表取締役所長に就任(現任)。2012年4月ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEOに就任(現任)。総務省Beyond5G推進戦略懇談会構成員、デジタル変革時代の電波政策懇談会構成員等を歴任

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