<特集>データセンターの未来は?「6G時代、データセンターは分散化する」ブロードバンドタワー藤原洋CEO

過去10年以上にわたり大規模化・集中化を続けてきたデータセンター市場の潮目が、5G普及を機に変わろうとしている。ハイパースケーラーへの対抗軸の1つとして地域分散化を進めようとしているのがブロードバンドタワーだ。Beyond 5G推進戦略懇談会のメンバーも務める、会長兼社長の藤原洋氏はデータセンターの将来像をどのように描いているのか。

ブロードバンドタワー 代表取締役 会長兼社長 CEO 藤原洋氏

ブロードバンドタワー 代表取締役 会長兼社長 CEO 藤原洋氏

――2000年にインターネットデータセンター事業を開始してから22年。この間、データセンター(DC)の役割と機能は変化してきました。これから本格化する5G時代については、どのように展望していますか。

藤原 インターネットのテクノロジーが進化するのに伴って、DCの役割は変わってきました。

1997年に日本初の商用インターネットエクスチェンジ(IX)を東京・大手町に作り、そこに直結するデータセンターで事業を始めたのが2000年。当時はWeb1.0の時代でした。

我々が事業を始めた2000年以前には、今あるようなDCは存在しませんでした。複数のプロバイダーがトラフィックを交換するための相互接続ポイントとしてIXが登場し、このIXに直結するかたちで作られていったのが、現在一般的になっているインターネットDCです。

Web2.0になってDCの役割も大きく変わり、情報サービスの大部分が米国のハイパースケールプロバイダー、いわゆるGAFAMに移りました。

クラウドコンピューティング全盛の時代になったわけですが、日本にあるハイパースケールDCを作っているのはすべて海外のプレイヤーです。我々も含めて、日本のプレイヤーは誰もやれていません。

――5G時代には、状況は変わりますか。

藤原 DCの使い方は、分散型になっていくと予想しています。アプリケーションが要求するラウンドトリップタイム(RTT)に応じてDCを使い分けるのです。理由は、低遅延、多数同時接続、高速大容量という5Gの特徴を活かせるDCが必要とされるからです。

ハイパースケールDCの需要は今後も引き続き増大しますが、並行して、都道府県に1つ、あるいは政令指定都市に置かれるリージョナルDC、そして、より小規模なエッジDCへと分割していくでしょう。我々もこの変化を見越して事業領域を広げていこうとしています(図表参照)。

図表 ラウンドトリップタイプ(RTT)に応じたDC事業へ

図表 ラウンドトリップタイプ(RTT)に応じたDC事業へ

当社は現在、東京と大阪の都心型DCを主体に事業を行っていますが、そう遠くない時期に我々独自のハイパースケールDCを作ろうと考えています。都心型DCとハイパースケールDCがRTT20~100ms(ミリ秒)の領域を担い、リージョナルDCが20ms以下、エッジDCが5ms以下と、RTTに応じたサービスを展開することで、都心型DC会社からの脱皮を目指します。

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藤原洋(ふじわら・ひろし)氏

1954年福岡県生まれ。1977年京都大学理工学部卒業後、日本アイ・ビー・エムに入社。日立エンジニアリング、アスキー等を経て、1996年12月にインターネット総合研究所を設立、同社代表取締役所長に就任(現任)。2012年4月ブロードバンドタワー 代表取締役会長兼社長CEOに就任(現任)。総務省Beyond5G推進戦略懇談会構成員、デジタル変革時代の電波政策懇談会構成員等を歴任し、2022年2月にデジタル田園都市国家構想応援団(デジ田応援団)代表理事に就任した

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