<特集>データセンターの未来は?「DC分散化の障壁と担い手」Beyond 5G時代のデータセンター(後編)

Beyond 5G時代、データセンター(DC)の分散化が必須になっていく。とはいえ、分散化を進めるには乗り越えなければならない壁がある

前編「GAFAか地方分散か」はこちら

DCの分散化を進めるにあたっては大きな障壁がある。調達・運用コストの問題だ。中央集権型クラウドは経済的合理性を最大の優位点として成長してきたが、分散化すれば「規模の経済」のメリットは失われる。

DCを分散化すれば調達コストは増大し、運用も複雑かつ煩雑になることは避けられない。この課題を解消するための必須要件としてインテルの堀田氏が挙げるのが、「ソフトウェアでネットワークとエッジDCを管理・運用する」ことだ。あわせて、人的リソースも分散させる条件を整える必要がある。

運用管理のリモート化は必須

前者に関しては、サーバーやストレージ、ネットワークといったDCを構成するコンポーネントをすべてソフトウェアで制御・管理できるようにする。かつ、電力や冷却設備も含めて、運用管理のリモート化が不可欠だ。グローバルにDCを展開する大規模事業者ではすでに、「海外のDCには物理的な作業をするのに最低限必要な数人の技術者だけを置き、本国からリモートで管理するケースも出てきている」(堀田氏)。

約10年前から数ラック規模のコンテナ型DCを展開し、2021年からは、ラック数台分の設備を冷蔵庫大の箱に収めたマイクロDCを展開し始めたIIJも、「リモートで運用・監視するための機能を搭載し、マネージド・サービスとして提供することで、エッジDCの展開をしやすくしている」と、IIJ 基盤エンジニアリング本部 基盤サービス部 サービス開発課長の室崎貴司氏は話す。

マイクロDCは、「サーバールームと電力供給、空調、物理セキュリティといったDCに必要な機能を詰め込んだ」(同氏)もので、サーバールームの置き換えのほか、工場等のオンサイトに置くエッジDCとしても活用できる。リモート管理機能とDCの運用ノウハウを合わせて提供するこうしたモデルが広がれば、DCの地域分散の後押しになるだろう。

エッジDCとしての活用が期待されるマイクロDC

エッジDCとしての活用が期待されるマイクロDC。
写真は、IIJが国内初導入した12Uタイプの屋外設置モデル(豪Zella DC社製)で、
サーバー冷却用空調ユニット、UPS、環境センサー、セキュリティカメラ、
物理セキュリティ(遠隔操作可能な電子錠等)を備える

地域DCにも「規模の経済」

こうした取り組みと並行して、低遅延化や脱炭素化の要請から分散DCの活用は徐々に広がり始めている。国内ではNTTドコモが全国9拠点で5G MECサービスを展開。米国ではマイクロソフトとAT&Tが提携し、全米で約60カ所のエッジDCを活用したサービスを始めている。

MRIの西角氏はさらに「5~10年後には、エッジの優位性が増す可能性がある」と展望する。地方DCでも、現在のハイパースケールDCを超える量のトラフィックをさばくような世界が訪れる可能性があるからだ。

MRIでは、2040年までのトラフィック需要の変化を予測。データ処理のエッジ化が最大限に進んだ場合のシナリオでは、2030年のトラフィック量を2020年比で18倍、2040年は同309倍に膨らむと見積もっている。

この場合のデータ処理位置の変化を示したのが図表3だ。Bのシナリオでは、都道府県ごとに分散設置される地方DCで、現在の300倍もの全トラフィックのうち35%を処理することになると想定。2040年の地方1拠点の処理量は、現在の東京・大阪のそれの6倍にも達すると試算している。

図表3 データの処理位置の変化と分散化/エッジ化の進行

図表3 データの処理位置の変化と分散化/エッジ化の進行

「情報爆発が起こり、データ利活用が圧倒的に進んだ2030年代の世界では、地方DCでも規模の経済が成り立つと予測している」(西角氏)

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