<特集>日本の通信インフラの論点災害に負けないICT レジリエントな通信インフラ技術が続々登場

災害大国・日本。いかに災害に強い通信インフラを実現するかは、国家的重要課題の1つだ。能登半島地震では船上基地局やStarlinkが活躍したが、通信インフラのレジリエンスを高めるための取り組みが進んでいる。

石川県能登地方で最大震度7の揺れを観測した「令和6年能登半島地震」。電気や水道などのライフラインに大きな影響を及ぼしたが、通信も例外ではない。NTT西日本は「立ち入り困難地域を除き、大部分の応急復旧が完了した」(2024年1月18日時点)としているが、ピーク時には同社の固定電話サービス7860回線、インターネット1500回線に影響が出た。

今後も南海トラフ地震や首都直下地震の発生リスクが懸念されるが、このような大規模災害に備え、レジリエンス(強靭性)の高い通信ネットワークの重要性が日に日に高まっている。日本の通信事業者は東日本大震災以降、車載型/可搬型基地局やポータブル発電機を相当数整備するなど、災害対策を進めてきた。

NTTとKDDIは2020年9月、災害対策などの社会課題の解決に取り組む社会貢献連携協定を締結。両社はこの取り組みを「『つなぐ×かえる』プロジェクト」と名付け、業界内連携を推進している。「自然災害が多発する中で、個社ごとに取り組むよりも、パートナーシップを組むことで様々な社会課題の解決に貢献できると考えた」。KDDI コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進本部 サステナビリティ推進部 ESG推進グループ グループリーダーの鳥光健太郎氏は業務提携の狙いをこう話す。

KDDI コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進本部 サステナビリティ推進部 ESG推進グループ グループリーダー 鳥光健太郎氏

KDDI コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進本部 サステナビリティ推進部 ESG推進グループ
グループリーダー 鳥光健太郎氏

最も注力している取り組みの1つが、両社が保有する船舶を活用した災害対策だ。能登半島地震発生時には、NTTワールドエンジニアリングマリンが運用する海底ケーブル敷設船「きずな」に携帯電話基地局を設置して「船上基地局」を運用。衛星アンテナで受信した電波を海上から発信し、「陸地での復旧が困難だったエリアの復旧に貢献した」とKDDIエンジニアリング 運用保守事業本部 西日本運用本部 西日本支社 福岡フィールド2G エキスパートの糸瀬大輔氏は説明する。

KDDI エンジニアリング 運用保守事業本部 西日本運用本部 西日本支社 福岡フィールド2G エキスパート 糸瀬大輔氏

KDDIエンジニアリング 運用保守事業本部 西日本運用本部 西日本支社 福岡フィールド2G エキスパート 糸瀬大輔氏

Starlinkとスマホの“直接通信”も

またKDDIは、能登半島の被災地に衛星ブロードバンドサービス「Starlink」を利用するための機器を350台納入した。「従来の衛星通信と比べ、高速かつ低遅延なサービスを提供できる。アンテナは小型・軽量で持ち運びも容易なので、大量の機器を送ることができた」とKDDI 技術統括本部 エンジニアリング推進本部 運用管理部 ネットワーク強靭化推進室 室長の大石忠央氏は振り返る。

厚生労働省管轄の災害医療派遣チームDMAT(Disaster Medical Assistance Team)と共同で、Starlinkを活用した医療活動の支援も行っている。被災情報や診療データの登録・照会、拠点間のオンライン会議にStarlinkが使われているという。

船上基地局、医療現場でのStarlink活用(出典:KDDI)

船上基地局、医療現場でのStarlink活用(出典:KDDI)

船上基地局、医療現場でのStarlink活用(出典:KDDI)

能登半島地震での衛星通信は、主に基地局のバックホール回線用途として使われていたが、衛星とスマートフォンの“直接通信”も可能性を秘めている。KDDIはStarlinkとauスマートフォンとの直接通信サービスを2024年内に提供予定で、「商用化されれば、孤立集落の通信確保に非常に有用となるだろう」と同部 エキスパートの川瀬俊哉氏は解説する。

KDDI 技術統括本部 エンジニアリング推進本部 運用管理部 エキスパート 川瀬俊哉氏

KDDI 技術統括本部 エンジニアリング推進本部 運用管理部 エキスパート 川瀬俊哉氏

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