NTTドコモの電子書籍戦略――青山幸二ユビキタスサービス部長インタビュー

NTTドコモは2011年から大日本印刷と共同で電子書籍サービスを本格的に開始する。通信事業者やメーカー各社が電子書籍事業に参入するなか、ドコモの事業概要をユビキタスサービス部長の青山幸二氏に聞いた。

――8月4日に大日本印刷(DNP)と携帯端末向け電子出版ビジネスで業務提携すると発表しました。「GALAXY S」の発売に合わせて10月28日から電子書籍のトライアルサービスが始まりましたが、反響はいかがですか。

青山 アクセス数については公表していませんが、順調に伸びています。

トライアルサービスは、電子化による新しい読み方や利用スタイルを提案することを目的としています。電子書籍では、音声、音楽、映像を部分的に利用したり、紹介しているレストランの位置情報を表示したり、電話番号と連携することが可能です。例えば、ハワイを舞台にした吉元由美の小説『Hawaiian 4 Love Stories 彼女の胸に風が吹く』では、ハワイの映像を背景に歌手の杏里による朗読が流れるようになっています。

コミックなど複数のフォーマットがあるコンテンツについては、さまざまな表現を行うために特別なビューアアプリを準備しているものもあります。単なる書籍の電子化よりもはるかに進化したトライアルサービスを年末まで行い、ユーザーの感想を本格サービスに反映していきたいと考えています。

――通信事業者であるドコモが電子書籍事業に進出したのはなぜですか。

青山 米国では、2007年からアマゾンの「Kindle(キンドル)」をきっかけに、電子書籍が盛り上がりを見せています。これを受けて、日本でもソニー・KDDI・凸版印刷・朝日新聞の4社連合、シャープの「GALAPAGOS(ガラパゴス)」など各社の取り組みが活発になっています。

電子書籍は注目度が高く、市場が大きく拡大することが予想されており、ドコモでは音楽、動画、アプリ(ゲーム)に次いで4番目の大きなコンテンツ分野になると見ています。そこで、通信事業者としてネットワークを提供するだけでなく、新規ビジネスへのチャレンジとして電子書籍に取り組んでいこうとしています。

――今後の事業計画はどうなっていますか。

青山 年内にDNPとの間でジョイントベンチャー設立を目指し、年明け早々から本格サービスを開始する計画です。現時点で対応端末は「Xperia」と「GALAXY S」だけですが、冬春モデルでは「GALAXY Tab」などのタブレット端末や「ブックリーダー SH-07C」のような電子書籍専用端末など、対応端末の充実を図ります。

マルチデバイス化が進むと、通勤時間はコンパクトなスマートフォンや専用端末で読み、自宅に帰ってからゆったりとタブレット端末で続きを読むといったニーズにお応えするため、読んだところから続き読みが可能な「しおり機能」を来春には提供する予定です。

月刊テレコミュニケーション2010年12月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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