モバイル管理に不可欠なMDMの進化系「EMM」を徹底解説

スマートデバイスの業務利用に欠かせないMDM。これにMAMとMCMの機能を加えた「EMM」が一般化している。ベンダー各社はMAMとMCMに対応するとともに、独自機能を用意して差別化を図る。

スマートフォンやタブレットといったスマートデバイスを業務利用する際、MDM(モバイルデバイス管理)を導入することは今や必須になっている。そして2~3年前からはMAM(モバイルアプリケーション管理)やMCM(モバイルコンテンツ管理)のニーズも高まってきた。

こうした状況を受け、MDMベンダーの中にはMDMとMAM、MCMの機能をすべて備えた「EMM」(エンタープライズモビリティ管理)を提供する企業も現れるようになった。

当初、一部のベンダーだけで使われていたEMMという言葉だが、国内外の複数の調査会社がEMMを1つの分野として市場調査を行うなどした結果、広く一般に知られつつある。

また、MDM/MAM/MCMに関するもう1つのトピックスとして、ベンダー各社がユーザー企業の要望に応えるため、独自の機能を提供するようになったことが挙げられる。これにはMDMベンダーが多数現れて競争が激化し、各社が生き残りをかけて他社との差別化を図ることに躍起になっているという背景もある。

ここからは、EMMとベンダー各社の独自機能を中心に、MDM/MAM/MCMに関する最新動向を紹介していく。

モバイルアイアン――EMMでトータルセキュリティ

EMMという言葉を早い時期から提唱していた企業の1つが、モバイルアイアンである。同社はMDMとMAM、MCMをトータルで用意すること、すなわちEMMを提供できることと、マルチプラットフォーム対応することを強みとする(図表1)。

図表1 モバイルアイアンが提唱するEMMの概念
モバイルアイアンが提唱するEMMの概念

MAMは業務アプリとそのデータを適切に管理するのが役割だが、モバイルアイアンではその手法として「ラッピング」技術を用いている。

ラッピングとは、アプリ自体にアクセス権限やデータ保護設定などを施す技術のことで、企業のセキュリティポリシーで包む(ラッピングする)ことからそう呼ばれているのだ。

モバイルアプリコンテナの「コンテナ」も同様の意味であり、業務アプリとそのデータを、セキュリティポリシーを適用した上でプライベートなデータとは隔離して格納することから、コンテナという表現が用いられている。モバイルアイアンはアプリで扱う企業データを保護し、情報漏えいを防止するコンテナ化技術を「AppConnect」と呼んでいる。

「アプリベンダーとのパートナーシップにより、Eメールやオフィスドキュメントの閲覧・編集、クラウドストレージなど、AppConnectを実装したさまざまなビジネスアプリが提供されているほか、自主開発アプリにも容易に組み込むことができる」とモバイルアイアン・ジャパン チャネルマネージャーの中村真氏は話す。

2015年2月には、パブリッククラウドのストレージサービス上の企業文書を保護する新製品「MobileIron Content Security Service」(CSS)を発表した。CSSはDropboxなどに対して、保存した企業文書の暗号化や、企業のセキュリティポリシーを適用するといった機能を持つ。CSSにより個人が使い慣れたパブリッククラウドのストレージサービスを業務でも安全に利用できるという。

CSSを使うことで、企業の情報システム担当者は特定のユーザーや部署に対して文書のアップロード、ダウンロード、編集、共有の可否といったセキュリティポリシーを設定できる。一定期間が経過すると文書を閲覧するためのキャッシュを自動削除する設定も可能だ。各文書に対してどのユーザーが閲覧、保存、編集などの操作をしたかのログも取れる。

なお、CSSを利用するにはモバイルアイアンのEMMの導入が必要となる。

月刊テレコミュニケーション2015年5月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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