企業ネットワーク最前線

日清紡の「災害に負けないICTインフラ」を支える5本柱とは?

文◎太田智晴(編集部) 2014.12.16

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震災から数カ月、日清紡はICTインフラに関して5つの大きな柱からなるBCP(事業継続計画)を策定した。「災害に負けないICTインフラ」を実現するため、日清紡はネットワークやモバイル、クラウドをどう活用したのだろうか。また、業務システムのクラウド化を本格的に進める同社は、コスト削減にも期待している。

災害に強いネットワークをWVSとインターネット設備のサービス化で実現

まずは、ネットワークについてだ。1番目の柱は「被災地以外の地域に影響を及ぼさないネットワーク基盤の構築」だが、日清紡グループの拠点間ネットワークは従来、「ハブとなる拠点が被災すると、ネットワークが分離してしまう」(深川氏)という弱点を抱えていた。

以前の拠点間ネットワークの構成は、いわゆるハブ&スポーク型。このため、ハブ拠点に問題が発生すると、その下にぶらさがるスポーク拠点にまで障害が拡大した。また、ハブとなる拠点間は広域イーサネット、ハブ拠点とスポーク拠点間はIP-VPNといったように異なる種類のWANサービスを採用していた。

災害に強いネットワーク基盤を実現するには、各拠点を複数の経路、つまりメッシュ型に近い構成で接続する必要があるが、そこで採用したのがKDDIの「KDDI Wide Area Virtual Switch」(WVS)だった。

WVSの大きな特徴の1つは、従来の広域イーサネットやIP-VPNなどのWANサービスとは違い、レイヤの異なる複数のネットワークを仮想的に統合できることだ。すなわち、各拠点それぞれのニーズに応じて、レイヤ2かレイヤ3か、さらにはアクセス回線も自由に選んだうえで、これらをシンプルに組み合わせられる。

「それ以前からKDDIのWANサービスを採用していましたが、WVSのおかげで、各拠点が複数のポイントで接続できるネットワーク基盤へとスムーズに移行できました」と深川氏は語る。

こうして社内ネットワークを強固にした日清紡グループだが、これだけでは万全ではない。社外とつながるインターネット接続環境の強化にも取り組んだ。5番目の柱である「インターネット接続設備の増強とアウトソース化」だ。

日清紡グループは従来、KDDIのデータセンターにラックを借りて、ルーターやファイアウォールなどのインターネット接続設備を自前で所有・運用していた。だが、「障害時の対応を考えると、なるべくサービス化を進めたほうがいい」(深川氏)と決断。今年3月、KDDIが所有・運用するインターネット接続設備をサービスとして利用する形態に移行した。

興味深いのは、日清紡グループ独自のセキュリティポリシーの適用を可能にするため、同社専用のファイアウォールを仮想アプライアンスによりKDDIが提供している点だ。

「メール配信やWeb閲覧に関するセキュリティポリシーなどは、どうしても当社独自に作り込む必要がありました。そこで、KDDIのクラウド基盤上に当社専用の仮想ファイアウォールを構築してもらいました」と西村賢一郎氏は説明する。こうした工夫により、自前設備でなくても、きめ細かなセキュリティポリシーを維持できているのだ。

 

日清紡ホールディングス 西村賢一郎氏
日清紡ホールディングス 事業支援センター 財経・情報室 情報システムグループ 高度情報(情報セキュリティスペシャリスト) 西村賢一郎氏

 

 

スマートフォンとiPadにプラスαの価値をもたらしたmoconavi

3番目の柱である「社外からも容易に利用可能なリモートアクセス方法の選定」に関しても実行に移してきた。

ノートPCからVPN経由で社内ネットワークにリモートアクセスできる環境に加えて、2012年にはiPad、2013年にはスマートフォンの活用をスタートしている。iPadはホールディングス会社およびその傘下の中核事業会社の部長以上、スマートフォンは事業会社の営業職を中心に貸与しているという。ともに、KDDIの端末を採用している。

 

KDDI Remote Sync by moconaviのトップ画面
KDDI Remote Sync by moconaviのトップ画面



iPadやスマートフォンから、社内のメール環境やグループウェア、ファイルサーバーなどにアクセスする手段としては、「KDDI Remote Sync by moconavi」を使っている。

moconaviでは、端末にデータを残さず社内のリソースにアクセスできる。このため、情報漏えいのリスクを最小限に抑えることが可能だ。また、スマートデバイス向けに最適化されたユーザーインターフェースにより、快適にメールやグループウェアなどを閲覧・編集できるのもmoconaviの特徴となっている。

日清紡グループがmoconaviの利用を開始したのは2013年11月。

それ以前、同社ではフィーチャーフォンの利用が全体の約7割を占めていた。フィーチャーフォンから社内メールを確認できるシステムはあったが、機能が充実しておらず、社員からは改善の要望があがっていたという。

そんな現場の声も後押しになり、社内検討した結果、機能性とコストパフォーマンスの良さからmoconaviの利用を前提として、スマートフォンの本格導入が決定。導入後2カ月でスマートフォンの利用者が一気に3倍近くまで拡大したという。

日清紡グループでは、各事業会社がスマートデバイスを誰に支給するかなどの判断を行っているが、「フィーチャーフォンと比べると、やはりスマートフォンのコストは高いです。そのため、プラスアルファの価値が見込めないと、『社員が使いたい』と言ってもなかなか通りません」(西村氏)。

こうした事情は多くの企業で同じだろうが、様々な業務システムが便利に使えるmoconaviによって、スマートデバイスの付加価値がより明確に実感されるようになり、導入台数が増えてきているのだ。

さらにiPadでは、リモートデスクトップサービス「KDDI GoToMyPC」も使っている。これは、社内にあるPCを遠隔から利用できるソリューションで、端末にデータ保存せずに済むため、セキュリティ対策の一環として、iPadとセットで導入を決めたそうだ。moconaviからはアクセスできない、ワークフローなどの業務システムを社外から利用するのに活躍しているという。

また、外出先でも部長以上の幹部が承認作業を行えるようになるなど、業務スピードも向上。「緊急対応が必要な際にも、迅速に連絡や判断が行えるようになった」と、利用者からの評価も高いそうだ。

 

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