インテル 5Gソリューション 5Gをエンドツーエンドでカバー 新たな価値創出を目指すインテル

「5Gで新たなサービスを提供し、ユーザー・エクスペリエンスを向上させるには、ネットワーク自体の変革、イノベーションが不可欠になる」──。インテルで5Gソリューションを担当する友眞衛氏はこう強調する。インテルは、強みである仮想化技術を活かして5G時代のネットワーク構築に貢献していく。
友眞衛氏

インテル
ジャパンコミュニケーション・
サービス・プロバイダー・
セグメント ディレクター
友眞衛氏

 目の前に迫った5Gの実用化に向け、インテルが意欲的な動きを見せている。

 インテルは、2016年に端末からネットワーク、クラウドに至るエンドツーエンドの5Gの試験環境の一端として「MTP(Mobile Trial Platform)」を開発、多くの通信事業者や通信ベンダー、ユーザー企業とともに、多様なユースケースでトライアルを進めてきた。

 2017年には米テキサス州オースティンでAT&Tやエリクソンと5GによるFWA(固定無線アクセス)の実証実験を開始。同年9月にエストニア・タリンで開かれたEUデジタルサミットでは、テリアやエリクソンと3D映像を用いたショベルカーの遠隔操作のデモを行っている。

 日本でも昨年11月にNTTドコモ、トヨタ自動車などと5Gでは初となるコネクテッド・カーの実証実験を実施。今年2月に韓国・平昌で開催された冬季五輪では、KTなどと競技場など10カ所に設けた5G設備を用いて、計3800TBにのぼるデータ伝送を行った。このトライアルでインテルは、試験端末・基地局の提供だけでなく、同社の立体映像ライブ配信技術「True VR」を使って、競技会場に設置された360度カメラの映像を5Gネットワークで送り、自由視点映像サービスを実現するという意欲的な取り組みを行っている。

 PC/サーバー向けのCPUで圧倒的なシェアを持つインテルが、「5G」の開発に力を注ぐ理由は、どこにあるのか──。

インテル製モデム搭載の5Gデバイスが2019年に登場


 インテルの日本法人で通信事業者向けソリューションを担当する友眞衛氏は、PC市場が縮小に転じる中で同社が打ち出した“データカンパニー”への転換という方針が、その背景にあると説明する。

 「データセンター/クラウドに様々なデバイスからデータが送られ、AI処理などにより新たな価値を生み出す。そうした世界を実現していくことがインテルの新しいミッション。これを実現するうえで5Gへの取り組みは不可欠だ」というのだ。

 第4次産業革命の基本インフラとなる5G──。そのデータを、デバイスからデータセンターまでエンドツーエンドで扱えるようにすることは、他の半導体ベンダーとの大きな差別化ポイントにもなるという。

 インテルは5Gにおいて当面2つのビジネス領域に力を入れる。その1つが、5Gデバイスのコアとなるモデムチップのビジネスである。

 前述の5Gトライアルで使われているMTP試験端末はFPGA(プログラム可能なLSI)を用いて開発されたもので、デスクトップPCほどの大きさがある。コネクテッド・カーの実証実験は、これを車のトランクの中に搭載して実施されているが、5Gを実用化するにはその機能をスマートフォンに内蔵可能なASIC(特定用途向けLSI)で実現する必要がある。

5Gトライアルで用いられているインテルの「MTP(Mobile Trial Platform)」の試験端末

5Gトライアルで用いられているインテルの「MTP(Mobile Trial Platform)」の試験端末

 インテルはすでにASICベースの5Gモデムチップのプロトタイプを開発しており、今年2月26日~3月1日にスペイン・バルセロナで開かれたMobile World Congress(MWC)2018で、これを搭載した初のモバイルPC(2 in 1 PC)による、映像ストリーミングのデモを公開した。

 このモデムチップは米ベライゾンがFWAサービスでの利用を計画している独自の5G仕様に対応したものだが、インテルは3GPPで5Gの標準無線仕様(5G NR)が策定されたのを受け、昨年末に5G NRに準拠した製品版のモデムチップ「XMM8000シリーズ」を発表しており、2019年後半には搭載デバイスが市場投入される見込みとなっている。インテルでは5Gモデムチップをスマートフォンやタブレットだけでなく、多様なIoTデバイス向けに展開していく考えだという。

インテルのモデムチップを搭載した5Gデバイスは2019年に発売される見込みだ

インテルのモデムチップを搭載した5Gデバイスは2019年に発売される見込みだ

5Gに向けたネットワーク変革を支援


 もう1つ、インテルが5Gで特に力を入れている分野が、仮想化・クラウド技術による通信ネットワークの変革の推進だ。

 「5Gではデバイスやワイヤレス技術の注目度が高い。しかし、5Gにより新たなサービスを提供し、ユーザー・エクスペリエンスを向上させるためには、ネットワーク自体の変革、イノベーションが重要になる」と友眞氏は指摘する。

 例えば多様なサービスが同一ネットワーク上で展開される5Gでは、サービスごとに異なるタイミングで変動するトラフィックを効率的に処理する必要が出てくる。そのためには「ネットワークがインテリジェンスを持ち、その構成やリソース配分を柔軟に変更できるようにする必要がある」(友眞氏)。

 その実現手段となるのが、NFV/SDNといった仮想化技術だ。友眞氏は「仮想化・クラウド化に豊富な経験を持つインテルは、ネットワークの変革に貢献できる」と話す。

 もっとも、現状では変革への動きは早くはない。「4Gのコアネットワーク(EPC)でNFVの導入が進み始めているが、無線アクセス・ネットワーク(RAN)などはまだ手付かずの状態」。友眞氏はこう説明したうえで、「これらの領域でも仮想化を進め、ネットワーク・スライシングなどの機能を使えるようにしなければ、5Gによる多様なサービスは実現できない」と語る。

 そこでインテルは、ネットワークの変革を推進すべく、DPDK(データプレーン開発キット)の提供や、通信ネットワークの機能に特化したライブラリーのオープンソース化、NFV/SDNの構築に対応できるエコシステムの構築などの取り組みを進めているという。

 RANの仮想化に向けてもリファレンスデザインとなる「Flex RAN」を策定しており、「すでにベンダーによるデモが行えるレベルにまで来ている」そうだ。

 こうした取り組みを通じてネットワークの変革が進めば、インテルにとってはインテル®Xeon® プロセッサー(インテルの高性能CPU)やFPGAの新たなマーケットが創出され、AIなどを活かした新たなビジネスチャンスも生まれる。

図表 インテルが提供するエンドツーエンドの5Gソリューション

図表 インテルが提供するエンドツーエンドの5Gソリューション

日本がリーダーシップを発揮できる4つの分野


 5Gビジネスをグローバルで展開するインテルでは、「日本は重要なマーケット」と捉えているという。

 理由の1つは、インターネットを利用した携帯メール、カメラ機能を搭載した携帯電話、モバイルウォレットをいずれも世界で初めて実現するなど、日本が高い技術力・革新性を持っていることだ。

 もう1つが、日本には、5Gでリーダーシップを取れる可能性がある分野が存在していることである。その代表例が「自動車」である。自動車メーカーが多く存在し、前述の5Gコネクテッド・カーの実証実験など、先進的な取り組みが進められている。

 今年2月にはトヨタ、NTT、NTTドコモ、デンソー、インテルなど7社によってオートモーティブ・エッジ・コンピューティング・コンソーシアム(AECC)が設立され、コネクテッド・カー技術の標準化などを検討しており、米国の自動車メーカーの参加も見込まれている。

 さらには、VR/ARを活用したゲームなどで5Gの活用が見込まれる「メディア・エンターテインメント」、高齢化が進む中でニーズが高まっている「ヘルスケア・医療」、産業用だけでなくサービス分野でも利用が広がり始めた「ロボット」も、日本が強みを発揮できる分野だとインテルでは見ているという。

 インテルは、要素技術やプラットフォームの開発、エコシステムの構築を通じてネットワークの革新を図り、5G時代の新たなサービス、ビジネスの創出を可能にしていく考えだ。

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