ITの世界では、コンシューマー向けの製品やサービスが企業に浸透し、ビジネスに変革をもたらす「コンシューマライゼーション」が珍しくない。
その好例が、スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスだ。コンシューマー市場から一足遅れて法人市場でも普及が始まったが、今やスマートデバイスなくして円滑に業務を進めることは難しくなっている。
最近では、チャットも同様の道筋をたどりつつある。
LINEに代表されるコンシューマー向けサービスは、すでにメールや電話に代わる日常的なコミュニケーション手段として定着しているが、ビジネスシーンでの利用も一般的になっているのが実情だ。
しかし実態は、経営層やIT管理者の許可を得ずに従業員が勝手に業務に活用する「シャドーIT」であり、情報漏えいやコンプライアンス違反などのリスクを伴う。かといって、チャットならではのスピード感や手軽さは捨てがたいことから、企業の間では「セキュリティや管理機能を強化したビジネスチャット」に対するニーズが高まっている。
こうした現状を背景に新たなビジネスチャットが次々に登場しており、その数は40以上にのぼるといわれる。その多くが単体で提供されているが、レコモットの「moconavi」のように、EMM(エンタープライズモビリティ管理)の一機能としてビジネスチャットを提供するユニークな製品もある。
EMMは、MDM(モバイルデバイス管理)/MAM(モバイルアプリケーション管理)/MCM(モバイルコンテンツ管理)の3つの要素で構成される。
一般的なMDMベンダーが提供するEMM製品は、デバイス制御・リモートロック/ワイプを行うMDMとコンテナ化やラッピングによってアプリケーションのセキュリティを確保するMAMとがセットでアプリケーションの安全性を確保する「MDM一体型」だ。
これに対し、moconaviはMAM単体でアプリケーションのセキュリティを確保したうえで、必要に応じてMDMを組み合わせる「MDM分離型」であり、他のMDM製品と一緒に導入されることも多い。
レコモット代表取締役CEOの東郷剛氏はEMMの今後の方向性について、「EMMの概念自体が再定義されるだろう」と語る。MCMはドキュメントビューワーやファイルストレージなど対象範囲が狭いためMAMに吸収され、EMMの主要概念から外れると予想する。その代わりにEMMの一要素として新たに加わるのがビジネスコミュニケーション機能、すなわちMUC(モバイルユニファイドコミュニケーション)だという。
もともとmoconaviは「Mobile Communication Navigator」の略称であり、その製品名には「モバイルデバイスで、いろいろなコミュニケーションをナビゲートしていく」という思いが込められている。実際、数年前からmoconaviをハブとして、VoIPや050サービスなどの電話、Web会議、IMといったさまざまな業務システムを連携させる“モバイルUC(ユニファイドコミュニケーション)”の構築に取り組んできた。今年9月にはその一環として、ビジネスチャット機能を追加した。
「UCの機能は今後EMMに統合されていくことになる」と東郷氏は語る。
それでは、moconaviに新たに加わったビジネスチャットはどのようなものか。
まず、テキストチャットやグループチャットをはじめ、スタンプ、動画、無料(ビデオ)通話など、ビジネスチャットに必要とされる機能は一通り網羅している。
moconaviならではの特長として第1に挙げられるのは、さまざまなコミュニケーション手段のコンタクトリストを一元管理できることだ。
ビジネスチャットやメール、電話などモバイルによるビジネスコミュニケーションの手段が多様化する中では、「クライアントが異なるそれぞれのコンタクトリストを統合し、ユーザーの状況に合わせて最適なコミュニケーション手段を選択したり、レコメンドするのがEMMによるUC統合のあるべき姿」と東郷氏は主張する。
これにより、例えばモバイルデバイスのmoconaviとPCのSkype for Business(SfB)との間でチャットをしたり、SfBのアドレス帳から内線通話や050サービスの発着信を行うことも可能になる。また、コンタクトリストの共有により、Office 365のExchange Onlineからメールを送るといったこともできるという。
第2の特長が、セキュリティ強度の高さだ。
moconaviはMAMを「ワークスペース」と捉え、業務アプリケーションをサンドボックス内で仮想サービスのように扱うため、端末にデータが一切残らず、リモートワイプなど個別管理に関わる対策が不要となっている。ビジネスチャットも他のアプリケーションと同じくセキュアサンドボックス内で利用することで、高いセキュリティを実現することができる。
「セキュアでなければ、ビジネスチャットとしての存在意義がない」と東郷氏は強調する。
そして第3の特長が、moconaviのアプリ同士でチャットが行えるだけでなく、SfBなど他のチャットサービスのクライアントとして動作可能であることだ。
SfBをスマートフォンやタブレットで利用したいとのニーズは多いが、チャットの履歴や添付ファイルのデータ、通信相手の電話番号やメールアドレスなどの重要データが端末に残ってしまうことが課題とされる。しかし、moconaviをクライアントとして使えば端末に一切のデータが残らないので、万が一、紛失したり盗まれたりしても安心だ。現在はテキストチャットのみの対応だが、近い将来はボイスとビデオ通話についてもSfBと連携可能にしていく計画。SfBだけでなく、シスコシステムズのSparkなど他のビジネスチャットへの対応も予定しているという。
レコモットは今後、ビジネスチャットのさらなる機能拡張も予定している。その1つがボット開発のAPI化だ。
例えばCRMの日報報告や客先までの経路検索、スケジュール登録などは、一般に専用アプリから入力する必要があるが、これらを対話型インターフェースで処理するボットサービスを簡単に作成できるAPIを来年を目途に提供する。
また、オープンソースのHUBOTなどを標準的に組み込むことで、他社のビジネスチャット向けに開発したボットをmoconaviのチャットでも利用できるようになるという。
このようにmoconaviをハブとして、今後さらにコミュニケーション機能が拡張していくことが期待できそうだ。
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