第5回 M2M発展の鍵を握る「標準化活動」


 第4回では、様々な領域におけるサービス事例から、領域を超えて連携していく統合的なサービスまで、M2Mで実現されるサービスについて紹介した。

 このような統合的なM2Mサービスの実現には、業種や領域を超えて連携していくことが必要不可欠となる。しかしながら、これまで業種ごとに別々に発展を遂げてきた背景もあり、機器とのインタフェース等の規格は現状統一されていない。

 第5回では、M2M事業発展の鍵であり、業種を超えた連携を実現するための重要な取り組みの1つである標準化活動についての紹介と、M2M事業における標準化活動の意義について説明する。

M2M標準化の背景


 京都議定書の採択から14年、条約締結各国ではCO2削減目標を達成すべく様々な施策に取り組んでいる。国内ではECOポイント制の導入など、消費者にCO2削減に貢献する製品や生活環境へのシフトを促す政府主導の施策が記憶に新しい。ECOポイント制は、消費者と企業の経済的側面に働きかける政府シナリオと考えられる。

 また、今年3月11日に発生した東日本大震災の影響による東京電力福島第一原子力発電所の事故、その後の計画停電が日本人のECO指向に拍車をかけ、人々は家電・自動車・住宅など、よりクリーンで効率的なエネルギー消費が可能な製品を求めるようになった。

 一方、欧州連合(EU)では、EU指令(Directive)によって加盟国に対する目標を定めており、M2M標準化に関連するものとして次のEU Mandate(要請)を出し、行政による欧州各標準化機関への標準化規格制定を義務付けた。

<欧州標準規格を制定する義務の例>
(1)M/441 Smart Metering
(2)M/490 Smart Grid
(3)M/468 EV(電気自動車)の充電


 対象となる欧州標準化機関は、欧州標準化委員会(CEN)、欧州電気標準化委員会(CENELEC)および欧州電気通信標準化機構(ETSI)である。CENELECは電気関係、ETSIは通信関係、CENは電気・通信以外の分野における公式な欧州標準化組織として認知されている。

 2009年1月、ETSI内にM2Mに関する専門技術委員会(ETSI TC M2M)が設立され、2011年11月にリリース1仕様書を完成させる予定としている。本委員会は、EU Mandate関連で通信に関するM2M標準化を担当することになっている。

 このように欧州ではM2M標準化の流れが加速しているが、世界規模での異常気象、大震災、低炭素社会へのニーズ、モバイル端末の普及などに伴い、他の先進各国でもM2M標準化が重要視されるようになってきた。その一方で、京都議定書以降、各国の産業毎に独自の進化を遂げてきたデファクトスタンダードが先行する中、これらを連携あるいは統合し、全産業で相互利用可能なM2M通信環境をいかに構築するか、そのための標準化とは何かを真剣に議論する必要が出てきている。

電気通信におけるM2M標準化とは


 通信に関するM2M標準化とは何か、少し図を交えて整理してみよう。図表1は、M2M標準化対象領域を示している。

図表1 M2M標準化対象領域

図表1 M2M標準化対象領域

<M2Mアプリケーション>
 M2Mアプリケーション領域では、電力・ガス・上下水道・医療・運輸・工業・農林水産・家電制御・次世代自動車など様々な公共サービスや産業セクタに特化した、垂直統合モデルによる標準化が、各種フォーラムや標準化団体で検討されている。標準化対象としては、ユースケース、要求条件、アーキテクチャ、情報要素の定義、情報流通方法の定義などがある。

<M2Mサービスプラットフォーム>
 M2Mサービスプラットフォーム領域では、全てのM2Mアプリケーションを様々な公共サービスや産業セクタで共有できるようにする水平統合モデルの要求条件、アーキテクチャ、情報要素および情報流通方法の抽象化などが標準化対象である。また、全てのM2MデバイスをM2Mサービスプラットフォームに接続可能とするために、M2Mデバイスの遠隔管理などが検討されている。

 全てのM2MアプリケーションおよびデバイスをM2Mサービスプラットフォームに接続し、サービスを水平展開するには、M2MアプリケーションとM2Mデバイスをネットワーク接続する必要がある。M2Mアプリケーションはサーバとのネットワーク接続、M2MデバイスはモバイルIP接続や固定ブロードバンドによるIP接続、あるいは後で述べる非IPデバイスを考慮したゲートウェイ接続が考えられるが、サーバ・デバイス・ゲートウェイそれぞれが何らかのコアネットワークを経由する。

<コアネットワーク>
 コアネットワークは、GSM・3G・LTEなどの移動網、xDSL・FTTx・CATV・Ethernetなどの固定網に大別される。コアネットワーク領域におけるM2M標準化としては、既設のコアネットワークをM2Mへ適合させるという目的が考えられる。そのためM2Mの特徴を十分に考慮しながら検討する必要がある。

<M2Mゲートウェイ>
 M2Mゲートウェイは、ホームネットワークやビルディングネットワークなどのローカルネットワークに設置され、M2Mエリアネットワークやデバイスとコアネットワークを中継する役割を担うものである。本領域における標準化は、M2Mデバイスの管理、M2MデバイスとM2Mアプリケーション(M2Mサービスプラットフォーム)との間の情報流通、情報流通手段(プロトコル)が異なる仕様の場合のプロトコル変換を実施するための枠組みを定義するものである。

<M2Mデバイス(M2Mエリア/センサネットワーク)>
 M2Mデバイス領域は、M2Mエリアネットワークやセンサネットワークも含め、デバイス固有の標準化が様々な団体で行われている。この領域の標準化では、特定の技術や通信手段(IP、非IPに関わらない)を持つデバイスの管理、通信制御、情報要素などが各団体個別に検討されている。一部の非IP技術では、IP技術と同等のネットワークを形成することが可能である。

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