M2Mの代表的サービス例


 ここまででM2Mとは何なのか、その概要は理解していただけたのではないだろうか。そこで次に、M2Mサービスの事例を紹介することで、M2Mの世界をさらに深く知っていただこうと思う。事例として取り上げるのは、M2Mサービスの代表例である「テレメータ」と「テレマティクス」だ。

図表3 M2Mサービスの一般事例

図表3 M2Mサービスの一般事例



 「テレメータ」とは、ガスの検針や自動販売機の在庫管理、エレベータの故障状況確認、駐車場管理など、遠隔にある機器の監視や管理を行なうものである。検針器や自動販売機、エレベータ、駐車場の発券機といったデバイスに通信モジュールを組み込み、モバイル回線を通じてセキュアなネットワークと接続することにより、遠隔からも情報を確認できるようにする。

 テレメータの中でも最も身近なのは、エレベータの遠隔監視と自動販売機の遠隔管理である。エレベータの遠隔管理・保守は、M2Mサービスの先駆けだ。エレベータは知っての通り、人間が乗り込み建物内を移動するもので、もし人間が内部に閉じ込められるなど事故が起きた場合には人命に関わる。そこでエレベータに通信モジュールを組み込み、遠隔で稼働状況や故障を監視するサービスが登場した。エレベータに組み込まれた通信モジュールが、迅速な人命救助や機器復旧に貢献しているのである。

 一方、自動販売機の遠隔管理は、主に在庫情報、売上情報、故障情報などを遠隔から確認するものだ。在庫状況を通知することで補充が必要な自動販売機の情報が分かる。そのため、効率的に補充業務を行え、品切れも防げる。また、商品や曜日、季節、地域など、状況や環境に応じた売上情報を収集できるため、自動販売機の設置場所の最適化や商品の生産数の検討といったマーケティングにも活用できる。遠隔から情報をリアルタイムに取得することで、情報に新たなる付加価値を加える好例といえるだろう。

 次に「テレマティクス」である。テレマティクスとはTelecommunication(通信)とInformatics(情報)を掛け合わせた造語。自動車などの移動体に通信システムを組み込み、リアルタイムに情報提供などのサービスを行なっていくものだ。カーナビなどの車載機に通信モジュールを組み込むことにより、モバイル回線経由でリアルタイムに情報を受け取れたり、情報を提供できたりする。

 テレマティクスの具体例のひとつとしては、宅配車両の追跡サービスが挙げられる。宅配業者の各車両のGPS情報を定期的に自社サーバに送信。宅配サービス利用者が宅配業者のサーバにアクセスし、自分の荷物番号を検索すると荷物番号と紐づいた車両の位置を通知してくれるもので、利用者は荷物がいつごろ届くのか、おおよその時間を把握できる。また、業者側は車両の位置情報と配達場所の情報を合わせることにより配達ルートの最適化による業務効率化が可能となるなど、サービス提供側とユーザ側の双方にメリットがある。

 M2Mサービスとは、デバイスに組み込んだ通信モジュール経由で「観測地点の情報」を収集し、作業の効率化や見える化のサービスを提供するものだ。上記の例で「観測地点の情報」とは、自動販売機の在庫状況であり、車の位置情報のことだが、ここで重要なのは「観測地点の情報」がバラバラに存在するだけでは何の付加価値も生みださないということだ。例えば宅配車両の追跡サービスの場合、車の位置情報と荷物番号が紐づくことで、新たな付加価値が生み出される。M2Mは、今まで何の意味も持たなかった情報から新たな付加価値を創出し、貴重な財産にする可能性を持っているのだ。

まとめ


 これまで紹介した通り、エレベータや自動販売機の遠隔管理などは、私たちのくらしの中で、既にM2Mサービスとして提供されている。しかし、もっと多くの機器がつながり、さらに多くのユーザに利用してもらうことで、M2Mサービスはさらに発展していくことができるだろう。そのためには、新たにM2Mサービスを導入する際の手軽さや、既にサービスを開始しているM2Mサービスに、新たなデバイスやサービスをスムーズに追加できる拡張性が必要となる。さらには異なる領域のサービスとの連携が容易に実現でき、サービスとして発展していける仕組みが必要になってくるだろう。

 しかし従来のM2Mサービスは、ひとつの領域に閉じた垂直統合型サービスとして提供されてきたため、異なる領域のサービス連携はもとより、既存サービスの拡張においても多くの費用が発生すると懸念される。また、新規領域において新サービスを立ち上げる場合にも、システムを一から構築する必要があり多くの費用が発生する上、迅速なサービス開始も難しい状況だ。

 この構造は、M2Mが飛躍的な発展を遂げる足かせになっていると言えるだろう。

 第2回ではM2M市場の発展に向けた課題の解決策とそのアプローチについて紹介していく。

(2011年9月1日掲載)

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