第1回 M2Mとは? 〜市場動向と普及への課題〜


 M2Mとは「Machine to Machine」の略であり、モノ(機械)とモノ(機械)があらゆる通信手段(ネットワーク)を用いてつながり合う仕組みや、その通信形態を意味する。もう少し詳しく説明すると、PCやサーバといった情報機器だけではなく、家電や自動車、センサなど、ありとあらゆるモノがネットワークにつながって自律的に通信する機能を持ち、互いにつながれたモノ同士が、人を介さずに情報交換を行い、自動的に制御を行う仕組みがM2Mである。

 これまでのいわゆるインターネット世界では、メールやWeb、SNS、オンラインゲームなど、人と人とが(あるいは人とサーバとが)ネットワークでつながり合い、情報交換を行なってきた。今後、M2Mによって自動車や家電など、現実世界のありとあらゆるモノがネットワークに接続されると、モノとモノ、あるいは、人とモノとが情報交換を行ない、お互いの制御を行なう世界、すなわち“ Internet of Things”の世界が実現される。

 M2Mによって実現される“Internet of Things”という考え方は以前から存在していたが、次の2つの理由から、より具体的で現実味のあるものとなってきている。

 1点目は通信機器が小型化され、あらゆるデバイス(装置)に簡単に組み込めるようになったことだ。大型の機械だけではなく、体温計のような小型の電子機器にも通信機器を組み込むことが可能になったことで、M2Mビジネスの可能性はより拡大した。

 2点目はネットワークインフラの発達だ。今や国内のほとんどの地域で3G回線やブロードバンド回線が利用できる。無線通信のエリア拡大により、国内のほぼ全ての機械がM2Mの対象となりえる。また、通信料金の低価格化もM2Mビジネスを加速させている。

グローバルに拡大するM2M需要


 グローバルでのM2M市場は新興国の需要を取り込みながら急成長している。米国の調査会社Infonetics Researchは、2009年に8900万回線であったセルラーM2M市場は2014年までに4億2800万回線まで成長すると予測している。ここで、M2Mの需要が拡大する背景について、政策需要、企業需要、消費者需要の3つの視点で整理してみよう。

図表1 セルラーM2M市場予測

図表1 セルラーM2M市場予測

Infonetics Research, Embedded Mobile M2M Modem Market Outlook, Oct. 2010より



 政策需要の代表例としては、北米を中心としたスマートグリッドや欧州の交通事故緊急通報(e-call)などが挙げられる。社会インフラのさらなる高度化を目的とした政策的なM2M需要の喚起が先進国では活発である。一方、新興国でも政策的なM2M需要の喚起は行われている。例えば、ブラジルではM2Mを利用した盗難車両追跡システムの装備が義務化されている。

 企業需要で顕著なのは、製品・サービスの競争力強化を目的としたものだ。電子書籍など新規サービス創出による端末の販売増、マルチメディア通信カーナビ搭載自動車のような製品の付加価値向上による販売増を目的としたM2Mの活用が広がっている。また、産業・OA・建設機械などの遠隔保守によるサポートコストの削減や、遠隔からの在庫管理によるオペレーションコストの削減などにM2Mが利用されるケースも増加している。

 消費者需要においても、M2Mに対するニーズが高まっている。各国で共通しているのは、自動車盗難対策や緊急通報など、安心安全のためのM2M需要だ。その次に高まると見られるのは、快適な生活のためのM2M需要で、既に先進国や富裕層ではマルチメディア通信カーナビや電子書籍端末等の利用が増加している。

 先進国の場合、固定ブロードバンド、モバイル回線ともに広く浸透しており、キャリア間の競争激化によって通信料金も低下している。一方、新興国でも政府の後押しや先進諸国のODA援助により3G・GSMインフラの整備は進んでいる。今後はサービス拡充を中心とした利用者獲得が課題となってくるが、その1つの方策としてM2Mは注目されている。

 また、非キャリア依存のローカル無線通信技術の進化も、M2Mが発展する上で非常に重要な役割を担っている。とくにM2M市場の拡大に弾みをつけているのが、世界標準規格のWiFiやBluetoothの普及だ。今後Z-Waveなど低消費電力の無線通信技術がさらなる進展を遂げることで、ネットワークに接続される端末は一層増加していくだろう。

 通信モジュールについては、世界標準仕様である3Gモジュールの流通量がとくに急増している。この背景にあるのは近年の北米や欧州・ブラジルの政策的需要喚起を受けたモジュールベンダーの新規参入で、国内においても外国製3Gモジュールの価格低下は著しい。総務省の調べでは、2008年に1個2万円程度だった3Gモジュールが、2010年には6000円程度にまで急激に価格が下がっている。欧州のe-Callやブラジルの盗難車両追跡システムなどは今から本格的な市場普及段階を迎え、また中国などの社会インフラ高度化需要も巨大だ。こうしたM2M需要の拡大は、通信モジュールのさらなる低価格化を推し進め、加速度的に様々なデバイスに通信モジュールが搭載されていくことになるだろう。

図表2 携帯電話の通信モジュールの価格推移

図表2 携帯電話の通信モジュールの価格推移

『携帯電話の電話番号数の拡大に向けた 電気通信番号に係る制度等の在り方 (説明資料)』
平成23年5月25日 総務省 総合通信基盤局 番号企画室 作成資料より



 このように急成長しているM2M市場だが、もちろん課題はある。それは、企業が製品・サービスの競争力強化にM2Mを活用する際、システム投資規模が莫大となってしまうことだ。このため、スケールメリットを享受できる一握りの先進的な企業にのみM2Mは活用されているのが現状である。

 また、通信モジュールの一層の低消費電力化も重要だ。常時給電できない場所にも対応できるようになれば、国内の潜在需要が約18.5億回線と想定される農業センシング領域などにおけるM2Mの実用化も可能になる。

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