日本IBM M2M/IoTソリューション M2M/IoT本格化を見据えIBMが新提案 “2つの常識”を変えビッグデータを活用

モノとモノとの間で直接やり取りされる膨大なデータをビジネスに活用する「M2M(Machine to Machine)」「IoT(Internet of Things)」の本格化に向けて、日本IBMがユニークなソリューションを展開している。ポイントは、人を主役とした従来の通信・データ分析の常識を変えること。M2M/IoTに最適化された独自技術と新手法を提案している。

 「M2M」「IoT」を活用する動きが、社会インフラをはじめ、医療や自動車など多くの産業分野に広がっている。今後、ネットワーク化されるデバイス数は数百億にも達すると言われ、巨大な新市場の創造が期待されている。

 だが、M2M/IoTの普及とともに新たな課題も生まれる。これまでの“人”を中心とした時代とは比較にならないほど多くのデバイスから膨大なデータが生成されるため、それを効率的に収集、処理・分析して活用するための仕組みを構築しなければならない。

 この難題に対して、新たな解決策を提案しているのが日本IBMだ。特筆すべきは、データの「収集」と「処理・分析」というM2M/IoTの根幹をなす2つの領域について、従来の常識を変える独自の手法を用いている点にある。

HTTPのままでは課題が山積み M2M/IoT特化プロトコルで解消


鈴木徹氏(左)と田中直美氏

日本IBM ソフトウェア事業 WebSphere テクニカル・セールス&ソリューションズ ICP-エグゼクティブITSの鈴木徹氏(左)と、ソフトウェア事業 WebSphere 第二テクニカル・セールス 主任ITスペシャリストの田中直美氏

 データの収集について、従来通りHTTPプロトコルを用いることに疑問を投げかけるのは、日本IBM ソフトウェア事業部の鈴木徹氏だ。「HTTPはM2M/IoTの通信に最適化されておらず非効率です。小さなパケットが大量かつ高頻度に送受信されるM2M/IoTには、別の適したやり方があります」。

 HTTPはヘッダーサイズが大きく、同期通信を行うため、多くの端末がエンドツーエンドの通信を高頻度に行えば帯域を圧迫する。また、M2M/IoTではイベント発生を起点としたリアルタイム性の高い通信モデルや、1対多のプッシュ型情報配信の仕組みが求められるが、HTTPは必ずしもそれに適さない。

 そこで「M2M/IoTに特化したプロトコル『MQTT』が役に立ちます」というのが、同社の提案だ。

 MQTTの特徴は3つある。まず、ヘッダーサイズが2バイトと軽量で、HTTPに比べて10分の1にトラフィックが軽減できる。2つ目は、非同期/双方向通信であること。相手につながるまで繰り返し送り続けるHTTPとは異なり、「つながった時に確実にデータを伝える」仕組みであるため無駄がない。帯域も、端末の電池消費も節約できる。

 3つ目はオープン性だ。IBMは2011年にMQTTをオープンソース化しており、誰でも無料で利用できる。Facebookのメッセンジャーに使われるなど、他ベンダーにも採用が広がっている。

 このうち特に注目されるのが2点目だ。MQTTは、M2M/IoTに最適なプッシュ通信と大量同報通知が簡単に行える「Publish/Subscribe型メッセージ通信」の仕組みを備える。中継サーバーが送信側(Publisher)と受信側(Subscriber)のプログラムを仲介する“疎結合”型の通信方式であり、Subscriberが求める情報を登録し、Publisherが該当する情報を配信すると受け手に一斉配信される仕組みだ。

 QoSの指定も容易だ。「1回だけ確実に届けるといった指定がプロトコルのレベルで可能です。従来はアプリでプログラミングする必要がありましたが、MQTTでは不要。お客様は、アプリ/サービスの企画・設計に集中できるようになります」と鈴木氏は話す。

 実は、MQTTは15年前に開発されたもので、すでに多くの場面で活用されている。ガス・水道等のパイプライン監視や株価情報の配信サービスなど使用例は多岐にわたる。実績も十分だ。

 このMQTTの実装を容易にするため、日本IBMは昨年からゲートウェイアプライアンス「IBM MessageSight」の提供も開始した。同時接続数100万台、1秒当たり1000万件以上のメッセージを配信できる性能を備え、クライアントのアクセス制御やバックエンド連携、運用管理機能も充実。2台のアプライアンスでデータを高速にコピーする可用性構成をとることも可能となっている。「30分で稼働状態にできます」という導入の容易性も特徴だ。

 販売開始以降、米スプリントが提供するクルマ向けの情報サービス「Sprint Velocity」等に採用され、MQTTの利用場面もさらに拡大している。ソフトウェア事業部の田中直美氏は、「すでにHTTPでM2M/IoTを行っているお客様でも、新たな機能要件が必要になったり、将来のサービス展開を見据えてMQTTを追加で導入するケースにお使いいただけます」と話す。

図表1 IBMのメッセージング・テクノロジー

図表1 IBMのメッセージング・テクノロジー

ストリーム・コンピューティングで「データは貯める前に使う」時代へ


土屋敦氏

日本IBM ソフトウェア事業 インフォメーション・マネージメント事業部 ワールドワイド・ビッグデータ・タイガー・チーム テクニカル・リードの土屋敦氏

 次の焦点は、集めたデータをいかに処理・分析して活用するかだ。従来は、データベースに貯め込んでから定期的に処理・分析するのが常識だったが、日本IBMはここにも疑問を呈する。

 M2M/IoTが進展すればデータ量は加速度的に増大し、いくらストレージがあっても足りない状況に陥るだろう。また、データから迅速に意味を読み取って役立てるには、収集から分析までのスピードも向上させなければならない。

 そこで注目されるのがリアルタイム分析技術だ。日本IBMがM2M/IoT時代に必須のテクノロジとして推すのが、ストリーム・コンピューティング「InfoSphere Streams」である(図表2)。従来の手法とは異なり、「やりたいことを予め決めておき、集まってくるデータを逐次処理して、今何が起こっているのかを把握し、リアルタイムにアクションを起こせるようになります」と話すのは、ソフトウェア事業部の土屋敦氏だ。

図表2 従来のデータ処理とストリーム・コンピューティングの違い

図表2 従来のデータ処理とストリーム・コンピューティングの違い

 例えば、機器の故障を予知したいというケースでは、従来は集めたデータを蓄積し、それを解析するモデルを作ってデータのスコアリングを行っていた。この処理をリアルタイム化するのがストリーム・コンピューティングである。入ってくるデータを解析モデルに従って逐次処理することで、異常な傾向を素早く検知し、瞬時にアラートを発するといった運用が可能になる。また、蓄積する前にデータをふるいにかけることにも役立つ。

 このストリーム・コンピューティングは、MQTTと組み合わせることでさらに効果が高まる。前述のPublish/Subscribe型通信によって、受信側は欲しい情報を確実かつ効率的に受け取れる。指標として活用したい情報を予め登録しておき、それを次々とリアルタイムに処理・分析。他のデータは従来通り蓄積する。「リアルタイム処理と蓄積型の処理は並列で使う必要があり、うまく組み合わせられるのも当社ソリューションの特徴」(土屋氏)だ。

 好例が、自動車メーカーのプジョーの活用法だ。MessageSightでクルマのGPS情報を取得して特定エリアへの出入りをリアルタイムに検知したり、急ハンドル・ブレーキの発生を察知して安全運転につながる情報を提供するといったことに利用している。情報の即時分析・活用が可能になれば、従来型の「貯めてバッチ処理」の手法では不可能だった渋滞緩和や災害時の避難誘導などにもM2M/IoTを役立てる道が広がる。

 「タイムリーさが価値を持つ領域、特に安心安全を提供するサービスにM2M/IoTを活かすにはリアルタイム分析が鍵になります」と鈴木氏。その実現に向けて、データ収集から処理・分析まで一環したソリューションを提供することで、日本IBMはM2M/IoT市場のさらなる成長を後押ししていく。

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