クラウディアン オブジェクトストレージ構築ソフト「Cloudian」製品解説 Amazon S3と同等のシステムを自社構築 企業のストレージコストは大幅に削減できる

アマゾンやグーグルが最大限に活用しているクラウド技術を、自社でも採用しない理由など、どこにあるのでしょうか。クラウドストレージサービスの代名詞である「Amazon S3」と同等のオブジェクトストレージを自社構築・運用可能なパッケージソフトウェア製品「Cloudian」について徹底解説します。

 クラウドの特長は、「雲」のごとく形を変え、多種多様なデータ処理ニーズに対応できるところです。用途別のアプリケーションプログラムまでを提供するSaaSや、アプリケーションプラットフォーム機能を提供するPaaS、インフラとなるハードウェアリソース(CPUパワー、ストレージ領域やネットワーク)を提供するIaaSなど、いくつかの提供形態がありますが、なかでも最近需要が高まっているのが「クラウドストレージ(STaaS:Storage as a Service)」と呼ばれるサービスです。

 その代表は、アマゾン・ドット・コムの関連会社、アマゾン・ウェブ・サービスが提供する「Amazon S3」です。Amazon S3は、仮想化されたコンピュータリソースを提供するAmazon EC2などが利用する巨大なクラウドリソースのなかのストレージ部分だけを貸し出すサービスで、昨年9月には1兆3千億個ものオブジェクト(ファイルなどのデータの総称)を保存していると発表したように、クラウドストレージの分野では事実上の標準となっています。

 内外のパブリッククラウドサービスのなかには、Amazon S3と同様のクラウドストレージサービスを提供するところがいくつもありますが、その利用料をみると、為替や使用方法にもよりますがGB(ギガバイト)あたりのストレージ利用料が月額10円前後となっており、この手軽さが利用者を増やしている最大の要因です。この圧倒的なコストパフォーマンスを企業の情報システムでも活用し、ストレージにかかるコストを削減しようという動きが急速に広がっています。

 このクラウドストレージの構築・運用を、クラウドベンダや企業でも可能とするためのソフトウェアとして開発されたのが「Cloudian」(クラウディアン)です。

 Cloudianはニフティ、NTTコミュニケーションズなど国内外の大手クラウド事業者の商用クラウドストレージサービスにも利用されている信頼性の高いクラウドストレージシステム構築用ソフトウェア製品です。汎用サーバー2、3台から運用できる実用性も兼ね備えていることから、企業内のストレージシステムとしての引き合いも増えています。

 ここでは、Cloudianを使ったクラウドストレージについて解説していきます。

専用ストレージ装置ではなく、汎用サーバーに分散してストレージ


 Cloudianは、パッケージソフトウェア製品であり、複数の汎用サーバーにインストールして使用します。いまや汎用サーバーは、1台で数十TB(テラバイト)におよぶ記憶用ディスクを内蔵できます。この汎用サーバーを複数台並べ、仮想的にそれぞれの内蔵ディスクを1つのストレージ領域として統合すると同時に、複数の利用者が同時利用(マルチテナント)できるようにする。これがCloudianの果たす重要な役割のひとつです。

図表1 統合されたストレージ領域と複数同時利用のイメージ

図表1 統合されたストレージ領域と複数同時利用のイメージ

データの増加にも経済的に対応


 一般的な専用ストレージ装置は、データ量が装置の容量一杯になれば、同規模ストレージ装置を増設するか上位機種に買い換え、サービス停止を最小限に抑えながらデータを移行するという手間が必要になります。一方、Cloudianソフトウェアで構築したストレージシステムは、新規にサーバーを追加するだけで、システム全体の容量を拡張できます。そのため、設備コストだけではなく、運用コストも含めて経済的にデータの増加に対応できます。

ハードウェア障害の際の運用作業を軽減


 ただし、専用ストレージ装置と異なり、安価な汎用サーバーでは故障する可能性も考慮に入れる必要があります。1つのサーバーだけにデータを保存していると、サーバー故障の際にデータが失われてしまう可能性がゼロではありません。そのためCloudianは、データ保護の観点において複数のサーバーにデータを自動複製しておく機能を備えています。何台のサーバーに複製しておくかは、求める安全性と使用するサーバー、ディスク数にかかるコストのトレードオフを考えながら設定することができます。運用の手間は、故障したサーバーを新規サーバーに取り替えるだけです。サービスを停止することなく、故障前のシステム状態に復旧できます。

図表2 データ複製、サーバー追加・置換のイメージ

図表2 データ複製、サーバー追加・置換のイメージ

 GB(ギガバイト)あたり月額10円前後の利用料で、クラウド事業者がストレージサービスを提供できるのは、大量で安価な汎用サーバーとシステム全体を制御するソフトウェアを使用し、「壊れたら取り替える」という発想の転換により、設備と運用のコストを大きく下げているからなのです。

 Cloudianのメリットは経済性だけではありません。東日本大震災以降、多くの企業がDR(災害復旧)対策を本格化しています。Cloudianは広帯域ネットワークを介した複数データセンターをまたがるストレージシステムを構築し、地域冗長を図るうえでも最適です。

データをフラットに配置するオブジェクトストレージ


 Cloudianで構築するストレージシステムには、一般的なファイルシステムにあるようなフォルダー、ディレクトリという階層構造がありません。データはフラットな構造に保存されますが、こうした仕組みのストレージのことは「オブジェクトストレージ」と呼ばれています。

 オブジェクトストレージは、データの配置がフラットでありデータの格納場所に制約がないため、データの移動が簡単です。下図に示すように、階層構造のストレージでは、データはIDが格納場所に結び付けられているので、格納場所を変えるとID全てを変更しなければなりません。また、オブジェクトストレージで用いられるIDは、インターネットで用いられるHTTPで始まるURLであることから、広帯域ネットワークを経由して複数データセンターにデータをストレージする場合にも適しています。

図表3 ファイル構造とオブジェクト構造の違い

図表3 ファイル構造とオブジェクト構造の違い

複数データセンター対応でDR対策も万全


 Cloudianで構築するストレージシステムは、複数のデータセンターに複数台のサーバーを配置しても、ネットワークを介して1つのストレージシステムとして機能することができます。同時に、それぞれのサーバーで分散処理を行っているため、仮にあるデータセンターが被災しても、生き残ったデータセンターだけでサービスを継続できます。また、複数のデータセンターそれぞれにデータを複製しておけば、システム全体としてデータを失うこともありません。もちろん、複数データセンター毎に閉じたシステムとしても構築できます。

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