IoTで変化を生み出す街――Fukuoka City LoRaWANの意気

福岡市がIoTでも元気だ。市内のほぼ全域をカバーするLoRaWANを構築。災害防止や子育て支援、人手不足の解消など、様々な実証実験が進んでいる。目指すは、IoTで変化を生み出す街だ。

日本で今、最も魅力的な都市の1つに数えられるのが福岡市だ。人口増加数は、政令指定都市の中でナンバー1。英『MONOCLE』誌の「世界の住みやすい都市ランキング」では世界第7位に2016年に選ばれるなど、多くの人々を惹き付けている。

都会だけではなく、豊かな自然にも恵まれている福岡市
都会だけではなく、豊かな自然にも恵まれている福岡市(写真提供:福岡市)

その福岡市で昨年からスタートした注目のIoTプロジェクトがある。「Fukuoka City LoRaWAN」だ。福岡市内に大規模なLoRaWANを構築し、実証環境として民間企業などに無償提供している。

現在、LoRaWANが利用できるエリアは市内全域の約7割。「人がいるところは、大体カバーできている。要望があれば、さらなる拡充も検討する」と福岡市の新産業振興課長を務める梯浩一氏は話す。市内のほぼ全域をカバーするLoRaWANは政令指定都市では唯一、全国的にも非常に珍しい。

福岡市 経済観光文化局 創業・立地推進部 新産業振興課長 梯浩一氏
福岡市 経済観光文化局 創業・立地推進部 新産業振興課長 梯浩一氏

LoRaWANで街に“好循環”日本最大級のLoRaWANをなぜ福岡市は構築したのか――。

「福岡市は情報通信産業の盛んな街で、市の総生産の約10%を占めているが、次のSociety 5.0に向けて、情報通信産業をどう発展させていくかが課題の1つだった」と梯氏は説明する。

Society 5.0とは、狩猟社会(1.0)、農耕社会(2.0)、工業社会(3.0)、情報社会(4.0)に続く、新たな経済社会のこと。政府は、AIやロボットなどと共に、IoTをSociety 5.0の重要技術の1つに挙げている。

「IoT関連の産業を伸ばしたいが、IoTの導入にあたってはラストワンマイルの問題─コストや電源などの課題がある。しかし、低コスト、低消費電力が特徴のLoRaWANを地域に整備すれば、こうした課題にも対応でき、新しいチャレンジがいろいろ出てくると考えた」

高島宗一郎市長が2012年に「スタートアップ都市ふくおか宣言」を行って以来、福岡市は国家戦略特区の「創業特区」になるなど、市を挙げてスタートアップ支援に注力しているが、LoRaWANは「スタートアップがIoTに挑戦するための土壌にもなる」。

そして、様々なIoTサービスが“福岡発”で展開されることになれば、産業振興に加えて、「市民にとって、より住みやすい街になるという循環が生まれることが期待できる」。

そこで福岡市はLoRaWANの整備に向けた具体的作業に2016年から着手。2017年7月から実証環境の提供を開始した。なお、LoRaWANの構築・運用は、NTT西日本グループのNTTネオメイトに委託している。

月刊テレコミュニケーション2018年6月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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