企業ネットワーク最前線

ワークスタイル変革Day 2017 講演レポート

「生産性を3%上げられない企業は生き残れない」、伊藤元重・東大名誉教授

文◎太田智晴(編集部) 2017.10.03

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「賃金が上がれば、生産性の低い企業は淘汰される」――。東京大学名誉教授/学習院大学 国際社会科学部 教授の伊藤元重氏は「ワークスタイル変革Day 2017」の基調講演に登壇。AIやIoT、働き方改革などにより生産性を向上できない企業が“淘汰”されることで、日本経済は成長すると話した。

 
「アメリカでは第三次産業革命、ドイツではインダストリー4.0、日本ではSociety 5.0と呼んでいるが、いずれにせよ今、社会を大きく変革するような技術革新が起きている。これに影響を受けない企業は、ほとんどいないだろう」

「日本の未来を変えるAI、IoT、働き方改革」と題した基調講演。まず、こう語り出した東京大学名誉教授/学習院大学 国際社会科学部 教授の伊藤元重氏が強調したのは、生産性向上の重要性である。

なぜなら、人手不足は今後ますます深刻化する。その結果、仮に賃金水準が3%上がれば、「労働生産性を3%上げられない企業は生き残れない」からである。伊藤教授によると、政府関係者は「何とか名目賃金が3%上がってほしい」と考えているという。

AI、IoT、ロボットなどのイノベーションを活用した働き方改革による生産性向上が、これからの企業にとっては必要不可欠ということだ。

東京大学名誉教授/学習院大学 国際社会科学部 教授 伊藤元重氏
東京大学名誉教授/学習院大学 国際社会科学部 教授 伊藤元重氏



イノベーションと経済成長イノベーションは、生産性にどのような影響を及ぼすのか。伊藤教授によると、経済学では「TFP」という考え方を使って分析してきた。

TFPとはTotal Factor Productivityの略。日本語にすると「全要素生産性」で、労働や資本の増加では説明できない生産力の増加を表す。

「ノーベル経済学賞を受賞したソローの有名な仮説で、現在では検証もされているが、経済成長の中身を見ると、労働者や資本の増加以外の要因によって、経済成長している割合が実はかなり大きい」

つまり、イノベーションこそが経済成長を実現したきたわけだが、TFPは具体的には主として次の2つの要因からなる。1つは、技術革新だ。「これまでなかった新しい技術により、生産性が上がる」

もう1つは、生産の効率化だ。「いわゆる産業調整。生産性の低い分野から高い分野に資源がシフトすることで生産性が上がる。あるいは企業再編だったり、もちろん企業内での働き方改革もそうだ」

研究によれば、アメリカは1880年~1980年まで、TFPが非常に高い水準にあった。電力やモータリゼーション、飛行機の普及などの技術革新が、この“黄金の100年”を支えた。ところが、「1980年を境にガタッと落ちた。それから約40年、非常に厳しい状況だ」。

日本においても、TFPは1990年に落ち込む。「我々は何となく、バブルが崩壊して日本経済は厳しいと理解しているわけだが、それでは物事の半分しか見ていない。実際には、アメリカで起きたことが、10年遅れて日本で起きただけだ」

先進国において、イノベーションによる経済成長は、終わったかのようにも見えた。しかし今、「『もう一度、TFPが上がるのではないか』と言われている」と伊藤教授。その背景にあるのはもちろん、AIやIoT、ロボットといった技術革新である。

「問題は今起きている技術革新が、過去の巨大な技術革新と同程度、あるいはそれ以上に大きいかどうかだが、私は期待できるだろうと思っている」と伊藤教授は語った。
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