企業ネットワーク最前線

IoTで再び注目集まるHD-PLC

文◎村上麻里子(編集部) 2017.06.02

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電力線で高速データ通信を実現する「HD-PLC」。いったんは忘れられかけた通信技術だが、IoT時代の到来で再び脚光を浴びている。無線LANや5Gの補完役として、IoT向け通信の一角を担おうとしている。

 
さまざまなモノがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)は、拡大の一途をたどっている。総務省の情報通信白書(平成28年版)によると、IoTデバイスの数は2015年の154億個から、20年には304億個になるという。

IoT時代の本格到来を前に、パナソニックではこの4月、AI/IoT技術を核とした新たなビジネスモデルの創出などを目的として「ビジネスイノベーション本部」を新設、その傘下にIoT事業推進室を設置した。

IoT事業推進室では、高速電力線通信技術「HD-PLC(High Definition Power Line Communication)」などIoTを下支えする基盤技術を全社的に推進する方針だ。

既設ケーブルの有効活用でコスト削減HD-PLCとは、パナソニックの大阪本社にある研究所が中心となって2000年に開発した通信規格。電力線で電力とデータの2つを一緒に伝送し、専用アダプターをコンセントに差し込むだけでどこでも通信することができる。これはパナソニックの創業者である松下幸之助氏が発明した、電灯と家電用ソケットの両方に使える「二股ソケット」と同様のコンセプトだという。

HD-PLCがIoT向け通信規格として再び注目を集めているのは、既存の無線LANや有線LAN(イーサネット)などに対して、いくつかの優位点があるからだ。

1つめは、電源のあるところであれば、ネットワーク環境を容易に構築できることだ。LANケーブルの新規敷設などの必要がなく、構築コストを大幅に削減できる。しかも電力線だけでなく、メタル線が2本あれば対応するので、同軸線やツイストペア線、電話線などさまざまな既設線を有効活用できる。

2つめに、伝送距離が長いことだ。06年に第一世代の製品が発売された当時はホームサーバーなど宅内での用途を想定していたため距離が限られていたが、その後15年に「マルチホップ中継機能」に対応したことで、PLCモデムで“バケツリレー”して最大10ホップ、2kmの伝送が行えるようになった。これにより、ビルや工場など距離の必要な環境でも通信を行える。

さらに昨年発表された最新規格「HD-PLC Quatro Core」では通信帯域を最大4倍~最小1/4の5段階に切り替えることができ、1/2あるいは1/4に縮小すると、通信距離を従来の1.5~2倍に伸ばすことも可能だ。

 

図表 HD-PLC技術の進化[画像をクリックで拡大]図表 HD-PLC技術の進化


3つめに、通信の安定性が挙げられる。金属など無線の届かない障害物や部屋間でも通信できるので、無線通信の不安定さを解決する。無線LANにつきものの「隠れ端末」(互いに相手の通信を検知できない関係にある複数の機器が、同じ機器に向けて同時に信号を送信し、信号の衝突が発生すること)のような問題も生じない。しかも、PLC信号自体が暗号化され特殊な変調信号になっているため、HD-PLC通信機器同士の間は盗聴されないという。

そして4つめが、効率良く電力消費を制御できることだ。「無線は距離を飛ばそうとすると、それだけ消費電力も増える。HD-PLCは電力とデータを同時に扱うため、消費電力を抑えられる」とパナソニック コネクティッドソリューションズ社 イノベーションセンター PLC事業推進室室長 兼 ビジネスイノベーション本部 IoT事業推進室 全社PLC推進総括主幹の荒巻道昌氏は話す。
荒巻道昌氏
パナソニック コネクティッドソリューションズ社 イノベーションセンター PLC事業推進室室長 兼 ビジネスイノベーション本部 IoT事業推進室 全社PLC推進総括主幹の荒巻道昌氏

一方、通信速度については最大240Mbpsととりたてて速いわけではないが、HD-PLC Quatro Coreでは通信帯域を4倍にすることで最大1Gbps(同軸線利用の場合)が可能になったので、8K映像など大容量データの伝送も行える。
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