ホンダとソフトバンクが「感情を持つクルマ」で共同研究を開始

7月21日に開催された「SoftBank World 2016」の基調講演では、ソフトバンクグループの孫正義社長に続いて、本田技研工業(ホンダ)の研究開発子会社・本田技術研究所代表取締役社長の松本宜之氏が登壇した。

「SoftBank World 2016」の基調講演に登壇した本田技術研究所代表取締役社長の松本宜之氏

松本氏は冒頭、同社の創業者である本田宗一郎氏の言葉を引き合いに出し、「人を思い、人を研究し、人お役に立ち、生活を豊かにするための技術を届けること」がホンダの企業理念であると紹介した。

この理念は、ホンダの製品にも浸透している。同社は世界で初めてカーナビを開発したことで知られるが、1997年に提供を開始した「インターナビシステム」では双方向通信を実現、PCや携帯電話との間でルートプランを共有することも可能にした。

その後2000年代に入ると渋滞や交通規制などの道路交通情報をリアルタイムに送信するVICSが普及したが、主要幹線道路や高速道路を対象としているために必ずしも情報として十分ではない。そこで、インターナビシステムを搭載したクルマから走行データを取得するフローティングカー技術により膨大な交通情報を蓄積することでVICS情報を補完し、高精度な交通情報や大型連休時の渋滞情報などを提供することを可能にした。警察による事故多発エリア情報などと組み合わせて地域の安全に貢献しているほか、災害発生時には避難や救援ルートの確保にも役立てられている。

「インターナビシステム」では交通情報などのビッグデータが人々の安全に活用されているれている

松本氏は「インタ―ナビシステムは車のIoTの先駆けともいうべき存在」と語るとともに、「データ活用の進化は留まるところを知らない。最近はAIの大幅な進化により、データ活用の研究開発は次の段階に入った」と指摘した。

ホンダでも2016年はさらにAI技術の研究を強化しており、この日、本田技術研究所とソフトバンクはAI分野で共同研究を開始することを発表した。

具体的には、ソフトバンクグループ傘下のcocoro SB(ココロエスビー)が開発したAI技術「感情エンジン」を活用。運転者との会話音声や自動車をはじめとするモビリティーに搭載されている各種センサーやカメラなどの情報を元に運転者の感情を推定するとともに、自らも感情を持って運転者とのコミュニケーションを図れるようにする。

将来的にはクルマだけでなく、二輪車やロボット、航空機などあらゆるホンダ製品に感情エンジンの実装を目指している。松本氏は「(これらのモビリティーと)人との間につながりが生まれ、生活の質を高めることに役立てたい」と抱負を語った。

クルマだけでなく、二輪車やロボットなどあらゆる製品に「感情エンジン」を実装することを目指している

今年9月には、AI技術の研究開発を強化することを目的とした新たな拠点「Honda イノベーションラボ Tokyo」を東京・赤坂に開設する予定。ソフトバンクとの共同研究は、その取り組みと1つとなる。「人に寄り添う思いをAI研究にも込めていく。この思いを共有できる人たちを内外から広く集め、開かれたラボにしたい」(松本氏)と語り、講演を締めくくった。

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

FEATURE特集

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。