東大 中尾教授が語る「SDN/NFVの次なる進化」

仮想ネットワークの第一人者で、日本の5G推進団体「5GMF」のネットワーク委員会委員長も務める中尾教授は、「SDN/NFVの次なる進化が始まっている」と語る。そのキーワードは、SDNとNFVの合体、5G、エッジコンピューティング、そしてデータプレーンのプログラマビリティなど。さらに広範囲にネットワークをソフトウェア化しながら、「考えるネットワーク」へと進化していく。

――SDNやNFVの導入が着実に進んでいますが、今後どう発展していくとお考えですか。

中尾 SDNとNFVの両方の技術を組み合わせて活用しようという話は、今どこでも議論されていますが、最近SDNとNFVを合体させ、もっと大きな変革を実現しようという動きが加速しています。

例えば、近頃流行っているホワイトボックススイッチもその動きの1つです。

――ホワイトボックススイッチとは、ネットワークOSを搭載しない汎用スイッチのことですね。従来のスイッチはソフトウェアとハードウェアが一体で販売されてきました。一方、ホワイトボックススイッチはx86サーバーと同じように、ソフトウェアとハードウェアが分離しています。

中尾 だから、自分で選択・開発したソフトウェアを入れられます。

SDNを説明する際には、アプリケーション、コントロールプレーン、データプレーンの3層モデルの図がよく使われます。この3層のうち、どこがSoftware-Definedなのかというと、コントロールプレーンから上。パケットを転送するデータプレーンは、プログラマブルではありませんでした。しかし、ソフトウェアを自由に選択・開発できるホワイトボックススイッチなら、データプレーンにもプログラマブル性が出てきます。

――汎用ハードウェア上のソフトウェアでスイッチ機能を実現するのですから、NFVとよく似ています。

中尾 「SDNとNFVはだんだん似通ってきている」というのは、多くの研究者の共通認識です。

そこで標準化の世界では、「SDNとNFVを合体して制御しよう」という話も出ているのですが、そうしたなかSDNとNFVの次の進化の方向性を示すキーワードとして使われ始めたのが「ネットワークソフトウェアライゼーション」です。

ITU-Tは、IEEEの学会「Network Softwarization」での議論を元にして、ネットワークソフトウェアライゼーションについて、「『ネットワークの機器や機能をソフトウェアプログラムによって具現化し、より柔軟かつ迅速にサービスを構築・運用していく』という通信ネットワークにおける大きな変革を意味し、全ての焦点技術に関連する重要技術」と説明しています。

SDN、NFVと言うと、単なる個別のテクノロジーの話になってしまいます。これに対して、「ネットワークのソフトウェア化の動きをもっと大きく捉え、ソフトウェア化できるところは全部ソフトウェアで作っていこう」というのがネットワークソフトウェアライゼーションの理念です。

月刊テレコミュニケーション2016年7月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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中尾彰宏(なかお・あきひろ)氏

1991年、東京大学理学部卒業。1994年、同大学大学院工学系研究科修士課程を修了し、同年、日本IBMに入社。米IBMのテキサスオースチン研究所、日本IBM東京基礎研究所などを経て、米プリンストン大学大学院コンピュータサイエンス学科にて修士号および博士学位を取得。2005年、東京大学大学院情報学環助教授に就任し、2007年に准教授、2014年から教授(現職)。第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)ネットワーク委員会の委員長も務める

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