これだけは知っておきたい!7つのキーワードで学ぶ5G(後編)

次世代モバイル技術である「5G」とは何か――。5G時代の新ビジネスに出遅れることがないよう、これだけは知っておきたい基礎知識を7つのキーワードに沿って解説していく。後編で紹介するキーワードは、「フェーズ1とフェーズ2」「フレキシビリティ」「4Gとの関係」の3つだ。

[KEYWORD 5] フェーズ1とフェーズ2 –>
 5Gは2段階で進化する
5Gの標準化作業は、2つの団体が中心になって行われる。ITU-Rと移動通信システムに関する標準化団体である3GPPの2つだ。

ITU-Rが5G(IMT-2020)の要求条件を定め、これに従って3GPPが5Gの仕様を策定。それがITU-Rの審査を通過すると、5Gとして承認(勧告)されるというのが、おおまかな標準化の流れだ。

現在は3GPPにおける標準化作業が始まったばかりの段階で、ITU-Rの要求条件が固まるのも来年だ。2020年に5Gサービスを開始するためには、「2018年には詳細な仕様を固める必要があり、スケジュールはかなりタイト」(ドコモの中村氏)という状況になっている。

そこで採用されたのが「フェーズドアプローチ」である。3GPPでの標準化作業を「フェーズ1」(初期仕様)と「フェーズ2」(拡張仕様)の2段階に分け、2020年のサービス開始に間に合わせようという作戦である。

3GPPでは、1年~1年半程度のスパンで新たな仕様を標準規格書に取りまとめている。その最新版は今年春に固まったRelease13だが、5Gのフェーズ1の仕様はRelease15として2018年までに、フェーズ2は2019年のRelease16で決まる予定となっている。

ドコモは以前から2020年に「5G」サービスを開始し、その数年後の202x年に「5G+」に高度化するとアナウンスしてきたが、「5G」がフェーズ1、「5G+」がフェーズ2に該当することになる。

図表4 日本における5Gの実用化スケジュール
図表4 日本における5Gの実用化スケジュール

日米韓と欧州でズレ

このように5Gの標準化は2段階で行われるため、初期の5Gサービスの姿は、どの仕様が優先的にフェーズ1に盛り込まれるかに大きく影響されることになる。

フェーズ1で何を優先するかについては議論がある。

5Gの早期商用化に積極的な日米韓の通信事業者や大手ベンダーは、超高速モバイルブロードバンドを優先すべきだと主張している。これに対して、欧州の通信事業者はIoT関連の仕様を優先すべきとの意見だという。4Gのエリア整備もまだ十分進んでいないことに加え、「モバイルブロードバンドではもう儲からないと思っている人が欧州勢には多い」(中村氏)のが理由だ。

大量マシン通信は一足先に

なお、超高速モバイルブロードバンドを優先させたいプレイヤーが、IoTを軽視しているわけではない。

IoT関連のユースシナリオには、大量マシン通信とミッションクリティカル通信の2つがあったが、前者については、「LTEベースのNB-IoTで対応できる」(ファーウェイ・ジャパンの鹿島氏)ことが、その背景にはある。

NB-IoTとは、IoT向けの4G規格。まもなく標準化が完了し、来年には商用サービスが始まる見込みだ。IoTにおいては、大量接続に加えて、省電力や低廉なモジュール価格などが求められるが、こうした要件はNB-IoTで十分に満たせるというのが大半の業界関係者の見方だ。逆にいうと、「大量マシン通信に関しては、5Gで大きく進化するといったことはあまりない」(エリクソンの藤岡氏)。

つまり、大量マシン通信については、5Gを待たずに、一足先に実現されることになる。

月刊テレコミュニケーション2016年6月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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