日立製作所IoTとAIで未来の働き方[第2回]名札型センサーで「組織の活性度」を可視化する

働き方や仕事をする環境をより良くするために、IoT/AI技術はどのように使えるのか。次世代のワーススタイルを模索する4つの先進事例を見ながら、その狙いと課題を探っていこう。第2回は、日立製作所のIoTとAIで組織活性度などを可視化する取り組みだ。

「あの部署はいつも活気がある」「この課はコミュニケーションが上手くいっていない」など、これまで感覚的にしか捉えられなかった組織の活性度やコミュニケーションの状況を数値化して、定量的に把握しようとする試みが始まっている。日立製作所が開発・実践し、2015年には三菱東京UFJ銀行や日本航空とも共同で実証実験を行った「名札型ウェアラブルセンサー」とAIを使った取り組みだ。

日立が提供する名札型ウェアラブルセンサー
日立が提供する名札型ウェアラブルセンサー。加速度・赤外線センサーから、従業員の身体動作や、誰とどのくらい対面してコミュニケーションしているかなどのでデータを取得できる

この名札型センサーには、赤外線センサーと加速度センサーが備わっており、就業中に従業員が身に着けるだけで、誰と誰がいつ何分間対面したか(対面情報)、行動しているのか静止しているのか(身体情報)、どこにどの程度滞在したか(場所)というデータが取れる。これにより従業員の行動パターンを計測し、集団としての活性度を示す「組織活性度」を算出。これと、従業員の属性(性別・年齢、役職等)や活動状況(残業・会議時間、上司の在・不在等)のデータを組み合わせて、日立のAI技術「Hitachi AI Technology/H」で解析する。個人のどのような行動が組織の活性化に貢献するのか、その相関を導き出して、従業員満足度や業務効率の向上に役立てようというのが狙いだ。

パフォーマンス測る新指標にユニークな点は、組織活性度をKPI(目標達成度合いを計る指標)として使おうとしていることだ。

日立は7社10組織、468人の従業員の行動を計測し、約5000人日・50億点のデータを取得。これと、“被験者”に対して行った幸福度アンケートの結果を比較すると、行動に多様性がある(長時間の作業と短い作業を繰り返して行う)集団ほど幸福感が高いという相関が認められた。

次に、この多様性の高さを組織活性度として定義し、業績との相関を調査した。IoT・クラウドサービス事業部ビッグデータ本部ビッグデータ検証センタ・主任技師の西原慎氏によれば「コールセンターの受注率や、研究開発プロジェクトの成果との相関が得られた」という。

日立製作所 ICT事業統括本部 サービスプラットフォーム事業本部 IoT・クラウドサービス事業部 ビッグデータ本部 ビッグデータ検証センタ 主任技師 西原慎氏 日立製作所 ICT事業統括本部 サービスプラットフォーム事業本部 デジタルソリューション推進本部 ビッグデータビジネス開発センタ 第1G技師 三輪臣弘氏

コールセンターでは、組織活性度の低い日と高い日で最大1.34倍の受注率の差があった。また、4つの分野の研究開発プロジェクトを対象に、85人・延べ1万7000人日のデータを計測したところ、プロジェクト開始2カ月間の活性度と5年後の売上との間に強い相関が認められた。「開始直後の活性度をいかに上げるかが、将来の売上・利益に影響を与えると考えられる」という。企業内には、研究開発などKPIの設定が難しい業務がある。ビッグデータビジネス開発センタ第1G技師の三輪臣弘氏は「そうした組織に高いパフォーマンスを発揮させるための指標として、組織活性度を活用しようと取り組んでいる」と話す。

月刊テレコミュニケーション2016年5月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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