トヨタの子会社デルフィスに学ぶ「iPad全社員配布」の費用対効果

トヨタ100%出資マーケティング・サービス・カンパニーのデルフィスは、全社員約470名にiPadを配布し、ワークスタイル変革を進めている。なぜデルフィスは全社員にiPadを配ったのか。そして、全社導入から約1年半、一体どのような投資効果が出ているのだろうか。

iPadを業務に活用している企業は今や珍しくない。ただ、そのほとんどは、役員や営業員など、一部社員への配布にとどまっているはずだ。

そうしたなか、全社員約470名にiPadを貸与している企業がある。トヨタ100%出資マーケティング・サービス・カンパニーであるデルフィスだ。トヨタ自動車グループの仕事を中心に、マス広告からWeb媒体までのバイイングと制作、データマーケティングからカタログ、イベント、店舗デザインまでをトータルに手がけている。

iPadの全社導入を推進

「iPadの全社導入が必要です」――。デルフィス 総務局 情報システム室 室長の植田晃氏が、役員に提案したのは2012年初めのこと。だが、同社のiPad活用の歴史はその約1年前まで遡る。

デルフィス 総務局 情報システム室 室長 植田晃氏
デルフィス 総務局 情報システム室 室長 植田晃氏

デルフィスがiPadを初めて導入したのは2011年。目的は、「社外でメールの添付ファイルを確認できない」という課題を解決することだった。

同社では以前から会社支給のフィーチャーフォンで、会社のメールを閲覧できるようにしていた。しかし、フィーチャーフォンでは、メールの本文は読めても、添付ファイルまではしっかり確認できない。

「何社もの協力会社をまとめながら、1つのプロジェクトを完成させていくのが我々の仕事です。何かしらの完成品が上がってきたら、『この表現はこう変えてください』などと指示し、また次の完成品を待つ必要があります。しかし、社外では添付ファイルが確認できなかったので、以前は会社にいるしかありませんでした」(植田氏)

このため、「社外では添付ファイルが見られないから、深夜まで会社でメールを待つ」「添付ファイルを確認するためだけに帰社する」というのも、以前は当たり前。「社会はネットワーク化しているのに、我々はオフィスの中でしか仕事ができない。『今のままではもう立ち行かない』とみんなが感じていました」と植田氏は話す。

そこで、白羽の矢を立てたのがiPadだった。社外で業務を行う時間が長い社員や、モバイル表現等を担当する社員を中心に、約170台のiPadを導入し、いつでもどこでも添付ファイルも確認できるようにしたり、モバイルでの広告表現がどのように見えるかを実機で確認できるようにした。

iPadを使用した社員の意見などを集約し、業務の効率化・業務への負担とならないセキュリティのかけ方等を固めていき、全社導入へと踏み切った。

その結果、どんな変化がデルフィスに起こったか。社内アンケートを行ったところ、「思い切って帰れるようになった」「デスク以外で仕事ができるようになった」「遅い時間に会社に戻る必要がなくなった」「出社前の通勤途中にメール対応ができるようになった」といった声が届いているという。

「我々の仕事は、クライアントや様々な制作をお願いしている協力会社の3者間で、いろいろな情報をやりとりする必要があります。つまり、添付ファイルも含めてメールを見られるかどうかは、我々の“生命線”です。例えばクライアントから来たオーダーをすぐに協力会社に展開できたり。iPadを導入したことで、我々のスピード感は相当上がりました」と総務局 経営企画室の土津田教雄氏はその効果を語る。

デルフィス 総務局 経営企画室 Senior Administrative Staff 土津田教雄氏
デルフィス 総務局 経営企画室 Senior Administrative Staff 土津田教雄氏

さらにiPadは、打ち合わせ中、イメージに合致するタレントや風景などを直接その場で共有したり、目指す方向性を具体的なイメージで共有したり、ライバル企業の広告をその場で調べたりといった使い方でも効果を上げているという。

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