MCPCモバイルM2Mシンポジウム【ワイヤレスジャパン】M2M市場拡大の鍵は“ビジネス主体者”

ワイヤレスジャパン2014の最終日である5月30日、「MCPCモバイルM2Mシンポジウム ―ここまできた日本の物流モバイルM2Mー」が開催された。MCPCモバイルM2M委員会副委員長の土本順久氏、同副委員長の菰岡真人氏、矢崎エナジーシステム編成事業部企画部長海外推進部長の市川孝幸氏、日本貨物鉄道海外事業室の西村公司氏の4人が登壇し、M2M市場の動向と、海外進出を進めている物流分野のモバイルM2M事例を紹介した。

MCPCモバイルM2Mシンポジウムの様子

自動車業界を主体としてグローバル成長をしているM2M市場だが、「モバイルM2M市場においても用途別ではテレマティクスが41%と大きな割合を占めている」とMCPCモバイルM2M委員会副委員長の土本順久氏今後、M2M市場が拡大していくのは、既にM2Mビジネスが立ち上がっている分野だけではなく、今後ビジネスモデル拡大が見込める分野を開拓し、市場を創出することが必要だとした。

MCPCモバイルM2M委員会副委員長の土本順久氏

その好例として物流分野のモバイルM2M事例の矢崎エナジーシステム「商用車クラウドサービス ESTRA-Web」、日本貨物鉄道「IT-FRENS&TRACEシステム」を紹介した。2事例とも、業務効率化や社会貢献などの成果を挙げたモバイル活用事例を表彰する「MCPC Award 2014」の受賞事例。矢崎エナジーシステムはグランプリ/総務大臣賞/モバイルテクノロジー賞、日本貨物鉄道はモバイルM2M特別賞を受賞している。

矢崎エナジーシステム編成事業部企画部長海外推進部長の市川孝幸氏

商用車クラウドサービス ESTRA-Webは、トラックやバス、タクシーなどの商用車向けのシステムソリューションだ。車載機で取得した車両運行データや画像を3G網を介して集計・解析を行い、商用車の予防安全をサポートする。危険運転の兆候や、リアルタイムに更新される危険情報を運転者に音声で警告する。運転者への警告が音声メッセージであることが予防安全の観点で重要な役割を果たす。なぜなら、警告がテキストメッセージで運転中に送られてきた場合、わき見運転につながるからだ。

トラックやタクシーのドライブレコーダーの画像を防犯に活用したい考えだ

今後は、運行・画像データのWi-Fiを利用した転送や、運行管理者の運行・画像データの任意取り寄せなどの機能拡充や、防犯・防災インフラに役立てる考えを示した。市川氏は、「商用車を運転するプロのドライバーならではの迂回ルートなどをビッグデータ活用する」と話す。災害車両の運行ルートとして大型トラックや観光バスなどの大型車両の運行データの提供、犯罪発生時の商用車のドライブレコーダー画像の捜査提供などに活用したいという。

日本貨物鉄道「IT-FRENS&TRACEシステム」は、「旅客でいえば、みどりの窓口の役割を果たすシステム」(西村氏)だ。貨物列車の所在や、積載するコンテナの所在管理、貨物列車トラックへの積載状況や積卸予定などの荷役管理に加え、貨物列車を利用する運送事業者の貨物列車の予約管理もできる。

日本貨物鉄道海外事業室の西村公司氏

全国に120ある貨物駅と550台のフォークリフトを管理する。これまで紙の情報のみで行われてきた荷役管理にGPSの位置情報とWiMAXを利用し、リアルタイムでモニタリングできるようにすることで作業の効率化を実現した。なお、フォークリフトには、GPSアンテナ、WiMAXアンテナのほかにもドラレコ(ドライブレコーダー)を搭載し、作業監視も行っている。そのため、上りの通信速度を重視してWiMAXを採用したという。

IT-FRENS&TRACEシステム。貨物駅のどこにフォークリフトを移動させればいいかが一目でわかるようになっている

事例を紹介した2社とも、国内から海外へと事業展開している。矢崎エナジーシステムは、グローバル展開の第一歩としてASEANへ進出する。タイの物流分野において8割のシェアを持つASP事業者との資本提携を決定し、「日本のノウハウをインフラ輸出することで、新興国の安全や環境に貢献したい」(市川氏)。他方、日本貨物鉄道はIT-FRENS&TRACEシステムをベースに海外展開を進める。西村氏は、「発展途上国も含めた導入対象国向けに、貨物管理のレベルや設備投資力などの要素によってシステムをアレンジした提案をしていきたい」と方針を示す。

MCPCモバイルM2M委員会副委員長の菰岡真人氏

菰岡氏は、「M2M市場の拡大は、IT・通信業界が主役ではない。矢崎エナジーシステムや日本貨物鉄道のような、業界での専門性、得意領域、自社販路を持つ”ビジネス主体者“が鍵になります」と話す。2社のようなビジネス主体者の開拓がM2M全体の市場活性化につながり、それが、サポーターである通信提供者や端末供給者の利益にもつながるというMCPCのM2Mへのスタンスを示した。

MCPCモバイルM2M委員会のブース

なお、MCPCモバイルM2M委員会のブースでは、商用車クラウドサービス ESTRA-WebとIT-FRENS&TRACEシステムを展示している。

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