SIerたちのM2Mビジネスの実像[第3回]――「M2Mの汎用化」を目指す三井情報

SIerがM2Mビジネスで成功するには、何が必要なのだろうか。不可欠といえるのは、既存事業の強みを活かすことと、他業種との連携の2つだ。ユーザー企業や他事業者との協業で新たなビジネスモデルを組み立てたSIer3社の取り組みを連続レポートする。最終回となる第3回は、三井情報(MKI)のケースを紹介する。

三井情報(MKI)は中期経営計画においてM2Mを注力事業に位置づけている。従来からエネルギー分野でM2Mビジネスを進めてきており、電気やガス等の遠隔監視・制御を行うクラウド型省エネルギーマネジメントサービス「GeM2」を家電量販店や映画館などに展開するほか、2013年4月にはメガソーラー発電設備の遠隔監視サービスも始めた。そして昨年7月には「M2Mクラウドプラットフォームサービス」の提供を開始。これを活用してM2Mサービスを行うパートナーを増やし、ビジネス規模を拡大しようとしている。

同プラットフォームのファーストユーザーは、和歌山県のベンチャー企業であるM2Mテクノロジーズ社だ。同社が自治体向けに提供している高齢者見守りシステム「絆-ONE」に採用された。人感センサーや通報器を高齢者世帯に設置し、クラウド経由で遠隔地の家族とつなぐもので、現在7つの自治体で利用されている(一部導入中も含む)。

こうしたパートナーを増やすのと平行して「M2Mアプリケーション開発の受注や、MKI自身によるサービスの展開など、何層ものビジネスを展開していきます」と、MKI・IT基盤サービス事業本部クラウドサービス部第二営業室で室長を務める戸澤昌典氏は話す。デバイス開発のノウハウやプラットフォーム機能で差別化する先の2社と異なり、MKIは、アプリ開発でいかに付加価値の高いサービスを生み出すかで勝負しようとしている。

M2Mで業務・情報系パッケージの付加価値向上

MKIが取り組もうとしているのが「M2Mの汎用化」だ。戸澤氏は「我々の生業はITであり、汎用的な業務・情報系パッケージを取り扱っている。その付加価値向上にM2Mを使いたい」と話す。

現在のM2M市場は、デバイスや回線に強みを持つプレイヤーが、非IT化領域に新ビジネスを展開しようとする動きが中心だ。だが、元来のITサイドから見れば「プレイヤーも用途も特殊なM2Mを、どんな会社でも使っている会計や営業支援系のパッケージ製品と連携させてお客様に活用していただくことが、本来目指すものではないか」という。

今進めているのは、汎用業務向けのクラウドサービスとの連携だ。MKIのM2Mクラウドプラットフォームとセールスフォース・ドットコムのアプリ開発用PaaS基盤「Force.com」との連携を進めている(図表)。

図表 M2Mと汎用クラウドサービスとの連携イメージ
M2Mと汎用クラウドサービスとの連携イメージ

例えば、M2Mで吸い上げた店舗の売上・顧客情報や在庫データ等をSelesforce CRM等で活用できるようにすることで、従来は見えなかった「現場のリアルな情報」を加味した新たなソリューションを生み出そうという狙いだ。これが実現すれば、Selesforce CRMの既存ユーザーも、従来の指標に加えて、現場データを営業活動や経営分析に活かせるようになる。

M2Mだけで閉じたシステムを作るのではなく、「M2Mのデータをより汎用的に使えるよう、垣根を取り払いたい」と戸澤氏。他の法人向けクラウドサービスのベンダーとも、同様の取り組みを進めていく計画だ。

月刊テレコミュニケーション2014年3月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

FEATURE特集

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。