NECのSDN戦略「企業ネットワークへOpenFlowを」

OpenFlowを採用した世界初の商用製品「UNIVERGE PFシリーズ」を展開するNECは2012年12月、コントローラの機能とスイッチラインナップを拡充した。企業内LANへの適用拡大も狙うNECのSDN戦略をレポートする。

2012年はSoftware DefinedNetwork(SDN)と、それを実現する技術の1つであるOpenFlowが大きな注目を集めた。火付け役となったのが、OpenFlowを採用した“世界初”の商用製品「UNIVERGE PFシリーズ(Programmable Flow)」を2011年にリリースしたNECであることは間違いない。

OpenFlow/SDN関連市場は産声を上げたばかり。多くのベンダーが新製品を開発し、提案を始めているが、導入事例の大半は評価・検証を目的としたものである。そうしたなかでNECのPFシリーズは、データセンター(DC)/クラウド事業者の商用サービスや、企業内DC/ネットワークで実運用に至った事例を積み重ねてきている。NTTコミュニケーションズが提供するクラウド型IaaS「Bizホスティングエンタープライズクラウド」の基盤インフラに採用されたほか、日本通運の企業内DC、金沢大学附属病院の院内ネットワークなど、本番稼動の例も数十件を数えるという。

OpenFlow v1.3の機能を“先取り”

OpenFlow/SDN市場について「常にNECが切り拓こうという思いで取り組んでいる」と語るのは、UNIEVRGEサポートセンター・グローバルソリューション主席事業主幹の渡辺裕之氏だ。2012年12月にはPFシリーズの機能強化を行い、新製品も発売した(12月27日販売開始)。PFコントローラ(PFC)について、商用環境で利用するに当たって不足していた機能を追加実装するとともに、PFスイッチ(PFS)の新機種も投入(図表1)。その中身は、「イノベーターでありたい」という同社の意気込みを体現するものと言える。渡辺氏は続ける。

「OpenFlowの市場はオープンな世界。もちろん、他社製品との連携によって活性化するものだ。そこで必要なのが、1つは“商用で使える”機能を実装すること。そして、他社がなかなか踏み込めない“欠けているパーツ”をNECが提供することだ」

図表1 UNIVERGE PFシリーズの強化
UNIVERGE PFシリーズの強化

PFCの強化点は大きく3つある。PFシリーズはOpenFlowのバージョン1.0(v1.0)をベースに作られている。OpenFlowではトラフィックを「フロー」という単位で仕分けし、制御するが、v1.0仕様では経路障害の発生時にすべてのフローに対して迂回指示を個別にする必要がある。このため、フロー数の大きなネットワークでは迂回指示に分単位の時間がかかってしまう。

これを解決するため、NECは経路切替を高速化する方式をOpenFlow仕様v1.3に提案。それと同時に、v1.0ベースでも切り替えに要する時間を1桁短縮する機能を提供する。これが1つ目の強化点だ。

2つ目はIPv6ルーティングへの対応。さらに、3つ目として、ブロードキャストトラフィックのオフロードを実現するために不可欠だったVLAN設定の自動化機能を追加した。

ポイントは、まだ標準化されていないベンダー定義のプロトコルを使いながら、現場ニーズに即した機能を補完している点にある。今回追加した機能はv1.2およびv1.3での実装が見込まれるもので、すでに商用利用の実績があるv1.0でそれらを“先取り”して市場投入する。

渡辺氏によれば、NEC以外のベンダーも含めてv1.3ベースのOpenFlow製品が市場に登場してくるのは「2013年春から夏ごろ」の予想だ。“安定して使える製品”という意味では、まだ1年ほどはv1.0製品が主体となる状況が続く。その普及スピードを加速させようというのが、PFC機能強化の最大の狙いだ。

月刊テレコミュニケーション2013年2月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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